放課後の危険
翌日はよく眠ったからか、スッキリと起きられた。
頭痛も取れ、あのショックも自分の中でどうやら
落とし所を得たようだ。
リリーナは今日の予定を考えてみた。
メリンダは家の用事でお休みだと聞いている。
(この間は『すちる』で行けなかったから、
久しぶりに蔵書室で、たっぷり読書をしようかな!)
それを楽しみにしながら
日中の授業をしっかりとこなした。
放課後直前の時間となった。
ここは蔵書室。
扉には一枚のプレートがかけられていた。
『下階での重力魔法実験のため 使用禁止』
カタ…カタカタ…
換気のために少し開けていた廊下の窓が音を立てた。
フワッ…!
外の砂を若干含んでいるのか、キラキラしたものが、窓から吹き込んできた。
それは、その場で大きくぐるりと回転すると、まるで意思があるかのように
方向を決めて廊下を抜けた。
パァンッ…!
カタカタッ…
突き当たりにある、蔵書室の扉に勢いよく当たると
プレートを少し揺らし、静かになった。
ブゥワッ!!
次の瞬間、
ひときわ大きな風が吹き上がり、ドアプレートを巻き上げたかと思うと、
外れたそれを巻き取り、瞬時に窓の外へ抜けて行った。
後には少量の砂がちらちらと舞いおちるだけだった。
カーン カーン
ホームルームが終わり、生徒たちがパラパラと教室から出てくる。
(さあ、待ちに待った放課後…!今日も演劇の本を読み漁るわよ。)
ホームルームが終わり、リリーナは素早く教室を出る。
今日もマリエナには、ユーストスとの仲良しっぷりと
ヴェクトルへの過剰なスキンシップなどを見せつけられたが、
昨日のこともあり、気持ち穏やかに傍観できた。
他の教室ではまだ帰る準備をしていたり、そのままクラスメイトと
話を続けている人もいる。
それらを横目に、足早に蔵書室へと向かった。
「やった…!今日は一番乗りね。」
扉をそっと開けて入室したところで、まだ誰も来ていないことに気づき
リリーナは喜んだ。
前からとても人気で、争奪戦によく敗れていた本が今日は読める。
心を躍らせて、本棚を覗きに行った。
カタン…
「?」
(…気のせいか。)
「あ、あった!」
扉の外では、先程のドアプレートが元通りにかかり
微かに揺れていた。
リリーナは、お気に入りの窓際の席に座り、ページをめくる。
(へぇ…今当たり前のあれって、この人が考えた表現なの…?
わぁ!この小道具、この時代からあるんだ…)
目から飛び込んでくる情報に感動しながら
読み進めていた。
(次は…)
と、ページをめくろうとした時…
ズンッ!!!
下から突き上げるような大きな揺れを感じた。
「なに…!?」
リリーナは立ち上がると、外に出ようと振り返った。
次の瞬間、今度は波打つような激しい振動が起こった。
「きゃっ…!!」
それに立っていられず、よろけて手足を床に付いてしまった。
「と、と、とりあえず…出なきゃ…!!」
揺れが続く中、這いながら扉へ向かおうとする。
しかし揺れが激しくなり、なかなか進めないでいた。
本棚もガタガタと大きく音を立てて揺れている。
元々落下防止の棒が付いているというのに、すでに何冊かの本は
地面に落ちているのが見える。
「やだ、や…だ、待って待って…!!」
スゥウ…
「…!…」
急に何もなかったかのように、揺れが収まった。
リリーナは、今がチャンスとばかりに、急いで扉へ向かおうとする。
「!!!…動かない…!?」
今度は、床に付けた手足が離れなくなってしまった。
力一杯引っ張っても1ミリも動かせない。
「どうな…ってる…の…!?」
体重をかけて、グイグイと勢いをつけて動こうと試みる。
ジィィイイン…!!
段々と地面に引き寄せられるような感覚になってきたかと思うと、
その力が徐々に強くなり、肘、肩、と地面に着き、段々と体制が崩れていった。
「…こわい…!!出たい…!!」
何が起こっているかわからず、動けず。
リリーナはとても悲しくなり、目が潤んできた。
スゥッ…
リリーナの体が急に軽くなった。
吸い付けられる感覚がなくなり、自由に体が動かせるようになった。
今度こそ今のうちに…!と
体を起こした瞬間…
ガダダダダッッ…!!!
先程と比べ物にならない大きさの揺れが起こった。
「や…!…は、は、早く…!!」
揺れは続き本棚も大きく揺らす。
本棚同士がガンガンと、ぶつかり合う音が恐ろしい。
リリーナは必死に扉を目指していた。
グラッ…!!
大きく揺れた本棚のひとつが
リリーナに向かって倒れかかってきた。
「ぃや…っ!!」
ガッダダ…ダンッ!!!
バサバサバサ…!!!




