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【完結】溺愛ってなんですか?平凡令嬢はただひたすらに見守りたい  作者: にむ壱
第2章 ウィンターホリデー
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何しにきたの。

「失礼…リリーナ、こちらのお嬢さんはお知り合いなのか?」



2人のやりとりを少し見ていたセラドが

話の切れたタイミングで話しかけた。



「はい。あの…」



リリーナがセラドの問いに応えようとした時、

マリエナが、ぐいっとセラドの前に出てきて

いつものかわい子モードで答える。


リリーナの眼前には、マリエナの後ろ姿が。

このスペースに入ってくるんだ…とリリーナはたじろいだ。



「あの、リリーナ様とは王立魔法学園の同じクラスで、

いつも仲良くさせてもらっています!騎士様はリリーナ様の

お知り合いなんですね?」



「ああ、そうだよ、リリーナとは小さい頃から懇意にしている。

仲良くしてくれてありがとう。」



(ちがう…!仲良くなんかない…!!

この子は学園で、何人もの男性と…)



すぐそこまで出そうだった言葉を

セラドに余計な心配をかけまいと飲み込んだ。

だが、それが逆効果だったと気付いたのは後のこと。



「…あのっ…」



どうにか声をかけて、話を区切ろうとするも

マリエナが矢継ぎ早に話題を変えていくので、なかなか入れないでいた。

マリエナとセラドの会話は進み、



「あの、行き方がわからない場所があるので、ご案内いただけませんか?」



本日の仕事での一つである、道案内を頼んだ。

とうとう、話に入る間もなく騎士の仕事へと移行してしまった。

リリーナはただ、黙って見ているしかなかった。



「わかった。」



そう言って立ち上がるセラドを見上げてみると、

目がいつもと違うように見えた。

焦点が合っているようで、合っているかは微妙な顔。

心が体にくっついていないような…ぎこちなさ。

セラドは見事にマリエナの魅了にハマってしまっていた。


会話を重ねて、マリエナに対して完全に警戒を解いていたセラドには、

再度警戒するには遅かった。




「革製品を扱っている…」



「ああ、それならこの角を…」



いつものセラドなら席を外すときには必ずリリーナに一言

言っていたのに、挨拶もせずにそのまま2人で行ってしまった。



「気を…つけてね。」



返事は返ってこない。





角を曲がる寸前に、マリエナが何か確認するように一瞬目線を送ってきた。

リリーナが何かを仕掛けてこないかを警戒していたのか。



(…これは…メリンダ様の言っていたストーリーの一部…?

わざわざここにユーストス様が同伴じゃないのも

彼との出会いがわかっていたから…?

それって、恋愛対象にセラド様も入っていた…ということ…?)



メリンダの記憶からは抜け落ちている部分かもしれない。

偶然を装うにもおかしすぎる点が多々あり、マリエナは

あらかじめ知っていたストーリーを追うためにここに来たと信じるより他なかった。


リリーナが立てた嫌な仮説が、立証されてしまった。







ひとり休憩場所に残されたリリーナは

立ち上がったまま、2人が去った曲がり角の方を見つめていた。



大切な人を取られたようで

リリーナの心がざわつきだした。




おちつけ、耐えろ。

(メリンダ様もずっとこうだった)


震えて泣きそうだ。

(泣いたら負けだ)


怒りを流して抑えろ。

(ゆっくり、おちつけ)




必死でうまく心をコントロールしようとするも

そのざわつきがだんだんと強く、痛みを伴ってきた。



「痛っ…」



リリーナは立っていられなくなり、地面に膝をつく。





ドンッッ!!!




その時、地面を突き上げるような大きな地響きが起こった。


次に細かな揺れが続いたかと思うと、舗装された石畳の間から木の枝が

無尽に伸びてきた。

それはまるで意思を持っているかのように、備品が入った木箱などを包み込む。

リリーナは信じられない光景を目にしていた。



「きゃ…!」



早くこの場から立ち去りたいが、胸の痛みで動けず、椅子に寄りかかっていた。



(セラド様…!

……きっと…マリエナさんを守っているのね…)




プツ…ッ…




そう考えたとき

自分の中で張っていた弦が切れた感覚があった。



瞬時にリリーナは暗闇に飲まれるかのように

深く意識を持っていかれた。


遠くなる眼前の光景。




荒れ狂う木々が木箱を潰し、教会の柵に絡みつき

リリーナの方へ近づいてくる。



シュルルル…ッ!



木がリリーナに到達する前に

横から攻撃を仕掛けて、暴れる枝を消去する人がいた。



リリーナの少し手前に着地したその人は、黒服に黒いローブを被った人物。

暴れる木々に手をかざすと、青黒く光り、それを消し去る。



(魔法騎士団の方がいらしてくれた…のね。

黒服の隊の方…覚えておこう…)



薄れそうになる意識の中、後でお礼が言えるよう

特徴だけは覚えておいた。



黒服の隊員は、暴れる木々を一つずつ消し去っていたが、

埒があかないと判断したようで両手を合わせ、それから

指先を口元に当てると、何やら唱えた。

今度は両手をひろげ、掌を上に向けて、空間に黒いモヤを発生させた。

やがてそのモヤが一帯を包むと、木々は一斉に消え去った。


が、落ち着いたのも束の間。

一瞬にしてまた生え、今度は黒服の隊員を狙って

木々が伸びていく。



シュルルッ…!!



すんでのところで、回避した。

リリーナの体の感覚は鈍く、目だけが自由に動く状況。

動けない自分のために危険をおかしているのに

申し訳なさも含めて、すごく嫌な気分になり

どうにかしてこの状況をおさめたい、と

強く思った。



とそこに、どこから現れたか、たくさんの小花が舞い散る。

途端に木々の動きが止まった。


リリーナもその花の香りに包まれて

だんだんと心が落ち着いていった。

そして胸の痛みまでもが、スッとひくように思えた。



木々の動きが止まっている中、

黒服の隊員がリリーナの目の前まで戻ってきた。

次の瞬間、彼は黒いローブを翻し、リリーナを

包み込むようにしたのだった。



(魔法騎士団の保護の仕方は独特なのね…でも

包まれるのって安心する…)


そう思いながら、意識はさらに深く遠くなって

記憶はそこで途切れた。

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