第1部 各々の日々 壱人目
雪村 榛葉 は、自作PCを作るのをきっかけに、
回路の設計の改良案を頭の中で作り、将来、
大人になったら回路基板の設計に携わろう。
と、そんな夢を見ながらひたすら勉強をして、早数年。
某PCショップで販売員としてアルバイトをしているしがない男子大学生だ。
彼は優秀だ。優秀なのは優秀なのだが、
考え方が常人とかけ離れている部分もあるため、
仕事の成績に関しては可もなく不可もなく、という感じの店員だ。
店舗業績3位を取ることもあるが、やはり業務時間の差だろうか、
圧倒的に正社員の中でも昔から働いている古参の方々にはとても及ばない。
慣れているからか、クライアント一人当たりにかけている時間自体
はそこまでないのに、とても評価も高く、
購入日の後日に任意で回答するタイプのアンケート調査では、
その二人に勧められたPC構成の自作PCや、
BTOのノートPC,デスクトップPCに対して、
『自分に合っていて満足している』と答えた人が8割5分を超える。
それに対して、その二人以外にもある程度の正社員はいるのに、
店舗業績3位を取ることもある榛葉。
彼の何がアドバンテージかというと、
顧客一人当たりの相談時間を長くとる代わりに、
顧客がどのぐらいの性能を必要とすることをしたいかと話を聞き、
また、その主要な用途以外でよく使う順に
榛葉自作の使用用途の表にある用途カードを並び替えさせたりして、
より詳しく、綿密に、精度の高い情報を得ることで、
予算内での最適なPCの構成を
【できる限りの要望に応えながら】をモットーに提案している。
それによって客からの絶対的な満足度評価を得ている。
その点、榛葉はやりがいを感じながらも、将来の夢である、
半導体製造の中でもCPU GPUの省電力化,高効率化に関するデザイン
に携わった仕事をやるときに果たして、僕の心は
このような達成感を味わえるまでに自分が活躍できるだろうか。
と、少しばかり苦悩を抱き始めていた。




