例の人の本性
その日の晩。
とある邸宅のとある部屋。
「…おかしい、うまくいかない…。」
小さなランプあかり一つの、薄暗い部屋の中で
分厚いノートを見ながら
イライラした様子で爪をかむのは、マリエナ。
学園の可愛らしい様子とは真逆で、眉をひそめてノートを見ている。
そこにはびっしりと文字やら矢印やらが書かれてあり、そこにまた
何かを書き加えている。
「何かが狂っている…」
彼女はノートの初めの方に、荒々しくページを戻すと
ひとつひとつ確認するように、指でなぞった。
「ユーストスはメリンダへの好感度を下げて、確実に私に気持ちを向けられた。」
少し下に指を移し、トントンとたたいた。
「だけど…ヴェクトルの好感度が上がりにくい。
彼の用心深さのせいでうまく入れていないのかしら…」
さらに斜め下へ指をスライドさせると
「レオンはやっと条件をクリアしたけど、進みが遅い。お姫様だっこのために
何度トライした…?」
「魅了を常時発動…してるのよね?…ユーストスにはしっかり効いているけど
ヴェクトルはたまに剥がれているし、レオンなんて数分しか効かない。
もう…どうなってんの!?」
ノートの指を右へスライドさせる。
”メリンダ”と書かれた部分へと。
「それと一番不思議なのはこれ…
悪役令嬢じゃないの?攻撃が甘すぎて私の好感度が上がらないじゃない。
何が好きで自作自演なんてしなきゃいけないの…面倒だわ…!」
そして右上を見上げて思った。
「…あとあの子…。…記憶にないのよね…」
マリエナはペンを持ち、新たなページをめくると
何やら手早く書き始めた。
「恋愛って難しくない?ヒロインは無条件に愛されるようになってないの?
…もう一度記憶を辿ってプランを練り直さないと…」
*
*
第1章おしまいです。




