学園祭の出し物決定
ホームルームではたくさんの課題を提出し、
リリーナは肩の荷が降りた感じがした。
(やっと解放された気がする…)
さて新学期、一発目の授業は
来月開催される、学園祭についての決め事だ。
出し物について、クラスから意見が集められ、話し合いをしながら決めていく。
リリーナはとにかく食べ物系の出し物を提案した。
それはことごとく玉砕され…
話し合いの結果、マリエナが提案した演劇に決定した。
リリーナは食べ物ではなくなったものの、大好きな演劇に関われるチャンスとわかり
マリエナの提案ながらも、楽しみに思った。
だが、それも束の間。
リリーナが思っていたものとは違い、改めてメリンダが言っていた事を思い出した。
マリエナを中心とした、何かしらの強制力があることを…。
演劇のストーリーはこうだ。
『人を嫌い街を襲う銀灰の悪魔。お城の姫がさらわれ、救出に向かう勇者。
彼は過酷なバトルを繰り広げ、ついには銀灰を撃破。そして平和を取り戻す。』
よくあるパターンの内容だ。
噂の銀灰の悪魔を取り上げているところが、みんなの関心を誘った。
そしてさらった理由が、銀灰も姫を愛していたから。だそうで、言ってみれば
姫を取り合う愛のバトルだ。
(演劇の中までも溺愛路線ってどれだけ愛されたいの……?
充分愛されていると思うけど…)
そう思いながらも、それぞれの担当はどんどん決まっていった。
まず配役。
勇者はユーストス、姫はマリエナ、というのは必然的に決まった。
リリーナは脚本には関われず、舞台背景の制作係。
銀灰の悪魔役は、目が見えない髪型と黒髪でイメージが近いというだけで、
アローという男子が選ばれた。
メリンダは衣装制作。
あっという間にお昼になった。
リリーナは食堂の椅子で頬杖をついて考えていた。
先程決まった内容や配役、担当にはかなり不満を持っていた。
脚本に携わりたかった…と思っていたがそれよりも優先して怒るべきことがあった。
(お姫様はメリンダ様しかいないでしょうに!!)
「そのお顔、するのは私の前だけにしてちょうだいね…?」
「ん…?」
ランチのトレイを持ったメリンダが、心配そうにリリーナを見ていた。
そんなひどい顔をしていたのかしら、と少し表情を戻して
話を続けた。
メリンダが向かいに座ったところで話を続けた。
「ですけどねー…メリンダ様しかいないのに…お姫様。」
「そう思ってくれて嬉しいわ、でも私はあの役は辛いと思うわ。ユーストス様には好かれていないし…。
それと仮にもし、私がお姫様役になったとしても、きっと彼女のことだから、
何かしらで入ってくるんじゃないかしら。姫は偽物で、本物はこっちだった!とかで。」
「ああ…なるほど、それはあり得ますね…、まあそもそもメリンダ様がお姫様役をやるなら
勇者はグラフィ…むぐぐぐ!」
全てを口にする前に、顔を赤らめたメリンダが、
あわててリリーナの口を押さえる。
「が、が、が、学園よ、ここ…!!」
つい、いつもの癖でカフェで話している雰囲気になってしまった。
リリーナはしっかり頭を切り替え、もう大丈夫だと、メリンダにサインを送った。
落ち着いたのを察したメリンダも、すぐに手を話してくれた。
「いけない…今日はしゃべっちゃいけない日なのかもしれません…」
(ヴェクトル様とのことも、メリンダ様のことも秘密だったのに…
注意散漫だわ…今日はもう大人しく過ごしましょう…)
そう、反省した。
*
学園祭までの期間は、通常授業が制作時間に変更されることが多く
毎日作業をすることができるため、小道具や衣装などが着々と仕上がっていた。
リリーナはたまたま荷物整理のために保管庫を訪れていた。
勇者の鎧。
紙や布で作られていて、軽そうだがテクスチャーがしっかりしているので
重厚感を感じる。
姫のドレス。
さすがメリンダが制作主導を任されただけあって、とても可愛く、
マリエナのピンクヘアーに合う、薄ピンクと白のドレスだった。
そして銀灰の悪魔のモサモサした体と、黒のボリューム感があるローブ。
…モサモサ???
リリーナは目が釘付けになった。
銀灰の悪魔は黒づくめの人間の噂だった気がするのだけど…?
モサモサの毛が生えた獣のような存在だったの…?マリエナさんの記憶かしら…
初めての情報に、驚いた。
(でも…)
リリーナはそのモサモサに触れると
口元がにんまりした。
(この手触り、最高っ…!!)
一層モサモサを大きく撫で回した。
そしてあることに気づいた。
「ロニ…」
そう、つい先日まで撫で回していたロニの手触りと似ていたのだ。
(これならいくら撫で回しても猫パンチをもらわなくて済むわ…
疲れたらここに癒されに来ようかしら…本気で…)
そんなことすら考えてしまうリリーナだった。




