違和感の原因は
(今までちやほやされてきた雰囲気とは違うわ…何かおかしい)
あの後、誰の助けもなくとぼとぼと片付けた後、
ユーストスたちとは合流せず、端の席でささっとランチを済ませたマリエナは
廊下を歩きながら考えていた。
(あんな屈辱ありえない…溺愛ルートになったんじゃないの!?)
考えすぎでつい険しい顔になっていたのか、通り過ぎる生徒の顔が驚いているのが
目の端に見えた。
(いけない!)
と、慌てていつものよそ行きの表情を作ると、教室へと向かった。
教室では、クラスメイトが談笑をしている。ユーストスとヴェクトルもすでに
戻ってきており、2人で何やら語り合っている。
いつもあそこにいたのに…!とマリエナは悔しくなった。
自席に座って、クラスの雰囲気を探ってみると、やはり昨日とは違っている気がした。
もしかしたら、自分の魅了があまり効いてないのではと思い、手を組んで集中すると
クラス中に出力高めに魅了を振り撒いてみた。
たちまちいつもの雰囲気になり、マリエナの元に人が集まりはじめた。
「マリエナ嬢、これ美味しいからあげるよ。」
「マリエナ様、今日の髪飾りかわいいですわ!」
ユーストスもこちらを愛しいものを見るような眼差しで見ている。
ヴェクトルも同様、クールフェイスながらもメガネの奥は優しい目をしている。
(そうそう、これよ。なんだ、今日は魅了の出力が足りなかったのね!)
そう安心してみんなからの愛情を受けていると、
ギリギリまで蔵書室で本を読んでいたであろうリリーナが
教室に入ってきた。
するとたちまち、空間がクリアになる感覚があった。
(え…これって…魅了がキャンセルされた…?)
案の定、マリエナに集まっていた生徒たちも、なんとなくマリエナから離れていった。
「リリーナ様、どこにいらしたんですか?」
「えっと、蔵書室ですよ。」
自然にリリーナの方へ人が集まっていくのが目に見えてわかった。
これでマリエナは確信した。リリーナは魅了の解除能力がある。
つまり自分より魔力量が多い。
(彼女は金よりもに2段階も低い青の魔力量じゃないの…?)
そう確認するも現実で起きていることを考えると
そうではないようだ。深く考えてもわからない。
とにかく、いまいち溺愛ルートに乗らない原因は、リリーナのせい。
(もう、これは排除するしかないわ。)
運悪く、次の授業で言い渡された明日の授業の内容。
「明日はペアを組んで魔法演習があります。」
(これだわ…!)
ペアの抽選があったが、マリエナの操作により、
リリーナとマリエナが組むこととなった。
*
一方、リリーナの方も朝から違和感を感じていた。
昨日、ロニが言っていた『大丈夫だ』って
マリエナさんに嫌がらせをしていたという嘘が、無かった事になっただけじゃないの?
朝から席には励ましのお手紙とプレゼントまでも…。
やたらと皆が、メリンダ様がいなくて寂しくないか、と気にしてくれている。
(嬉しいんだけど、ちょっとはずかしい…)
そんな心がふわふわするような状況を受け止めつつ、やっとランチ時間となった。
リリーナはメリンダとたくさん語った、中庭のベンチが見える席で思い出でもなぞろうと
窓際に空いた席を目指していた。
「ああっ!!」
「あっっ!!!」
ガシャンッ!!
急にマリエナが横からぶつかってきた。
(あっつい…!!!)
大きく揺れたトレイの上の皿から、熱々のスープが漏れ、リリーナの右手から腕にかけて
思いっきりかかった。
リリーナは痛みに耐えながら、以前メリンダの時にもあったこの状態にうっすら怒りを覚えた。
(まだこんな事されるの…?もう私は関係ないんじゃないの…?
それよりもどうしてくれるの、腕が痛い…。
医務室に早く行かなきゃ。…でもスープ…いや、治療が先ね…。)
そんなことを思っていると、ヴェクトルが優しく右手に触れてきた。
「リリーナ嬢、大丈夫か…?待って、治癒魔法かけるから。」
いつの間に背後に!?と驚きはしたが、彼のかけてくれた治癒魔法で
痛みも赤みもどんどん引いて行き、元通りになった。
「もう大丈夫だと思うけど、医務室に行こうか?」
そう、普通に彼は言ってくれるのだけど、正直、マリエナの魅了効果だったかもしれないが
昨日向けられた冷たい目と、言葉が忘れられず、気持ちが癒えないからあまり話したくなかった。
「いえ…もう大丈夫です。ありがとうございました…。」
「良かったら一緒にランチ…」
「いえ、結構です、1人で食べたいので…」
彼には失礼かもしれないけれど、どうしても今は以前の気持ちにはなれない。
早く食べて蔵書室でクリフォードの絵姿を愛でるのと、読書に没頭するとの
ダブルセットでいこう、と早めに食事を終えた。
そして蔵書室で過ごした後、ギリギリになって教室に戻ったところでまた
クラスメイトが話しかけてくれる。
(な、なんだか…恥ずかしい。どうしたのかしら…今日はやっぱり変…
わっ!!…マリエナさんの顔は見れないけど、すごく目線を感じる…)
そんな中、明日の授業はペアを組んでの魔法演習。
リリーナとマリエナがペアとなる。
(嫌な予感しかしない…)
リリーナは、一層警戒を強めることにした。




