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【完結】溺愛ってなんですか?平凡令嬢はただひたすらに見守りたい  作者: にむ壱
第3章 学園祭そしてさようなら
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学園祭:断罪パーティー

男子生徒にアローを医務室まで運んでもらい、先生に処置を施されると

すぐに意識も回復した。

リリーナの応急処置が的確だったため、少し休憩すれば戻れるとのことだった。

しっかり休むようアローに伝えてから医務室を後にすると、

外で待っていたメリンダと合流した。



「あの演劇で一番過酷だったと思いますよ、アロー様。」



「そうね。熱気で舞台自体も暑かったのにさらに着ぐるみだものね…」



そのあと、会話は途切れ、どちらも無言のまま

長い廊下を歩いていた。向かうのは、入学式をした多目的ホール。

今日の最終イベント、打ち上げパーティーの会場である。




段々と歩くスピードは遅くなり、とうとう

リリーナは立ち止まってしまった。

並んで歩いていたメリンダはその様子に気づくと、リリーナを振り返った。


そこには、

涙を目にいっぱい溜めてメリンダを見ている姿があった。



「会場に行きたくないです。」



「リリーナ…」



「行ったらメリンダ様とお別れしなきゃいけない…嫌ですよぅ…」



涙は目から溢れて頬を伝い落ちる。

どんどん どんどん

メリンダはハンカチを取り出すと、そっとリリーナの頬を拭う。



「そんなに大切に思ってもらえて、私は幸せ者だわ。」



そう言うメリンダの目も潤んでいた。

それがリリーナの涙を更に誘う。



「ぅう…学園生活楽しかったです…本当に…」



「ありがとう、私もよ。

…この後の断罪…正直に言うと怖いと思っていたの。

でも、あなたのおかげで立ち向かえそうだわ。

そばで見ていてね。…リリーナ大好きよ。」



「はい!わたしもメリンダ様大好きです…」



リリーナもメリンダの言葉を胸に受け止めると、

自然と止まらなかった涙が収まった。

ハンカチで涙を拭いきると、メリンダににっこりと笑顔を向けた。

メリンダもそれに応えるように、リリーナの頭を優しく撫でた。



「これから先は楽しいことがたくさん待っているって思って頑張ってくるわ。

あなたとも一生お別れのつもりもないし、向こうで落ち着いたらすぐにでも会うつもりよ?」



「はい、もちろんです!」



「じゃあ、行きますわよ。」



悲しい気持ちはここで一旦おしまい、気持ちを切り替えて

パーティー会場へと向かった。



「そういえば、今日のスイーツはタワーケーキが出るらしいですよ…」



「そうそう、リリーナはそうでなくちゃね。ふふ」



「あっ…ふふっ…!」




会場に着くと、すでにたくさんの人で溢れていた。

タワーケーキを中心とした豪華な料理ゾーン、数種類のドリンクが置かれたゾーン

立食用に所々に丸テーブルも配置されている。

部屋の端には、座れるように椅子も並ぶ。


程なくして、学園の理事長を連れた生徒会メンバーが

壇上に現れる。

ユーストスが壇上に見えた時、リリーナは驚いてメリンダに声をかけた。



「ユーストス様って生徒会メンバーだったんですね…」



「やだ、知らなかったの…?彼、次期生徒会長よ。王太子ですもの。

で、ヴェクトル様は現副会長。一年生なのにさすがよね。」



ユーストスに続いてヴェクトルが出てくるのを見て、メリンダは言う。



(そういえばヴェクトル様とは背景を一緒に描いた時から会話をしていないな…)



そんなことを思いながら、壇上を見ていた。


乾杯の音頭を理事長が務めた後は

みんな自由に飲食や会話を楽しんでいた。


メリンダとリリーナも食事とドリンクを取ったが

メリンダは食が進まない。

それはそうだ。

緊張しているのがリリーナにも伝わってくる。



やはり婚約者の元には声をかけにこないのか!と、

割と離れた場所で談笑するユーストスを見た。

もちろん彼のそばにはべったりとマリエナがくっついている。


婚約者気取りの彼女に嫌な感情が生まれそうになり

これ以上見ないようにしようと、目線を移したところで

ヴェクトルと目が合う。



しかし彼は、すぐにフイっと逸らすとマリエナに笑顔で話しかけた。



(…あ……なんだ。

絵を一緒に仕上げた時、友情の一つでも芽生えたかと思っていたけど…

全く私っておめでたい…自分だけ勝手にそう思ってたん…だ。そうだったんだ…。)



