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【完結】溺愛ってなんですか?平凡令嬢はただひたすらに見守りたい  作者: にむ壱
第3章 学園祭そしてさようなら
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学園祭:演劇

後味が悪かったため、時間はあまりなかったが、すぐに

マジックボールをひたすら打ち返す、アトラクションで

もやもやを発散させて、2人は自クラスの出し物、演劇にのぞんだ。



メリンダ、リリーナは本番中のトラブルにすぐに対応できるよう

稽古の時と同じく、舞台袖で待機をしていた。


勇者役のユーストス

お姫様役のマリエナ

銀灰の悪魔役のアロー


話はすすみ、ここまで何のトラブルもなく

順調に進行していた。

アローだけは銀灰の悪魔が、着ぐるみだったため

体力の消耗も激しく、出番を終えるたびにぐったりと椅子に倒れ込んでいた。

リリーナはアメやドリンクで補給の補助をしてはいたが

倒れやしないかとヒヤヒヤしていた。

そして残すはラスト2シーンとなった。



「アロー様、あと少しですよ…!」



「はぁ、はぁ、うん、がんばります…」



勇者と銀灰の悪魔の壮絶な戦いの後、勇者の勝利。

2人は熱い抱擁をする。

実は銀灰も姫を愛していたと知り、姫は慈悲の心で

彼の亡骸に触れると、綺麗な光の粒となって祝福した。


という流れ。



さあ、幕があく。





「おのれ銀灰の悪魔、しぶといぞ、姫を解放しろ!」



「何をいう。姫は俺だけのものだ。誰にも渡さん。」



そこから戦闘シーンに移る。

割と動きは激しく、舞台いっぱいを2人で駆け回る。



そうしていると、急に銀灰の悪魔役のアローがが立ち止まり、

両手をだらんと落とし、動かなくなってしまった。



「…?」



立ち回っていた勇者役のユーストスも

不思議に思い、小声で声をかけた。



「おい、どうした?まだやられるシーンじゃないぞ…!」



するとその声に呼応するように、だらりと下がった腕がビクッと動き、

肩の方からボコボコっと筋肉が湧き上がってきて



ヴァオォーーッ!!!



と雄叫びをあげた。

その大迫力に耳がビリビリとした。



「い、行くぞ!やぁっ!!」



持ち直したことを確認した勇者は銀灰に斬りかかる。



「ぬるい…」



そう一言発すると、右手から黒い煙状のものを放出して

それが勇者の目眩しとなり、剣は空を切った。

そこから黒い煙はロープのようになり、勇者を締め上げると



「この程度で挑むとは笑止。出直せと言ってやりたいが

あいにく私には時間がない。残念だな。」



と言うと、ロープを締め上げていった。



「ぐ…ぅ…!!」



アドリブだと思っていたが、さすがにここまでリアルな演出に

リリーナはおかしいと思い、観客に聞こえないように、アローに言った。



「アロー様!やりすぎです!!」



その言葉にハッとしたようで、ロープを緩めて転がり、やられた動作をした。

だがこの本格的な演出に観客は歓喜し、2人の戦いに釘付けとなった。

彼らは攻防を繰り返し、立ち回る。


予定よりもだいぶ長く戦闘シーンは続き、そろそろ

勇者の呼吸がだいぶ荒くなっていたのに気づいたリリーナは

舞台袖近くに銀灰の悪魔が来たタイミングでこそっと耳打ちをした。



「アロー様、そろそろやられるタイミングですよ…!」



「!」



それを聞くと、すぐに次のタイミングで斬りかかられた時に

合わせる形で切られて、倒れ込んだ。



「おのれ…わたしは…ただ愛したかった…」



バタリ



「はぁ…はぁ…、やった…ぎ、銀灰の悪魔を倒したぞ…!

姫、見ていてくれましたか…?はぁ、はぁ…。

…ああ、愛しい姫、ようやく私の手に…」



勇者は姫を振り返ると近づき、熱い抱擁を交わす。



(熱い抱擁…ね。メリンダ様見たくないでしょ…て、あ!

メリンダ様…目が…!!え、もしかしてこれも『すちる』なんですか!!?)



悲しんで目を逸らせているかもしれない、と反対側に待機するメリンダを見た

リリーナは、久々に思い出した。

生スチルを愛でるメリンダの顔を。


その時はもう、悪役令嬢ではない、ただの乙女の顔なのだ。

目をキラキラとさせて、2人を見つめていた。



「ふふ」



メリンダの幸せそうな顔を見て、リリーナは少し癒されたのだった。

それを見つつも、倒れた後から、演技であるにしても微動だにしないアローを気にしていた。



(アロー様、途中から気合を入れすぎてましたね…

大丈夫かしら…はやくかぶりものを取ってあげたい…)



長い長い抱擁が終わり、次は姫が慈悲の心で

銀灰の亡骸に触れるシーン。



”汚らわしい…!”



触れる寸前に、マリエナの耳に地に響くような低くおぞましい声が届いた。



「ヒェッ…」



「どうした?」



セリフが遅れたため、ユーストスはマリエナに小声で話しかける。

マリエナは声に動揺したが、ここは重要なシーン。

流れを止めないよう、セリフを続けた。



「ああ、銀灰様の愛はしっかり伝わりました。

どうぞ安らかにお眠りください。」



そう言って、ややビクビクしながら慎重に銀灰の亡骸を触ると、それが

キラキラとした光の粒に変わり、それが舞い散る中、幕が閉じた。



パチパチパチパチ…!!



鳴り止まない拍手が幕を隔てた観客席から聞こえてきて

みんなが演劇の成功を喜んだ。





次のクラスの出し物があるため、すぐに片付けが始まった。

メリンダは衣装の片付けがあるため、楽屋へ。

マリエナとユーストスはまだ演劇の雰囲気が抜けないのか

2人で手を繋ぎ、見つめ合いながら舞台を後にした。


背景も片されていく中、アローがなかなか起き上がらない。


心配になったリリーナは、アローの元に行き、声をかけてみた。



「アロー様、演劇終わりましたよ…?」



「…」



肩は動き呼吸はしているのだが、声かけに反応がない。

慌てて、着ぐるみの頭部分をずらしてみると

汗だくで意識が朦朧としているアローが見えた。



「…あぅ…」



うっすらと開いた目は辛そうにリリーナに目線を送った。

それに血の気が引くような思いがしたのと同時に、

救わないといけない!という使命感が沸き立った。


着ぐるみをすぐに脱がせ、ドリンクを口に持っていく。

それから割と得意な風魔法を使い、アローの体に風を送る。


その様子に心配して集まってきたクラスメイトに強めの口調で言った。



「熱中症です…!医務室に運びます!!

どなたか手を貸していただけないでしょうか!」

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