表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/142

絶体絶命

予想もしなかった金属音に驚いたリリーナには何が起きたのか分からなかった。

ただ、タイミングを合わせてくれるはずの渦は起こらず、

突風が魔獣を通り抜けていっただけだった。



「…なに…?」



こんな危機にふざけることがあるだろうか、いや、ない。

おふざけではない…

本気だったのだ、マリエナの復讐心は。



(しまった…)



リリーナは金属音がした足元を確認すると、両足が地面から出た金属の鎖に

ぐるぐるに巻かれているのを見た。



(この状況下でまさかくるとは…見事に嵌められたわ…)



ぐるぐる巻きの足元からマリエナの方に目線を移すと

嬉しさを滲ませた表情の彼女がいた。



「リリーナ様、ごめんなさい!魔法を間違えてしまいましたわ…!

今解除しますね…!

あ、あれ。解除の仕方がわからない…。」



リリーナは、まるで下手な演劇を見ているような感覚になった。



(なんてわざとらしい…このシーンでは真剣に焦った表情をするところでしょう。

ニヤついているのは思惑通りだと言わんばかりじゃないの…。)



これを見たせいで、リリーナは幾分か冷静になれた。



(この拘束で逃げられなくして、魔獣に私を襲わせる気ね…)



魔獣は先程受けた突風に、更に興奮し、

鼻息を荒くしながらジリジリと寄って来ている。



「くぅっ…」



リリーナは正直、対抗できる魔力も技も持っていない。

悔しいけれど、犠牲者は増えない方がいいと思った。



「マリエナさん、微力ながらできるだけ防ぐので、先生のところまで逃げて下さい。」



その言葉に対して、マリエナはわざとらしく目を潤ませて



「まあ、リリーナ様…もしかして助けてくださるの…?

でもリリーナ様が危ないですわ…!」



「演劇のように強くてかっこいい勇者のような存在だったらよかったんですけどね、

本当に、ほんの少しの時間しか防げないので、できるだけ遠くまで逃げて下さい。…ほら、行って!」



「わ、わかりました!すぐに先生を呼びますわ…!!」



去り際のマリエナの表情は、まるでありがとね〜と言っている時のそれで

少し可笑しかった。



(そこまで本性を見せちゃって…私死んじゃうと思ってる?

まあ…大怪我じゃ済まないかも…しれないけど…

でも!ここでやられてちゃいけない!!将来の夢があるもの…!)



そう気合を入れると、自分が今できることを最大限考えてみる。


足が全く動かせない状況下。

しかも魔獣はフーフーと言いながら、一歩ずつ近づいてくる。



その行手を土魔法で壁を作り塞いでみるも、

体当たりで崩される。


水魔法で分厚い氷の壁を作ってみるも、

腕の一振りで簡単に割られる。


とうとう、人間の足で5歩ほどのところにまで迫ってきた。



(どうしよう。全く歯が立たない!このままじゃ本当にダメかも…)



と、気を緩めた時、チャンスとばかりに魔獣が両手を上げ、

リリーナに覆い被さってきた。



(いや…!来ないでっ…!)

咄嗟に目を閉じ、そう強く願った時、




ギャウッ!!




魔獣のものと見られる悲鳴が目の前で聞こえた。

そこから、魔獣の重みを感じることもなく、

傷つけられて痛みが出ることもなかった。


妙に空気の流れが止まったように感じて、恐る恐る目を開けて

目の前を確認すると、

地面から無数の枝が触手のように生えてきて、

魔獣を絡め取っていた。



(なに…枝…?)



どこかで見た覚えのある枝のような気がしたが

思い出せなかった。

このいま起きている現象が不思議で、それどころではなかった。



「え…私が…?今…出したの?」



肝心なところが目を閉じていて分からず、本当に自分がしたのか

疑い深かったが、次の瞬間自分の意思によるものだと確信した。



グゥウアッ!!



一瞬気を失っていた魔獣が目覚め、再びリリーナの方に向かおうと

枝の中で体をよじりながら抜け出そうとしていた。



「ごめんね、大人しくなって…!!」



そう言って、魔獣の方に手を向けると、それに呼応するように

枝が魔獣を包み込んだ。



グゥオ…ッ…!



どんどん魔獣の声がこもった音になり、

もう枝の塊のようになった頃、中から一瞬強い光が漏れた。


それと同時に枝がほどけていくと、中から魔石が現れたのだ。

周囲の人が討伐した時に見えた、小指ほどの大きさのものとは比べ物に

ならない、拳大ほどの大きさだった。



「はぁ、私…枝を操ったわ…!!危なかった…はぁ、はぁ。

で…でも、これって…本当に学生レベルの魔獣だったのかしら…?」



魔力量の少ないリリーナは先程の一発でほとんどの魔力を消費してしまい

呼吸も荒く、へたり込んでしまった。



「ひとまず…クリア…できた…!」



リリーナは大きな魔石を両手で握って、喜んだ。




サクサクサクサク…!!




討伐に喜ぶのも束の間。

リリーナの背後から、草原を歩いてくる音が聞こえた。

足早に近づくその方に目を向けて驚いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