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【完結】溺愛ってなんですか?平凡令嬢はただひたすらに見守りたい  作者: にむ壱
第2章 ウィンターホリデー
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お久しぶりの彼

ウィンターホリデー2日目の午後。

リリーナは庭のガゼボで唸っていた。



(習ったはずなのに、わからない…!)



張り切って早めに課題を終わらせようと、

取り組んでいたものの、難易度の高い内容に早速つまずいていた。




「えっと、この合成は確かこの教科書に…あっと…!」



バサバサバサ…!!



テーブル上の教科書やノートを、盛大に地面に散らかしてしまった。




「やだぁ、もう〜…」



リリーナは肩を落とすと、椅子から降りて、

散らばったものを集めながら、ため息をついた。



「ちょっと…お茶にしよう…」




落としたものを手早くひとまとめにして、よいしょと持ち上げて立ち上がった時。



「リリーナ…?」



背後から声がした。



「?」



彼女がその声の方に目を向けてみると、

門と屋敷を結ぶ通路に、見知った顔が立っていた。



白色の正装に包まれたその人は

右目のすぐ上あたりからゆるく斜めに分けられた深い青緑色の髪を持ち、

通った鼻筋とバランスが取れた切長の目から見える薄いグリーンの瞳でこちらを見ている。



「…セラド様!!」



リリーナは本たちをテーブルに置くと

彼に駆け寄り、抱きついた。

それにぐらつきもせず抱き止めると、切長の目をさらに細めて

嬉しそうに言った。



「おかえり、リリーナ。」







セラドはニジェゴフが誇る魔導騎士団に所属している。

魔法も剣の腕も立ち、若くして第2隊の隊長である、とても優秀な人物だ。

毎日忙しくはしているが、たまにこうしてストークス家を訪れていた。


彼はちょうど午後は非番だと言うので、そのまま一緒にお茶を楽しむことにした。



「学園生活はどう?」



「毎日新しい発見の連続で楽しいですよ。でもやっぱりレベルが高い学校なので

常に気は抜けないですね。」



「ふふっ、あっちでもしっかり努力家なんだね、えらいよ。」



両肘を肘掛けに置き、体の前で軽く手を組み、微笑むセラドを見て

リリーナは、その姿が絵になるなぁと内心感動した。

まるで演者の絵姿のような眼前の光景に、見入ってしまう自分がいる。



(この姿をメリンダ様にも共有したい…!)



などと思ってしまったものの、それは早々に振り払い話を続けた。

話は、学園生活からはじまり、街の様子、趣味の観劇の話などに及んだ。

ひとしきり話した後、一番報告しておきたいことを忘れていたのに気づいた。



「そうだ、セラド様。私、魔力量上がったんですよ!赤から青に…!まあ、

元が少なかったので、やっと人並みになれたかな…って程度なんですけどね。」



「すごいじゃないか、1ランク上がるなんて、相当頑張らないとできないことだよ。

謙遜しなくていいんだ。リリーナの努力の成果は、褒められるべきことだよ。」



リリーナは褒めてもらったことに嬉しくなった。

頑張った甲斐があったと。

手を空に突き上げて叫びたいところだったが、お茶を一口飲んで落ち着くことにした。

それから少し間を空けて、セラドはつぶやいた。



「アシュレイにも見せてあげたいよ…。」



その一言で、一気に気持ちが引き戻されてしまった。



「…お兄様……」



「ごめん。ここにいるとつい、あいつの事を思い出す。

引き続き探しているよ…でも手がかりはまだ掴めないままだよ…。

ただ、あいつが願ったことはこれからも守っていくから安心して欲しい。」



リリーナは小さく頷いた。




リリーナにはアシュレイという名の兄がいる。

セラドと幼馴染で同い年。よくこの庭で過ごしていた。

それが10年ほど前、ある日突然姿を消したのだ。

親友のセラドにたった一言、家族をよろしくと伝えたまま。



直後から広範囲の捜索が行われたが

手がかりはひとつも見つからない。

ただ、生きていることは確実にわかっている。

なぜなら、不定期ではあるが、窓際に手で摘まれた小花が何本か届くからだ。

兄には何か事情がある、そう信じて家族をはじめ、セラドも捜索を止めることはなかった。



風が寒くなる前に家に入ったほうがいいと

セラドは早めにお茶の時間を切り上げてくれた。



「またくるよ。」



そう言い、大きな手でリリーナの頭をふわっとなでて、広い胸によせる。

また一層逞しくなったかしらと感じながらも

その時間はたった数秒だが先程の不安が少し解消したように感じた。



馬車を見送った後に、リリーナはずっと保管してある兄の部屋に入ってみた。



実はリリーナは、兄がいなくなったショックでそれ以前の記憶が無いのだ。

兄のことは断片的にしか覚えていない。

そんなかけらの記憶ばかりだが、優しい存在感は感覚で覚えている。


リリーナはベッドサイドの小さなテーブルに置いてある、

家族の絵姿をに目を落とした。

少年のあどけなさが残る、銀髪の姿…。



「お兄様……会いたい…」

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