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助けてくれたのは?

「ん…」



(ここは…?)



リリーナは目を覚ました。

天井を見ると見覚えのある壁紙。

そこから下がった、仕切りカーテンが

ベッドを囲んで目隠しをしている。


まだ日はあるようで、部屋は明るかった。


窓から聞こえてくる魔法授業の声。

廊下は静かな様子から、まだ授業中だとうかがえる。



リリーナは、そっと起き上がると、自分の体の様子を調べた。


(胸…もう痛くない。頭…意識も遠くない。

ちょっと寝たのもあって、少しスッキリしたわ。)



体調を確認すると、そっと仕切りカーテンから顔を出し、部屋の様子をみてみた。



「あら、もう大丈夫なの?」



ちょうど様子を見ようと、ベッドに向いていた先生と目が合った。



「あぁ、はい。ちょっと…寝不足だったのでそれでかなと…。」



「そう?回復魔法を少しかけたけど、まだ根本はとりのぞけてないから

今日は大事をとって寮に戻りなさいね。」



「わかりました。あ!でも、バッグ…」


「お友達が持ってきてくれたわよ。」



先生はベッドサイドを指さした。

指のさす場所を見ると、リリーナのバッグとメモが置かれていた。



「わぁ!」





それから、リリーナはカーテンを閉め、寝ていて乱れた服を整えていた。

先生から言われた”お友達”というフレーズをかみしめては、口元が緩んだ。

そんなことをしながら、先程のメモを手に取り、読んでみる。


『リリーナさんこれを読めるまでに回復されていると言うことを

前提に書きますね。調子はどうでしょう?連日見せている光景がお体に負担を

かけていたのなら本当に申し訳ありません。

でも、今日は近くにいてくださってとても心強かった。

その感謝も伝えさせてくださいね。

そう、今日のこと、また近々話させてください。カフェ行こ!』



リリーナはふふっと笑った。



「メリンダ様…ありがとうございます!うん、カフェいこ!」



メモを大事にバッグにしまい、

靴を履こうとした時、

ふと、誰がここまで運んでくれたのだろう、

意識を失う間際の腕の感覚は、男性だったような気がしたのだけど。

と気になった。



カーテンを開け、先生に聞いてみた。



「あの、私をどなたが運んでくださったのかご存知ですか?

しっかりお顔を見ないままだったので…お礼を言わないとと思いまして…。」



「ああ、フリンクくんよ。」





寮への道をゆっくり歩きながら、リリーナは考えていた。



(フリンク様…ううーん…知り合いにいたっけ…)



知り合い、クラスメイト、知る限りの男性の名前を考えてみたが、そこにはない名前。

メリンダ様の知り合いかもしれない。

明日聞いてみよう。



そう思い、顔を上げた時に、男性の姿が目に飛び込んできた。



濃い紫みの青色の、少し長めのウェーブヘア、鼻筋を隠さんばかりの前髪から

エメラルドグリーンの瞳がチラ見えする。少し口角が上がった口元。

なんとも綺麗な顔立ちの男性だった。


同じ学園の制服。




「考え事、終わった?」



「え」



「寮まで送るよ。」



この綺麗な人は一緒の学校なんだ、と認識したくらいだと言うのに

カバンをひょいっと取られ、すごく親しげに話してくる。



(ん、ん、んんーー??)



リリーナの中でさらに混乱した。

絵で示すと、メーターが振り切れて

シュンシュンとスチームが出ている感じだ。



「あ、あああ、ああの、ああ、あの…

ど、ど、ど…どなた…で、しょう、か…」



なんとか言葉になるように、振り絞って言った。



「あー…」



一瞬、少しバツの悪そうな顔をした気がしたが

すぐに笑みを戻した。



「レオン。レオン・フリンクだよ。」



「あああ!フリンク様!!あなたが、フリンク様なのですね。

失礼いたしました。お顔を存じ上げずじっと見てしまいました…」



リリーナはペコっと深くお辞儀をする。



「はじめまして、リリーナ・ストークスと申します!

あ、あの、あなたが私を運んでくださったと聞いて…

先程は、本当にありがとうございました!!」



「いや、全然。それよりも、大事に至らなくて良かったよ。」



「それがあの、ただの寝不足なんです…昨日の課題に手こずって…」



「ぷはっ…!!そうだったんだ!おもしろいね、君は。」



「はい…友達にも言われます…」



その後の帰り道は、お互い他愛のない話をし

あっという間に寮の入り口に着いた。



「じゃあまた。ちゃんと休んでね。」



「はい!ありがとうございました。」



リリーナはカバンを受け取ると、深くお辞儀をして寮の門をくぐった。



(フリンク様。すごく優しくていい人だな。

見ず知らずの人でも助けられる勇気ってすごいなぁ。)



「…まあ…そうだよね。」



リリーナの後ろ姿を見送るレオンは、小さくつぶやいた。

傾いた日が、彼の少し悲しそうな顔を照らした。







翌日、メリンダに一通りお礼を言い、フリンク様に助けてもらったことを伝える。

彼女もレオン・フリンクは知らないと言っていた。


そんな話をして何日か過ぎ

あれ以降、彼と出会うこともなかったので、記憶の片隅にしまわれていった。

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