演習開始!
「ジメジメして気持ち悪いですわ…」
演習場に入って早々、マリエナから愚痴がこぼれる。
踏み入ったのは、湿地帯。
マリエナがどんどん先に進んでしまうので、追いかけてきたらこうだ。
足元がとられてうまく足が運べないでいた。
ここで魔獣が出現したら圧倒的に不利。
無計画で進んでも討伐はできないと察した。
(ペアになったのはチームワークの訓練でもあったのね…
マリエナさんの警戒もしないといけないけど、彼女と協力して
授業に真剣に向かわないと、これは終われない…!)
日がとっぷり暮れても演習場から抜けられずに
泣きながら魔獣と戦う姿を想像して、ゾッとした。
「マリエナさん、一旦計画を立てましょう!
私たちの属性に合う地形を選んだ方がいいと思うんです。
私は風、マリエナさんは…」
「ああ、それね!私、攻略しやすい場所を知っていますわ!
あそこです!ユーストス様にこっそり聞いたんです!」
そう彼女が指し示したところは、今いる湿地帯の木々の間からチラ見えする
崖のふもとあたり。
50m級の崖は圧倒的な存在感だ。確かに魔獣が出現しそうな雰囲気がある。
「わぁ…出そうですね…それならそこを拠点に…」
(いやまて…、何か仕掛けているかもしれないから安易に乗るのはやめよう…)
そう思い、崖の横に目をやると、草原が広がっていた。
広くて遠くからでも人が確認できる場所…ここだ!
「うーん…と、ちょっと魔力が少なめな私は、崖の地形だとパフォーマンスが落ちて
足手まといになると思うので、その横の草原あたりにしませんか?あそこは広いので、
魔獣が遠くに出現しても気づけるはずです!」
そう、うまい具合に言い回し、提案してみた。
「…わかりました。足手まといは困りますわ!じゃあ行きましょう!」
かわいこぶる必要がないと判断したのか、余計な一言が入るあたり
自分は良くは思われていないんだと改めて思い、
返される作り笑顔に、苦笑いをしたリリーナだった。
湿地帯を抜けると同時に森も開け、広大な草原が目の前に広がった。
「わぁ…!」
遠くから草を揺らしながら、風がやってくるのを見て
リリーナは両手を広げて風を受け止めてみた。
(う〜〜ん!風のいい匂い、包まれる感じ、すごく気持ちいいっ!)
「のんびりさんですわね…!早く魔獣が出そうな魔兆を探しますわよ。」
「あ、はい…そうですね。」
魔兆とは、悪気の塊で、密度が高ければそこに魔獣が出現する。
マリエナのどんどん刺々しくなる言葉に、早く演習終了させたいと思い、
魔兆測定の魔法を施す。
測定魔法は至って簡単。ロウソクに測定魔法の呪文がかかった火を灯す。
魔兆密度が高い=魔獣が出そうな所に来れば、火は大きくなるといった仕組みだ。
しばらく歩き回ってみたが、火の大きさは変わらず揺らいでいる。
遠くでは、すでに何組かが戦う姿がチラチラと見えてきた。
「でないですわ…ね。」
「うーん、と。」
マリエナに対してずっと警戒していたが、口調はよくないものの
しっかりペアとして動いてくれている。
何かを仕掛けてくる様子もない。
リリーナは取り越し苦労だったかなと思い始めていた。
何よりも、課題クリアが危うくなってきたのに焦りはじめていた。
「魔獣が出ないので、場所を変えてみましょうか?」
と次の候補を探そうとポケットの地図を探っていた時。
「リ、リリーナ様…ま、ま…」
マリエナが狼狽えた様子で、必死にリリーナを呼ぶ。
「どうしました…?なにか… …!!!」
顔を上げたところに飛び込んできたのは
2mほどのクマ型魔獣。
こちらをじっとみている。
それと同時にロウソクの火も大きく燃え上がり、手で持っていられないほどに
なって思わず落としてしまうと、魔力の供給が無くなったせいですぐに火は消えた。
「これを…討伐…?」
「マ…マリエナさんの魔力だったら…いけるのでは…?」
「冗談じゃないです!魔力はありますけど、直接攻撃なんてしたことないですわ…!」
2人は魔獣から目は逸らさず、ゆっくりと後退りをしながら策を考えていた。
「どど、ど、どうしよう、私…突風くらいしか起こせない…
えっと、えーっと…」
「突風…そうだわ!リリー様が風を起こして、私が空間魔法でその風に渦をつける、
それに魔獣を乗せて、舞い上がらせた後に落とす…と言うのはどうでしょう!」
「そのアイデア、乗った!!」
そう決まると、早速魔法を使う体制になる。
「マリエナさん、じゃあ私が突風を起こしたらすぐに渦巻き、お願いしますね。」
「わかりました!ささっと片付けてしまいましょう!」
マリエナも体制を整えて、集中し始めた。
リリーナは手のひらに魔力を集めるイメージをした。
そこから魔獣に向けてゆっくりと両手を伸ばして、伸ばし切ったところで
手を止めると、一拍置いた後に貯めた魔力を放つ。
それはたちまち大きな強い風となって、
魔獣にまっしぐらに向かっていく。
「マリエナさん、今です!!!」
「はい…!!」
ガキィィンッ!!!
「… …え?」
「ふ…」




