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再びのトラブル

「きゃ…」



教室の後ろの方で、小さな悲鳴が聞こえた。

その声に1番に反応するのは、ユーストス。



「どうした!マリエナ…!」



(反応…早すぎじゃないですか…ユーストス様…)



リリーナはそんなことを思いながら、窓のすぐそばにいる

マリエナを見た。



「私のガラスのペンが、こんなところに…!」



彼女は出窓の窓台に無惨に転がされた、真っ二つのガラスペンを指していた。


たちまちマリエナの目が潤み、声を振るわせていった。



「ひどい…メリンダ様にお貸しして、戻ってこないと思っていたら…」



その言葉にユーストスを筆頭に、一斉にメリンダに目が向く。



「メリンダ…君は…また…」



と言ったところで、彼女はいなすように言葉を被せた。



「ふぅ」



といって立ち上がり、マリエナに向くメリンダ。



「私はあなたにペンをお借りした覚えなんてありませんわ。

そのような粗末なペン、お借りするくらいなら暗記する方がマシですわ。

そんなに疑うのなら、魔跡をたどればよくてよ?」



と言い放ち、強い目線をマリエナに送る。

魔跡とは、魔力の痕跡のことで個人が特定できるものだ。



「そんな、犯人探しみたいなことはしません…!」



一層涙を流し始めたマリエナに



(さっきメリンダ様に…って思いっきり名指ししたような…)



と、ツッコミを入れたかったが、そんな雰囲気でも無いし

そもそもこんな状況で発言する勇気もないので、

リリーナは側で見ているしかなかった。



「こんな嫌がらせをする者の気が知れないが、ホームルームも始まる事だし、

ひとまず片付けて、君は落ち着こう…」



ユーストスは、メリンダを一瞥すると、ヒック、ヒックと肩を揺らすマリエナの

背中に優しく手をやると、席に連れて行く。



ヴェクトルが素早くガラスペンを片付けているのを横目に見ながら、

リリーナはメリンダの方に向いた。


彼女は前に向き直し、座るところだった。

それが心なしか肩を落としているように見えた。



(ああ、これも先見の力で見えていた事なのかな。

でも、そうであってもこんなのツライ…)



マリエナにつられて涙ぐむ令嬢もいたが

リリーナはメリンダの気持ちを考えると、目がうるんできた。



そして、おもむろにポーチを取り出し何やらゴソゴソと作業をし始めた。





ホームルームが終わり、生徒たちはそれぞれ帰路につく。


ユーストスはマリエナを側に、ヴェクトルを後ろに連れて、

メリンダの元へやってきた。



「メリンダ、君とは少し話をしなければいけない。明日、昼食の時間に

食堂の特別室へ来てくれるかな。今日はマリエナになぜか壊れていたペンの

代わりを買ってやるから、先に失礼するよ。」



「承知いたしました。」



優しい口調だが、少しトゲトゲしい言葉を選び、蔑んだ目線で彼女を見る姿は

明らかにメリンダの味方ではないと感じ取れる。

メリンダは挨拶で目を伏せたまま、彼らを見ないでいた。


教室を出て行く3人。

リリーナはマリエナの表情を伺ったが、悲劇のヒロインさながらの

悲しげな潤んだ瞳で、ユーストスを見ていた。



(なんか…!!もうっ……!!)



悲しいのか腹立たしいのか、よく分からない感情になった。

そうなったが、いまはこれを!



ガタンッ!



リリーナは帰る準備をし、席を立つと

やや早足でメリンダの席に向かって歩いた。



サァーーッ!



と、通りすがりに何かをメリンダの机に滑らせた。

目線は向けず、誰にも分からないように。

そしてそのまま教室を出て行った。



メリンダが滑り込んできたそれに目をやると



「ブフッ…!」



小さく吹き出した。

小さなメモに大きく書かれた文字。




『カフェ・モーメントにて待つ!!!』

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