真っ赤に染まるのは景色と…
枝の上でバランスを取るのにもだんだんと慣れ、改めて景色を
見てみると、先ほどよりもさらに遠くまで見渡せた。
夕陽を浴びて、街全体がうっすらとピンクに染まっている。
「わぁ…とってもいい眺め…!」
リリーナは少し目線が高くなった場所からの景色に感動した。
「だよね。リリーナはここの眺めが好きすぎて、木登りを習得
したからね。しかも俺より上手くなって、俺が悔しく思ってたくらいだからね。」
「…枝を触っていたら、少し懐かしい感覚があったんですが
あれは木登りの感覚だったのですね…」
「ははっ、体はしっかり覚えてたね。」
「えっと、だからといって、降りる時は放置しないでくださいね?
だってほら、ブランクが…」
「ははっ、大丈夫!」
(その大丈夫はどっちの意味の大丈夫だろう…)
それからまた、あの家は覚えている、あそこが広場になっている
家が増えた、など、話を重ねていた。
そんな中でレオンは、自身の遠い記憶を思い返していた。
『おれは夕陽にちかう!大きくなったら…』
「…ん?どうしました?」
「…え?…あっ、あー、いや…」
レオンとしては一瞬、頭に意識をやっただけと思っていたが
リリーナにとっては急に「うん」「そうだね」くらいの返答になり
彼女を見つめる目が変わったように感じたからだ。
「少しぼーっとしてしまったみたいだね。」
「そうですか?大丈夫ですか…?」
「うん、ありがとう。…そろそろ行かないとね。」
「…そうですね。じゃ…」
と、リリーナが体制を変えようと、座っている位置から動いた瞬間
バランスを崩して体が後ろへ…
グラッ…!
「きゃ…」
「……っと!!」
瞬時にレオンの手がリリーナの肩を抱きささえる。
「ありがとうござ…」
胸を撫で下ろし、レオンにお礼を言おうとしたところで
思わず言葉に詰まってしまった。
顔がとても近くなり、髪の間から覗く彼の
エメラルドグリーンの瞳の色が、より濃く見えて鼓動がはねる。
リリーナの肩にかかった手に少し力が入るのを感じた。
2人の目線は合ったまま。
レオンの瞳が少し潤んできたかのようにも思えて、
リリーナの体温も急上昇する。
言葉も見つからず、どう動いていいかもわからず
跳ね続ける鼓動が、彼に聞こえないかが気になるほどだった。
「リリーナ…」
先程までの明るい感じではなく、
しっとりと落ち着いたように名前を呼ぶレオン。
彼の顔は夕陽に染まって真っ赤だった。
「……ご、めん…」
そういい、彼は顔を伏せてしまった。
上からチラッと見える耳の裏までが赤く感じたのは
夕日のせいだろうか?
「レオン…様?」
顔を一向にあげないレオンに、少し心配になって
リリーナは声をかけた。
すると、レオンは下を向いたまま大きく深呼吸をした。
次に顔を上げた時はもう、いつものレオンに戻っていて
「危なかったね。俺が先に降りるからあまり動かないでね。」
と、肩をぽんぽんとして、手が離れた。
「……はい」
急な彼の変わりように、先程までの彼はまるで別人だったかのように思えて
逆に鼓動が早い自分だけが残された気がしたので、落ち着かせるように
深呼吸をした。
「ありがとうございます。」
「…うん。」
降りる時は、レオンの反発魔法と空間魔法を組み合わせた魔法で
木の枝からジャンプして降りても、ゆっくり着地することができ、
安全に降りられた。
「そろそろ暗くなる頃だし送るよ。」




