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89.(閑話)運営?それとも……

満天の星空の元、数人の男女がのんびりとお茶会を開いていた。


「さて、あの世界も新たな局面を迎える」

「ああ。あれをどう使うのか。見ものという所だ」

「もっとも、使うのか使われるのかは彼ら次第だがね」


そう話す彼らは揃って空に浮かぶ青い星を眺めていた。

その星は現在、多数の隕石によってリングが形成されており、次々と地上に降り注いでいる最中だった。

それが一体何を意味しているのか、理解していない者はここには居ない。


「これを機会に新規参入者も増やすのだろう?」

「まあな。ただそうは言っても最近はなかなか良い魂が見つからなくて困る」

「ふむ。エインヘリヤルだったか。まったく面倒な事をするものだ。

適当に才能のある者に声を掛けて行けば早かろうに」

「わたしのポリシーだからな。そこは変えられん」

「確かにそれで大成した例も少なくは無いので悪くは無いのだろうけどな」

「数で攻めるか質で攻めるか、と言ったところか」


テーブルの上にある皿からクッキーを取ろうとした手が空を切る。

どうやらいつの間にか食べきっていたようだ。

と思ったのもつかの間、すぐにお替りが山となって用意された。


「だが、幾ら良い魂が見つかったからと言って、事故を装って殺すのはどうかと思うのだよ」


その言葉にピクリと伸ばしていた手を止める男性。


「バレていたか」

「むしろ隠していたつもりだったのかと、こっちが驚くよ」

「まあわたしもバレているのは分かっていたけどね」


悪びれもせずにクッキーをボリボリと食べる男性。


「だけどそっちも随分と詐欺まがいの勧誘をしているようじゃないか」

「詐欺とは失礼な。嘘は言っておらんよ。キチンと、

『超人のごとき力を得て戦場を駆け抜ける事が出来る。

リアルと全く遜色のない日々をあなたに提供することをお約束します』

言った通りだ」

「一般の人間より少しでも強ければ『超人』だし、リアルと変わらないっていうのは死ぬ痛みも苦しみもあって、セーブもロードもないって事でしょう」

「死んでも復活できる新設設計じゃないか」

「その度に魂は傷ついて行くんだけどね」

「なぁに。ただほど高いものはないのさ」


どちらも本気とは思えない適当な会話を続けている。

そこへ更に女性が話に入って来た。


「ところで、観客たちのことはどうしますか?」

「ああ、そっちはもうしばらくは元気にやってくれるだろう。

その為の新しい一手だ。

見た目美味しそうな餌をぶら下げておけば勝手に盛り上がるさ」

「彼らからの収益があってこそのこの優雅な時間だからね。

生かさず殺さず。長期的に楽しんでもらえるのが一番。

それと更なる課金で上位観察者になれるようにもするつもりさ。

丁度ポストも空いたし」


貴方の鶴の一声で空けたのでしょうが。

そう言いたくなったけど、言っても無駄と首を振るだけに留めた。

それに。


(いくら私達であっても、全てが思い通りに行く訳ではありませんからね)


あの星はかなり以前から発見され、特に利用価値の無いものとして放置されて来たものだ。

それを自分達が手に入れて今の形へと創り上げてきた。

元々そこに生存していた原住民族を迫害した形にはなったが、別に自分たちは正義の味方でも聖人君子でもないので心が痛んだりはしないし、そのお陰で魔獣や災厄といったシステムが上手く機能してくれているので結果だけを見たら良かったと言って良いだろう。

もっとも、原住民族からしたらふざけるなってところなのだろうけど。

それはともかく。

自分達もあの星を自由にコントロール出来る訳ではない。

出来ることは外から領主となる魂を送り込んだり、地殻変動を起こすために隕石を落下させたり、人間や魔物といった元々あの星には無かった種族を誕生させたり、以前送り込んだ核を元に現地では災厄と呼んでいるエネルギーの活性化を引き起こすのが精々だ。

あと出来る事と言ったら、魂を送り込む際に一種の暗示に近いものを仕込むことで最初の数か月程度はまるでゲーム感覚で過ごせるようにするとかその程度だ。

送り込んだ魂だって安定してしまえば早々動かせない。例外は肉体が死を迎えた時くらいだ。

故に今地上で活発に改革を行っている者たちに対しては自分たちも観察するくらいしかできない。

一応もしもの場合は乗り込むことは出来なくはないが、それは本当に最後の手段だ。


「あんまり手を加えすぎるとクレームに繋がりますから気を付けてくださいね」

「分かっているよ。

観客っていうのは運営がサボっていても頑張り過ぎていても怒るものだからね。

適当が一番いいのさ」

「台本通りというのがつまらないという意見には賛成だがな」

「そうですね」


少なくとも今なお自分たちの思惑とは少しずつ違う未来を描きつつある星を3人は静かに見守るのだった。



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