第1部 各々の日々 壱人目 第2話
雪村 榛葉 は、欧州の東出身の外人の父親と、
日本人の母親の間に生まれた、言わゆるハーフの子であった。
身体的特徴の中でも父に似たのか、
髪色は濃色の金髪より茶色がかっているといった具合で、
母とは違い茶髪でもない、ちょっと中途半端な具合な髪色だった。
瞳の色は父の影響なのだろうか、灰色だ。
父は、大手の半導体製造会社に勤務しており、
今では会社全体から見ればかなり上の立場になっている。
だが、勤務先が海外のため、息子である榛葉を連れて行くわけにもいかず、
また、外人名を名乗ると事あるごとに面倒なことになってしまうと考えた両親は、
榛葉の性を母親の旧姓である雪村にした上で、
母親にも雪村のまま名乗ってもらうことになった。
一度帰ってきて思い出を作っても、やはり一緒にいられる時間はあまりにも短い。
幼少期を寂しく過ごすことがないように、
ちょうど会社から退いたという50代後半の元上司に、
榛葉にコンピューターというものの世界を見せてやってほしい、
週に何回かきてやって遊んであげてほしいと頼み込んだ。
元上司は快く受け入れてくれた。だが、さすがにボランティアとして
やってもらうわけにはいかないといって、
父親が月ごとに一定の額を渡すことを望んだ。
元上司も、最初は断わろうかとも思ったが、
退職金と積み立ててきた金だけで
これから先を生きていくには心許ないと感じ、
ならば自分のためにも、榛葉君のためにも、
部下である榛葉君の父親のためにも。
“引き受けてやろう”と決心した。
彼は決意を固めた後、早速依頼を受けることを伝えたのと、
仕事内容の細かな確認、
報酬の具体的な金額や雇用期間など、いろいろ話しているうちに、
すっかり日が暮れてしまった。
上司は帰り際に、「任せておけ!」と、目線と身振りで表現した後、
『頑張れよ。』と、にこやかに微笑みながら言った。
最後にもう一度、任せておけよと腕で力こぶを作った後、
じゃあな、と手を振った。
父親も、「よろしく頼むぞ。約束は守ってもらう」と言って、
少しばかり脅すような圧を掛けながら、
上司と同様、にこやかに微笑んで、さよならと手を振った。




