91.流れ星の正体
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
盆も正月も私は関係ないので年末年始もそのまま連投です。
翌朝。
俺達は揃って落ちてきた流れ星を見に来ていた。
山の頂上に落ちたという流れ星は直径8メートルほどの楕円形の黒い岩だった。
楕円形なのはきっと大気圏を突破する際の摩擦で磨り減った結果だろう。
表面を触ってみれば意外とつるつるして触り心地は悪くない。
ただこれ、成分は何だろうか。
「ミツキ。隕石って普通どんな成分か知ってる?」
「お兄さん。あたしがそんなこと知ってる訳ないでしょ」
「それもそうか」
試しに聞いてみたらバッサリした回答が帰って来た。
むしろここで「それはね!」なんて言い出したら何事かと驚いてしまう所だ。
それにしても、これどうしようか。
この不自然な状況からしてまず間違いなくただ石が落ちてきましたって訳じゃないだろう。
なにかしら重大な意味が隠されていると思うんだけど。
「流れ星……空から降ってくる岩……」
「ん?」
一緒に流れ星を見に来たルンルンの様子がおかしい。
何か考え込んでいるような、それでいて顔色があまり良くない。
「ルンルン。大丈夫か?」
「あのね、パパ。お母さんが昔教えてくれたの。
この世界には元々妖精しか住んでいなくて、人間も魔物も空から降って来た岩から生まれたんだって」
「岩から生まれた?
え、じゃあこれ。もしかして卵なのか」
改めて岩を見てみれば確かに形は卵っぽい。
ただ軽く叩いてみた感じ、物凄く硬そうだし、これを割って雛が孵るのは大変そうだ。
それと本当に卵だとしたら、いったい何の卵かという問題もある。
友好的な種族なら良いけど人間や魔物に次ぐ第3勢力になるようなら困りものだ。
それに気づいたミツキも深刻そうな顔で言った。
「お兄さん。もしこれが卵だとしたら普通の卵何個分になるんだろうね」
「え、そりゃまぁ。千や二千じゃきかないだろうな」
「だよね。うん。それでね。
ちょうどお隣に池があるじゃない?
そこの水を魔法で沸騰させて、この卵を投げ入れればギネスもびっくりな凄い巨大な茹で卵が出来ると思うのよ」
「あ、あぁ」
どうやらミツキは食べるつもりのようだ。
確かにそれもひとつの方針としては良いのか……。
「いやダメだろう」
「そうよダメよミツキ」
どうやらチチカも食べるのは反対の様子だ。
そりゃあもしかしたら危険かもしれないけど、それでも生まれても居ない雛を食べてしまおうって言うのは可哀そうな気がする。
「こんなに大きい卵。茹で卵じゃ中までちゃんと熱が通る頃には外側はガチガチよ。
ここは地面に鉄板を敷いてフライパン代わりにして、スクランブルエッグにしましょう。
かき混ぜる為の箸や木べらはトロル達に持ってもらえば良いわ!」
「ああ、確かにそうね!」
しまった。意外にもチチカも食べるの推進派だった。
グラグラっ
「ん?」
何かいま、流れ星改め卵が揺れ動いたような気がするぞ。
「なぁ。この卵動かなかったか?」
「え、まさか……」
「まさか私達が目を離した隙に逃げるつもりじゃないでしょうね!」
グピッ!
チチカの言葉にビクンと反応した気がする卵。
実際には動いてはいなかったんだけど、なんかそんな感じだ。
これはもしかしてこっちの声が聞こえているのかもしれない。
とするとこの卵の中身は黄身と白身じゃなくて孵化する雛鳥直前って感じなのかもしれない。
確か中国とかベトナムとかにはそういう料理があるって聞いたことがあるけど、正直見た目はちょっとアレだ。
教育上、子供に見せるのも良くない気がする。
「よし。食べるのは却下だ」
「ええ~~」
いやそんなに食べたかったのか?
食べるなら普通の卵で我慢しなさい。
「ヨサク。トロル達を呼んでこの卵を地上に降ろしてやってくれ。
ここだといつ何かの拍子で転がり落ちるかもしれないからな」
「分かりました」
「その後は周囲を柵か、いっそ小屋みたいにして外敵と雨風をしのげるようにして様子を見る事とする」
「あの、もし危険な生き物が生まれてきた場合はどうしますか?」
「その時は仕方ないから全力で殲滅しよう」
生まれたての子供に罪は無いとは言え、例えば蛇の子供を蛙が育てることは出来ないように、こちらの天敵となる存在なのであれば力を付ける前に対処するのが一番だ。
今出来るのはそうならないことを祈るだけだ。
なにせ地上に落ちた流れ星はこれ1つではない。
他の流れ星も同じようなものだとすれば、世界各地で新たな生命体が誕生することになる。
それが全部敵だとしたら大災厄と同じかそれ以上の混乱を招くことになるだろう。
まぁそれでも生まれたての赤ん坊や雛鳥がすぐに脅威になるとは考えづらいのがせめてもの救いか。
と、この時の俺は考えていたんだけど、それが間違いだったと気付いたのはすぐ後の事だった。




