ターゲット オン
マリエナは今やもう、校内のほとんどの生徒に知られる存在となっている。
そして愛されている。
朝はユーストス、ヴェクトルとの登校が普通。
教室では、班を作るときも一番人気。
休み時間も、他のクラスや学年を超えてまで人が訪ねてくる。
「まぁ、それは素敵ですね!」
「とても楽しいです!うふふ…」
屈託のない笑顔と発言が良いとみんなには評判だ。
そんなマリエナだが、メリンダと仲良くする事を隠さなくなってから
今までは空気だっただろうリリーナに、目を向けてくるようになったのだ。
(今日もまた、視線が怖いんですけど…!!)
リリーナは怯えていた。
「メリンダ様っ。熱い眼差しを感じますぅ〜〜!!」
リリーナは小声で彼女に助けを求める。
「だから言ったのよ、あからさまに私と仲良くすると嫌なことも起きるわよって。」
「それはいいんですよ!私が決めたことですから。
ですけど、見られるだけってのもなかなか精神が削られますね…」
などと言っていたのだが、そうこうしているうちに、
ごくたまに交わす言葉さえも刺々しくなっていた。
みんなが気づかない程度に、大きく回りこんだ嫌な言い方をしてくるのだ。
ある日の休み時間。珍しくマリエナが
リリーナの席まで来て、話しかけてきたかと思ったらこうだ。
「リリーナ様、蔵書室でのお怪我、もう大丈夫ですか?
私、あの時すごく心配したんですよ。」
「…はい、ご心配いただきありがとうございます。」
(その話を引っ張ってくるのね…でも心配してくれてるしここは感謝ね。)
「あの、ヴェクトル様も大丈夫って言ってましたけど、怪我が痛そうでしたよ。
リリーナ様が我慢するように、とか言ってませんか?彼がかわいそうです!」
(えっ…)
リリーナは信じられない言われようにびっくりした。
こんな思考を人にぶつけてくるなんて!と、内心思った。
「そ…そうですね、私の不注意からマリエナさんの大切なお友達に
ご迷惑をおかけしてしまい申し訳なかったです。
今後はお邪魔しないように努めますので…」
そう言い、会釈をして足早に廊下へと向かった。
「そんな、私は邪魔したことなんて怒りませんよ〜?」
やや大きな声で、離れていくリリーナに声を掛ける。
わざとみんなに聞こえるように言っているのではないか、と
心がざわつき、彼女の思考を怖いと感じた。
「あそこまで思い込みが激しいと、何を言っても理解してくれないわ。
魅了のせいで周囲は彼女の言うことは絶対と信じてしまうから、
いちいち気にしていたら身が持たないから忘れなさいね。」
と、メリンダになだめられて、落ち着いた。
*
カーン カーン
始業のベルが鳴る。
先生が水晶を持って教室に入ってきた。
「本日は、そろそろ今学期も終わるので、前半はみなさんの成長を見てみることにします。
皆さんは入学してすぐに、魔力測定をしたのを覚えていますか?
あれから自分がどう成長したかを確認してみましょう。」
これを聞いて、リリーナは気合が入った。
なぜなら、彼女は日々メリンダとカフェを楽しみながらも
魔力向上の鍛錬を重ねていたからだ。
赤から青へのランクアップを、少し期待していた。
(今度こそ青になっていますように…)
早速順番に測定が始まった。
魔力を込めて光る水晶の色に、みんなが一喜一憂する。
金のマリエナを筆頭に、ユーストスとメリンダの紫など
元々高位色だった人達は変わらずキープをしていた。
「おお…!!」
ここで歓声が上がった。
ヴェクトルだ。
彼は青から紫に上がった。
(ヴェクトル様…流石の努力家!)
そう思いつつも、リリーナの頭には少し蔵書室のこともよぎった。
やはり、光魔法を使える素質があるのでは…と。
順番を変わろうと歩くヴェクトルを、ぼんやりと目で追っていると、
ふいに目が合った。
彼は少し嬉しそうに目を細めると、うっすらと笑みを携えた。
それに驚き、すぐに目を反らしてしまう。
(ん…?初めての魔力測定の時も似たようなことがあったけど
真逆だったような…?)
そしていよいよリリーナの番となった。
リリーナは集中し、水晶に向けて一気に魔力を放出した。
ポワァ…
水晶は青く光った。
「やったぁっ!!」
思わず跳ねて、メリンダを見ると
彼女も同じように喜んで、うんうんと頷いていた。




