学園祭:まさかの…
(そういえば、美味しそうなマカロンもあったわね…!)
自分の中でも気持ちの整理がついたリリーナは、食べることにウキウキしながら
料理が並ぶゾーンに向かおうとしていた。
だが、残念ながらそこには辿り着けなかった。
なぜなら、そのルートにユーストスたちが待ち構えていたからだ。
ユーストスを中心として、その隣には先ほどと同じく、べったりとくっつくマリエナ。
それから彼の背後にはヴェクトル。
三人ともリリーナを見ていた。
彼らの表情は先ほどメリンダに向けていたのに似ていた。
負の感情を感じるとともに、ユーストスとヴェクトルの表情に少し違和感を感じ、
2人ともマリエナの魅了にかかっていることに気づいた。
それゆえリリーナはよくない予感がしていた。
「…どう…されましたか…?」
恐る恐る尋ねてみると、案の定、よくない話が始まった。
「リリーナ嬢!!
君にも言わなければならない事がある!」
「……なんでしょう…か」
先程の壇上ではないものの、ユーストスが声を張り上げたため、
周囲の生徒たちが何事かと振り返る。そしてそれはまた人を呼び
あっという間に注目の的となってしまった。
そうなった状態を気にすることもなく、ユーストスは話を続けた。
「マリエナ嬢がずっと我慢していたそうだがようやく話してくれた。
君も大概、彼女が嫌がることをしているらしいな?
メリンダを隠れ蓑に、彼女のケガの介抱の邪魔をしたり、
魔法授業でわざと狙って水をかけようとしたなどと、低俗なことをしていると。」
「…そんな!それってすべてマリエナさんが…」
リリーナが主張する前に言葉を遮ってマリエナが口を挟んだ。
「リリーナ様っ!!お見苦しいですわよ。
メリンダ様に階段から落とされて足を怪我した時に、
運んでくださるというレオン様の邪魔をしたり、
魔法授業では私に水魔法を投げつけようとしましたよね!」
マリエナもわざとなのか、大きめの声で周囲に聞こえるように
ありもしないことを言う。
リリーナは圧倒されて口も挟めないでいた。
生徒たちが段々とざわつき始めるのを感じていた。
マリエナはさらに続ける。
「それから、私に用事があったヴェクトル様を、蔵書室に呼びつけて怪我を負わせたりも
しましたよね!私のお友達を、間接的に私のことで傷つけるなんてやめてください!」
「え、それは…!!」
といって、弁解を求めるようにヴェクトルに目線を送ったが、彼の目はとても冷たく
そのメガネの奥はリリーナをまるで犯罪者のような目で見ていた。
「私も迷惑しているよ。彼女に迷惑をかけるのはやめてくれないか。」
そう冷たく吐き捨てた。
この言葉を聞いて、リリーナはなんとも言えない悔しさと悲しみが湧き出てきた。
(魅了の…せいだよね…?…まさか本心…?)
リリーナは胸が苦しくなってきて、
それを抑えるように胸元に手をやった。
カサ…
手が上着に触れた時に音が鳴ってリリーナはハッと思い出した。
内ポケットを探りその音の主を取り出して見つめながら答える。
「ちがいます…
私には全く…身に覚えがないことばかり…です…」
リリーナは思い出していた。
ヴェクトルと一緒に背景を描いたこと、おやつを食べながら作業をしたこと
慰めてもらったこと…
(あれは…嘘…?。本当は…ずっと私のことなんて、好きな人の敵としか見てなくて
笑っていた時の笑顔も優しい声かけも…作り物…?
彼にとっては、初めから私はただの迷惑令嬢…。)
魅了がどうこうしているのかもしれないが、そう信じれる心の余裕もなくなり、
悔しさが込み上げてくる。
今の置かれた状況がとても切なく感じて消えてしまいたい気持ちになった。
(ああそうか…入学したばかりの頃の彼が本当の彼なのね…)
行き着いた答えが悔しくて、思わず手のものを投げつけた。
ぽすっ…
それはヴェクトルの胸に当たって床へと落ちた。
彼はそれを拾って見ると…色とりどりの宝石のような
輝きに少し見惚れていた。
それは日中、レオンのワゴンで買った、大人気の琥珀糖。
忙しくしているヴェクトルが、せめて学園祭が楽しかったと思えるようにと
リリーナが買っていたものだった。
チク…!
(いたっ…)
胸の苦しさがきつくなり、それが痛みに変わってきた。
「まったく、君のことは害のない令嬢だと思っていたのに、残念だよ。」
「そうですわ、嫌がらせをして楽しむなんてひどい方です…!」
ユーストスとマリエナの口撃を浴びせられ、ヴェクトルには無言の侮辱を加えられる。
その状況がリリーナを追い込んでいった。
(どうやったらわかってもらえるの…?
マリエナさんの溺愛に私なんて関係ないじゃない!
なんで私を陥れないといけないの…?
…もうやだ!!)
パキ…パキ
「うぅっ…!!」
突然、胸の痛みが強くなり、リリーナはその場にしゃがみ込んだ。
「…!」
「…どうした?」
その異変に罵っていた彼らも動揺して、様子を伺い始めた。
リリーナの痛みはどんどん増していき、うずくまって耐えるしか無くなってきた。
「うぅ…いた…う…ぁっ…!」
パキパキ…!!
…パリィィィンッ…!!




