あなたは校内一の変人ですわあ!
毎日投稿を目標に!!
目標は破るためにあるものだと、あなたも思いませんか?
パチッ!!そう音がするかと思うくらい綺麗に瞬きをした。突然意識が覚醒した敵キャラの復活シーンの如く、パチリと。これ動画にして取ったらきっといい絵が取れたはずよ、うん。
体を動かさず、というより動かせず、今の状況を理解するのにたっぷり10秒ほど使って、やっとのことで飲み込めた。
だがその前に一言、どうしても言いたいことがあった。
「知らない天井ね、ここはどこかしら?」
ここはどこかしら?なんて言っておきながらも、今病室のベッドの上で寝ていたのはわかっていた。
「目が覚めたんですね、姫子さん。良かったです、無事で」
病室で寝転ぶ自分以外に誰もいないと完全に油断していた私は声のした方へ勢いよく首を曲げて確認する。グキィッ!っと首から鳴ってはいけないような音がした気がするが、今は気にしない。
「く、首大丈夫ですか!??今しちゃいけない音が…!後で頭だけじゃなくて首も後で一緒に見てもらわないと!」
慌てた様子で私を心配するこの男の子。
顔を見てやはり思っていた通りの人物がそこにいた。
「頭を診てもらうって……。何よ、実君。酷いじゃない。私があたなに会いに行く為に全身複雑骨折をしてまで全力で教室に行って差し上げたのに。私のどこに頭の悪い要素がありますの?」
「いやもう全部ダメですよ。今のどこをとってみても頭を心配する要素しかないですし。そうであってはいけないんですよ姫子さん」
「あと頭を診てもらうって言うのはそういうことじゃな……」
「知っていますわ」
というか僕が教えるまえに自分の状況完全に理解してるのどうして……と言う実君の独り言を気にせず、私の体をガチガチに固定したギプスやらなんやらを乱雑に取り外しそこら辺に放り投げる。結構簡単にハズレますのね、これ。
「いやっ!え、ちょ!どうやっ…!それよりも何してるんですか!?安静にしていないとダメですよ!?あなた頭から血をドバドバ出てたんですから!!」
私がベットから起き上がろうとするところを、彼が心配して無理やり寝かしつけようとしてくる。んもぅ!どさくさに紛れてどこ触ってるのよ実くんの馬鹿っ♡……にしても実くんの力って本当に強すぎず弱すぎず、平凡ね。流石校内一の変わり者ですわぁ!
「いえ、大丈夫よ?心配はご無用だわ。ほら?ね?この通り」
彼の制止を意図も容易くするりと抜け出し自分が全然大丈夫であることを身体をうこがして見せてみた。百聞は一見にしかず、さぁ、目に焼き付けなさい?この洗練された美しい動きを!!
「え、あ、……え」
「え…?」
私がもう全然なんともないと言う意味を込めて更に腕をブンブン、脚をブンブンとそこら辺の小学生以上に元気よく動かしてみせると彼は何故か私に対してドン引きした。にしても蔑む目線、いいですわぁ(恍惚)。
体を動かせるようになって、部屋を一瞥。時計が15時を回っていた。改めて私は実くんの顔をじっと見てから口を開いた。
「ねぇ、実くん。私は何日寝ていましたの? 」
「……たしか、2日です。今日は土曜日で、昨日の放課後にはあなたのクラスメイトがお見舞いに来ていましたよ」
そのまま彼は話しながらも落ち着きを取り戻したようで、花瓶の水を入れ替えたり、またお見舞いの際にクラスメイトが持ってきてくれたであろう物を指差す。彼は呆れ顔で鬼の写真や棺桶が病室の一角にゴロゴロとあるものを見る。
「でもなんで数日経ったってわかったんですか?」
「あぁ。それは唇よ」
「唇? それって、僕の?……あっ! 」
「ふふっ、思い出しましたのね? 」
そう、彼は岩永先生の指導により唇が赤く明太子のように腫れていたはず。それが今ではすっかりおさまっていていつも通りの”つまらない”顔立ちに戻っていてたからだ。
だが世間一般的に ”つまらない” と称されるあなたの顔立ちも私には魅力的に見えて、今目の前で私の瞳を覗くあなたを、自分だけの物にしたいと醜い独占欲が湧き上がる。変人を好きになる人だって、少数ではあるもののいるのですわ。