心の中の何かがごっそりとなくなったかのような

虚無感に襲われ、少しの間、それ以降の思考が停止してしまった。





乾杯から30分くらいしただろうか。

ユーストスが壇上に上がった。側にはマリエナをピッタリと寄り添わせて。

その近くには、側近のようにヴェクトルが配置する。



「さあここで皆に発表がある。」



みんなは何事かと、壇上のユーストスに注目した。

すると彼はスッと息を吸うと、声をあげた。





「メリンダ・ローズ・ウォーレン!!

君はこのマリエナ嬢に対して、数々の卑劣で陰湿な嫌がらせをした。これは王太子の

婚約者としてあるまじき行為だ。


よって、ここに君との婚約を破棄させてもらう!!


そして同時に、学園の品性を損なう行為を行なったとして、王太子の権限を持って


学園を辞めてもらう!!」





あまりの突然な断罪に、会場がシンと静まり返る。


事前に分かってはいたものの、実際に受けると相当なダメージだ。

メリンダが少し震えているのを感じた。

とっさにメリンダの肩に手を置こうとしたが



「これから先は、見ているだけにしてね。」



そう小さく呟きリリーナの行為を軽く拒む。



「…はい…」



リリーナは手を下ろして、

自分では助けられない事にとても悔しい気持ちになった。


メリンダは、目線が自分に集まるように少し壇上の方に移動すると、

綺麗な所作で言った。



「承知…しました。私は嫌がらせなどした覚えはありませんが、

そう思わせるような事があったのかもしれません。それは淑女の代表とならねばならない

王太子様の婚約者としては失格。

ここに謝罪をし、王太子様の命に従います。」



そこまで覚悟が決まっていたとは思わなかったユーストスは、少し怯んだ様子だ。



「そ、そうか、聞き分けが良いな。証言者も用意はしていたが…

必要ないようだな…」



ちらりと近くに控えていた証言者らしき令嬢2人に目をやったが

その言葉に彼女たちは下がった。


それを見ていたマリエナはつまらなさげに口を開いた。



「メリンダ様にはたくさんいじめられてきましたのに。

ペンを折られたり、階段から突き落とされそうになったり、服を破られたり…

もうとってもひどい方なんですよ…!!」



「そこまで具体的に言わなくても…」



と、ユーストスが言いかけたところで、マリエナが彼に無理やり目線を合わせた。

一瞬で、彼の表情が焦ったものから冷静なものに変わったのがリリーナには分かった。



「そうだな、こんなに幼稚で卑劣なことをしていたのだ、改めて愚行を思い出すといい。」



具体的な内容を知った生徒たちも、口々にメリンダに対する

よくない言葉を発するようになり、ざわざわとし始めた。



カツン!!



わざと靴音を大きく立てて一歩出るメリンダ。

響く音に会場のざわつきが一瞬でやんだところで。



「ただ一つお願いがございます。せめてもの慈悲として、

ウォーレン家には影響を及ぼしにならないでいただけますでしょうか。

私は最初からいなかったものとして、国からも出て行きます。」



「…ああ、それについては君の意見を汲もう。安心するといい。」



「ありがとうございます…マリエナ嬢とお幸せに…」



そう言い、挨拶を終えたところで、会場を足早に去っていく。

リリーナは、メリンダが選んだ幸せがこれから始まるんだと言い聞かせ、

悲しさをおさえて彼女の去り際を見つめていた。


彼女はリリーナの前を通るときにいつもの目配せをした。



(またね、リリーナ!)


(また会いましょう!)



そのまま見送ると、入り口にグラフィムが来ているのを発見した。

メリンダの従者であり彼女の想い人だ。

彼女はそのまま振り返らず、グラフィムにエスコートされながら、会場を後にした。



(お幸せに…!)

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