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【完結】溺愛ってなんですか?平凡令嬢はただひたすらに見守りたい  作者: にむ壱
第2章 ウィンターホリデー
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訪問者といきさつ

「… …」


「…ィーナ…」


「リ…ーナ…」



遠くで誰かが呼んでいる気がする。

呼ばれている…?

それとも過去の記憶…?



気づいたのは家のベッドだった。

ちょうどメイドが交代で部屋に入ってきたところだった。



「リリーナ様……!」



バタバタと慌てて人を呼びに行くメイド。

リリーナは窓から見える傾いた日差しを見て、もう夕方なのだと感じた。

気を失ってから丸一日と少し経ったところだった。



どうやらあれから、魔法騎士団により家まで送られたが

目を覚ます気配がないので、交代で番をしていたところだった。

とても心配していた両親も一安心した。


このことはすぐにセラドまで伝えられ、そのセラドが何やら

経緯の説明がしたいということで、急遽リリーナの元を訪ねた。





そしてその彼はいま、リリーナのベッド横の椅子に座り

前に手を組んだまま俯いていた。



「あ、あの…セラド様…?」



さすがに部屋に通されてから10分は経つのに

ずっとこのままでは、リリーナもどうしたら良いか分からないので

ひとまず、様子を伺うように声をかけてみた。



「……い。」



「?」



微かに声が聞こえた気がした。

うまく聞こえず、リリーナはゆっくりと顔を覗くように動き始めた時。

セラドはいきなり顔を上げ、



「リリーナ…本当にすまなかった…!!」




「!?」



ものすごく辛そうな表情をしたセラドが急に眼前に

現れたので、リリーナは驚いた。

セラドは話を続ける。



「リリーナ、私は…アシュレイと約束していたのに…

あんなに守ると言っていたのに…君を守れなかった…」



その言葉に、あの時マリエナと共に去っていくセラドの姿が

脳裏によぎり、少し胸が苦しくなった。



「いえ…あの場合は、個人の事情よりも騎士団としての対応を優先すべきでしたし、

そうした事で、セラド様の周囲にいた方達を救う事ができたのではないですか?

むしろ、賞賛されるべきことです。」



「それは…そうかも…しれないが…」



「お兄様の一言があなたの責任感を圧迫して、本来の騎士としての仕事ができないのは

本末転倒。お兄様は果たしてそれを望んでいたでしょうか?」



「いや…」



「そうですね。なので、こうして無事ですし、

本当に私のことで気に病むことは終わりましょう。」



「…わかった。」



話に納得がいったのか、セラドの表情も

この言葉を口にする頃には、だいぶ騎士の顔に戻っていた。


先程の言葉は、裏を返せば自分に言い聞かせる事になる。

小さい頃から親しんできたセラドは、決して自分だけの騎士ではない。

少し寂しい気持ちもしたが、彼を束縛する存在になってはいけない…






それから落ち着いたセラドに、今回の事件のわかる限りのことを聞いた。



何が起きたかというと、くつろぎの会の

賑わいに乗じて、植物の暴走が突如起きた。

リリーナの記憶にもある、木々が暴れ出す現象があちこちで起こっていたらしい。

植物たちは、色々なものを絡め取り、増殖していった。


中央広場に集結したそれは、ワゴンをなぎ倒し、

人々ににじり寄ってきた時。


瞬時に木々が元の石畳の中に引っ込み、

何事もなかったかのように静まり返ったそうだ。



もちろん暴走については、警備に当たっていた魔法騎士団も応戦はしたが

有効な策は見つからず、民衆を避難させるのに必死だった。


セラドも、マリエナを始め、民衆を安全な場所に誘導していたそうだ。





「それにしても、あれだけ物が壊れたものの、

重傷者は1人も出さずに済んだことは奇跡だった。」



そうセラドが言った時、リリーナも確かに、と思った。



(あのときは、私や助けてくれようとした隊員の方にも敵意を持っているかのように

見えたのだけど…他ではそうじゃなかったのね…。)




それから一拍置いた後、セラドが深刻な顔になり、ゆっくり言い出した。




「ただ…その現象のせいで、嫌な噂が立ち始めたんだ」



「嫌な…噂ですか?」



「ああ、この現象が10年前のニジェゴフの天変地異に似ていて、

それを思い出す人も多く、騒動のなかで銀灰の悪魔ぎんかいのあくま

出たと噂になっている。」





「銀灰の…悪魔…」




そう、10年前のあの事件の犯人は銀灰の悪魔と呼ばれる

魔道士が起こしたのではないかとも言われている。


金に値する魔力を持つ彼は、元々が人嫌いなのもあるため

魅了の加護も使わず、誰にも心を開くこともなく、孤独に生きていた。

魔力を持て余し、やがて人類はこの世に不要という考えに至り

全てを森に化そうと企てた。


あっという間に自分を中心に森を作り出し、考えられない速度で

あらゆるものが木々に包まれていった。

しかし何かしらの作用で失敗に終わり、作り出した森の全てが瞬時に消えたという。




「実在したんですね…」



「そうだ。この辺りの人はあの一瞬の現象を見ていた。

君は…確か、まだお昼寝をするような年頃だったか。」



「はい、本当にいつもその話題になると、お昼寝していた、で

終わらせるのですが、見た覚えがないということは…

本当にそうだったのだと思います…」



リリーナは恥ずかしそうに答えた。



「ははっ、まあリリーナらしいな。」



セラドはリリーナの頭にぽんぽんと手をやると

うっすらと微笑んだ。




「ひとまず、銀灰の噂については、今調査をしているところだ。」

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