「あの一瞬の間にしっかりと見られていたんですね、僕の口……」
「はい♪ばっちりとこの目で。脳内フォルダに焼き付けましたわぁ」
「皆には ”あれ”がいいのがしれないけど、僕にはやっぱり理解できないです よ」
「ふふ、やはりあなたは《《変人》》ですわね♪」
普段は ”つまらない” と言い捨てられる彼でも、そこに前のように刺激が加わってしまうと、たちまち彼に隠されたポテンシャルが発揮されてしまう。そうなると私だけが知ってる彼の良さがみんなに知られてしまう! それは嫌だと思っていたが、どうやら杞憂だったようだ。
「でも、私はそんなあたなだから好きなんですわ」
「あ、またそんなさらっと告白を!も、もう!やめてくださいよ揶揄うのは……! 」
彼が照れくさそうに頬をポリポリと人差し指でかく。
もう何度伝えたか分からない私の告白は日に日に彼に効力を発揮している。ふふふ、順調ですわね。
「僕なんかを好きになってくれる姫子さんの方がよっぽど変人ですよ?」
「そうかもしれないですわね?ふふふ」
すると病室の引き戸が静かに開いた。開いた先から顔を覗かせたのは、病院には不釣り合いな程に素肌を露出させた看護師だった。ミニスカートから伸びる長い足は女子である私も魅了される程で、当然横にいるこの男も釘付けだ。オマケに看護師の制服を改造したのだろう、背中が裸体と見間違えるほどに開放的で男の目に毒だ。むぅ、さっきまで私にメロメロだった癖に!ほかの女に目を移して!
「あらあら!様子を見に来て見れば部屋から声がするものだから!やっぱりお目覚めになられたのですね〜」
「はい。おかげさまですっかりですわ」
ほらっ!と私はジャブで空を切る。あまりの速さにビュンビュンと音が鳴るキレの良さ。2日間寝込んでいたので心配でしたが、問題はないようです。
それともあなただからでしょうか?こんなにキレのいいジャブを打てるのは。ふふふっ、試しに1発いかが?雪に溶け込む綺麗な紅葉をあなたに刻み込んで見せますわよ?
「まぁ!これなら本日退院で問題ないですね!」
「え、いや、ええ!? 全身複雑骨折ですよね!? 確かにこんなに動けてるのは納得できませんが大丈夫なんですか!? 」
「はい、問題ないですよ。すぐにでも部屋を出れる準備をしてくださいね。受付の方で手続きを行いますので、お願いします」
看護師はそのままスタスタと部屋を出ていった。
実君はと言うと、信じられないといった様子で看護師の出ていったあともずっと停止してしまった。
「このくらいのこと、日常茶飯事ですわよ?」
「僕には信じられないです。ほんの数時間前まで寝たきりだった人とは思えないほどに動けることが」
「実君が心配性なだけですわよ?」
「さっ、いきましょう?このまま外で夕食をとりましょう?」
「時間はありますので、大丈夫ですが!その待って待って!外に出ようとしないで!まだ」
「ほらほら!急ぎますわ!時間は限られてますもの!」
「ちがっ!!話を聞いて!!姫子!話を!!」
廊下に出た後も実君は変わらず、むしろ先程まで以上に私を止めようとする。もううるさいですわね。普段は廊下や人目に付くところに出たら、つまらない性格に引っ張られて全く自分を出しませんのに……。 まさかこれまでの ”つまらない” 言動の数々は演技でしたの!?
普段からそれくらい ”普通” にしていれば周りから馬鹿にされることもないですのに。
「姫子さん!格好!格好が!病院のパジャマ姿のままだよ!!」
「え?」
私は立ち止まり、自分の姿を確認した。
……。
あらまぁ!これは、非常識なことを!恥ずかし恥ずかし……。
「姫子さんが恥じらう姿、初めて見たかも知れないです」
実くんは私の顔を覗き込んでは柔和な笑みを浮かべた
やっぱり実君は、変人のままでいてくださいな。
私は暖かくなったパジャマの袖をきゅっと握りしめた。
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