優秀なペアと不安なペア
その夜、女子寮のひと部屋。
リリーナはベッドにうつ伏せになり、両手で頬を支えながら考えていた。
その横には気が抜けた姿で寝転んでいるロニ。
「ロニ…私、明日の演習、マリエナさんとペアになっちゃったの…!」
”ん…?ええっ!…俺、付いていく!”
突然の聞き捨てならないことに、ロニはガバッと起き上がった。
「そうしてもらいたいんだけど…使い魔禁止なんだって。はぁーっ。」
今日のランチや教室での態度から、敵意を向けられていることは
明らかだと感じていたリリーナは、明日の演習が不安になり大きくため息をついた。
「なるべく人目があるところで、しかも一定の距離を保つ!これが鉄則ね。」
”そうだな。また嫌がらせをされた!なんて言われかねないしな、注意して。”
「うん、そうする。」
リリーナはこくりと頷き心に留めたが、次の瞬間では大きなあくびをしていた。
「ふぁ〜あ、今日は色んな人の優しさを受けて、緊張してちょっと疲れちゃった…」
”早く休むほうがいいぞ…?”
そう声を掛けるロニの頭から体へ、長いストロークで数回撫でて、
リリーナは口を開いた。
「うん、じゃ、お風呂に行こうか!」
”えっ”
「え?ほら、シャンプーしてキレイにするわよ?」
”風呂はだめだ”
「どうして?今までお外で過ごしてきたんでしょ?一緒に入ってあげるから!」
”よ、余計だめだ!
…あのな…俺は自分で毛繕いをして綺麗にするし、そもそも浄化の魔法がある。
いちいち体をずぶ濡れにする効率の悪いやり方はしない。”
黒い毛で覆われてわかりづらいが、耳の中がいつもより赤く
わたわたとうろたえながら、弁明した。
「そうなの…?」
それを聞いて少し残念そうな表情を浮かべるリリーナ。
”あ、いや…嫌なわけではなく…その、はずか…うう…”
「たまには入ろうね?」
”…考えておく。”
うまいこと言いくるめられたロニは、リリーナに合わせていた目線を外しそっぽを向くと、
前足で右耳をふいっと触った。
リリーナはそんなそれの姿をニコニコと見ていた。
*
翌日。
念のために、とロニに持たされた黒いクリスタルのネックレスを付けて
演習へと臨んだ。
今日も相変わらずマリエナの周りには、生徒が集まっている。
ただ少し…いつもはユーストスとヴェクトルにべったりなのに、少し距離を置いている
ように見えた。さらに言うと、その他の生徒たちも磁石のように引き寄せられている
いつもの感じではなかった。彼女の周囲に集まってはいるものの、熱量が違うのだ。
はっきりとはしないが少しの違和感に、リリーナは不思議に思っていたが
(みんな、気分転換をしたい時もあるのね)
そう大きく解釈し、納得した。
演習場所は、学園裏にある広大な敷地。端から端まで歩けば1時間はかかる。
色々な地形が凝縮されており、湖、崖、川、森、砂地、山、廃墟…などがある
さらに、約2時間ごとに天気も変化し、雨、晴れはもちろん、雷、嵐など荒天もアリだ。
その演習場の入り口に集合したクラスメイトは
先生からの説明を聞く。
「今から行う演習は、様々な地形や天候に対して、的確な属性の魔法を使う訓練だ。
フィールド内にランダムに、魔獣が現れる。それを2人組で協力して討伐してもらう。
討伐すると魔石が出るので、それを持って入り口に戻ってくるように。1体でいいからな!」
(えええ、これって、みんな散り散りになるパターンじゃない?
昨日決めた鉄則が早速守れないのでは…いや、できるだけ人目を気にして動くしか…)
そう考えていると、マリエナがぬっと隣に現れ、びっくりするリリーナに対して
目が据わったまま、口元だけ笑顔で言った。
「リリーナ様、よろしくお願いします。お手柔らかにお願いしますね…!」
(そっくり返したいわ…)
リリーナはそう思いながら、作り笑いで返す。
「こちらこそよろしくお願いします。早めに討伐して終わりたいですね。」
昨日決められたペアで整列をすると、順に演習場へ入っていく。
列の先にユーストスが見えた。組んだ相手はヴェクトルだ。
(一番戻りはあの2人で決まりね…。)
抽選とはいえ、それでもペアになるあたり、2人の絆は深いのだろうと感じた。
リリーナの目線は自然とヴェクトルに移り、ふわっと考えた。
(もし、彼とペアだったら少しでもお話ができたかな…本心が聞けたかしら)
彼のマリエナに対する思いと、
自分が彼にとって疎ましい存在なのかの確認がしたかった。
抽選という名目で強制的にでも機会ができれば…と淡く期待していたが、
そううまくはいかなかった。
(やっぱり、あとでちゃんと話しに行こう、モヤモヤして気持ち悪いもの。)
そう決意したところで、いよいよリリーナマリエナペアのスタートとなった。




