88.災厄終わって一息
翌朝正気を取り戻したミツキを連れて王都に戻れば、みんなから生温かい視線で迎えられた。
ミツキはミツキで暴走してしまったのが恥ずかしいのか俯きがちで、それが更にみんなの確信を強めていた。
「はぁ。良いかお前達、良く聞け」
「いえいえ。私達はちゃんと分ってますよ。陛下は相手の気持ちを無視した行いはしないって事は」
「それはまぁそうなんだが」
「……昨夜はお楽しみでしたね?」
「だからなぁ。
俺は病気とかで弱ってるところを襲ったりしない。
ちゃんと元気な時に正面から正々堂々とだ」
「あぁ、つまり今夜……」
なおも続けるヨサクを殴って止める。
まったくみんな悪ふざけが好きなんだから。
「それより各地の被害状況は?」
「はっ。サカガミ領については怪獣との戦闘で死者32名、重軽傷者が500名ほどです。
また王都の1/3が倒壊した他、第1第2の砦の耐久値が半減しており修復が必要です。
他、幾つかの村や集落が厄獣の通り道となり崩壊していますが、住民は王都に避難しています」
「そうか」
流石に無傷で完全勝利とはいかなかったか。
「亡くなった者の家族は国の皆でしっかり面倒を見てやってくれ」
「心得ております」
この世界では死体は残らないから丁重に弔ってとはならない。
墓を作ったりもしないので、死んだら元から居なかったかのように何も残らないのが普通だ。
唯一残るのが彼ら彼女らの伴侶や子供なので、孤児院であったり集団住居という形で保護していく。
「あとプロステイン領とルクセン領ですが、今回の誘導作戦に引っ掛からなかった一部の厄獣が侵入し戦闘になっています。
幸いそちらの数も質も大した事無かったようで、重大な被害もなく防衛に成功したとのことです」
「それは良かった」
2領地の戦力も先の模擬戦以来、だいぶ向上していたからな。
中盤の大型が大挙したりボス級が居たら危険だったけど、無事に何とかなって良かった。
「大災厄はこれで終わりだと思うか?」
「本命は終わったと思いますが、他の地域で倒しきれなかった厄獣が流れてくる可能性は十分にあります」
「つまりもうしばらくは警戒を続けないといけないってことか」
面倒ではあるが仕方ないな。
あとはここ以外の国の状況を確認するべきか。
「交流のある各国に連絡を。
大丈夫だとは思うがもし支援が必要な状況ならイメーコ達に後を任せて救援に向かおう」
「そうですね!」
そうして2日もすれば各国の状況も手に入って来た。
シルクさんの天上王国や不死の王国は大した被害もなく無事だそうだ。
まぁ属国の幾つかは潰れた(潰した?)みたいだけど。
他、龍王国も無事。こちらは龍種を始めとした個が強力な国だから数で押し寄せてきた第1波が一番面倒だったんだとか。
もしかしたらゴ〇ラVSキング〇ドラみたいな怪獣大決戦が起きていたのかもしれない。
それはそれでちょっと見てみたかったな。
「あと。未確認情報ですが魔王国、勇者国、神聖教国ではかなりの被害が出たという噂もあります」
「あーうん。そうだろうなぁ」
その3国は最近までドンパチ戦争をしてたっていうし。
大災厄の源となる穢れが戦争で死んでいった者たちの負のエネルギーなんだと考えれば、その原因となった3国を目の敵にする。というより純粋に穢れが多かったんだろうな。
もしかしたらボス級が大挙して襲撃してきた、なんてこともあり得る。
そうなれば戦い慣れてる大国でも大変だろう。
「これで大人しくなって穢れを量産しないようになれば良いだろう。
それらの国が弱ったからって攻め込んだりする気も無いし、着実に国力の向上に努めて行こう」
「分かりました。あ、その事で報告がありました」
「ん?」
「その、国内の魔獣のランクが災厄前と比べて2ランクほど上がっています。
どうやら元々厄獣だったものたちが理性を取り戻して魔獣になったものかと思われます」
穢れの所為で理性を失った魔獣が厄獣だったんだから、穢れを取り除けば魔獣に戻るのは道理か。
「生態系に影響が出てたりするか?もしくはこちらを襲って来たりは?」
「あ、いえ。それは今のところ大丈夫なようです」
「なら新たな隣人として仲良くしていこう」
「はい。ただその……ルンルンちゃんがゼフを連れてその魔獣たちに会いに行っているようです」
「ルンルンが?」
そう言えばここのところ日中は姿を見ないと思っていたらそんな事してたのか。
「ま、ルンルンは妖精だし魔獣に襲われる事も無いだろう。
万一危険があってもゼフが一緒なら安心だ」
「はい。そこは心配していないのですが……」
言葉を濁すヨサク。
何か問題があっただろうか。
ルンルンは遊び盛りの女の子って感じだし、危険がないなら自由にさせてあげたいのだけど。
と考えてたところで丁度そのルンルンが帰って来たみたいだ。
「パパ~。ただいま~~」
「ああ、お帰り」
「見て見て。お友達がたくさん出来たの!」
「お友達って」
ルンルンの後ろには全長5メートルを超える魔獣たちが大挙していた。
なるほど、これは問題だな。
「差し当たって。
お友達を歓迎するためのご飯を大量に作らないといけなさそうだな」
「そう、ですね」
頭を掻く俺とヨサク。
仕方ないだろう。娘がお友達を連れてきたんだ。
悪い子じゃなければ笑顔で招くのが親の役目だ。
ただちょっと身体が大きいってだけなんだから。
そうして予定外の仲間が増えたり、砦の再建が終わった頃。
空から大量の流れ星が降って来たのだった。




