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83.大きいお友達の到着です。

最初の厄獣達は木々の間を縫うように進行してきた。

しかし、今度の厄獣達は違う。

まるで道何て物は俺達の後ろに出来るものだと言うように木々をへし折り、根ごと地面を吹き飛ばして突き進んでくる。

さながらブルドーザーとダンプカーだ。

まぁ、実際に身体のサイズも5メートルを超える個体ばかりなので似たようなものか。

そんな彼らを導くのはまたしても魔獣隊のみんなだ。

ただし今度は植物系ではなく動物系だ。

なにせ植物系では気付かれずに吹き飛ばされてしまう危険性がある。

なんとか直前で気付けても体格が大きい分、簡単には進路変更も出来ないだろうからな。


「ワオーーン」

「わんわんわんわんっ」

「キシャーーッ」


大声で鳴くことで離れた位置からの誘導に徹底してもらう。

やっぱうちの魔獣達とは体格が違い過ぎてぶつかったらこちらが撥ね飛ばされるのは間違いないからな。

そうして進路を誘導しつつ、その先に餌も置いておく。

餌は王都だ。

砦でも良かったんだけど、あっちは第一陣の対応でかなり疲弊してるからな。

王都は現在、魔法障壁を調整して東北側の一帯を防衛範囲から外しておいた。

なのでこの厄獣達から見れば格好の餌場という訳だ。


「GYAOOOッ!!」


早くも先頭が王都にたどり着いたか。

厄獣達は開けておいた北門から入って街を良い感じに破壊している。

餌のついでに豚の丸焼きなんかも置いてみたけど、ちゃんと食い付いてるな。

障壁はしっかり機能してるから、街に残ってるみんなに危険はなし。よしよし。


「ヨサク。ぼちぼち次のステップに進もう」

「はっ。承知致しました!」


ヨサク達は東門の外から街の中で足を止めていた厄獣達に呼び掛ければ、彼らは活きの良い獲物だとヨサク達に狙いをつけた。

それを見て逃げるヨサク達の行き先は、東の広場に急ぎ造ってもらった山だ。

山の側面には螺旋状に道を作ってあるので、ヨサク達に続いて厄獣達も道に沿って山を駆け上がっていく。


「さあ、チチカ。上手くやってくれよ」

「はいはい。まったく無茶言ってくれるわよね」

「それもこれもチチカを信頼しての事だから」

「ふんっ。よく言うわ」


ちなみにチチカが何処に居るかというと山の真下。

そこに作った地下室みたいなところで待機してもらっていた。


「発動した後はどうなるか保障しないんだからね!」


そう文句を言いながらチチカが魔法陣を起動すれば、砦に設置していたのと同種の、しかし桁違いの出力で魔法が発動した。

効果範囲は山の上のみ。範囲を狭めることで更に効果を上げている。


「おお、まるで温泉の湯煙だな。若干黒いけど」


魔法を受けて山を登っている厄獣達から穢れが蒸気のように吐き出されていく。

気が付けば山全体が霧に包まれている。

これ、最初の小柄な厄獣ならこれだけで穢れを祓えただろうな。

でもやっぱりサイズが大きい分、抱えている穢れの量も多い。

厄獣達は変わらずヨサク達を追い掛け続けている。

そして遂に山頂。

ヨサク達に逃げ場なし……なんて事はなくて、そこにはぽっかり穴が開いている。


「よっ、お先!」


我先にと穴へ飛び込んでいくヨサク達。

穴の先は山の中腹辺りから外へと繋がり、その先にある湖へと続いている。

山登りに水泳と変則的なバイアスロンを体験出来るのがこのコースの醍醐味だ。

まぁ、今回はのんびり楽しむ余裕はないだろうけど。


厄獣達もヨサク達を追って次々に穴に飛び込んでいく。

すると一気に吹き上がる穢れ。

実は中央の方が魔法の威力が高い。

これはもう火に油を注いだような、いや火山噴火と言った方が近いか。勿論噴石は飛ばず、穢れだけが噴煙のように吐き出されてる訳だけど。

穢れを吹き飛ばされた厄獣達はヨサク達と同じように湖へと落ちていく。

彼らにはそこで汗と一緒に残ってる穢れを洗い流してもらう計画だ。

イメージで言えば、サウナに入った後に水風呂に飛び込んだ感じかな。

そうして落ち着いた厄獣……もうただの魔獣かな?は先に上がっていたヨサク達の誘導で移動していく。

あそこまで行けばもう危険はないだろうな。

残る問題はといえば、霧どころか雲。積乱雲のように積みあがった穢れの塊だ。

多分これを放置しておくと第2の災厄になるのだろう。

これを消化するのは俺の仕事だ。


「さあ来い」


俺は積乱雲の中に飛び込みつつ白と黒の翼を広げた。

そうすると穢れはまるで掃除機のように黒い翼に吸い込まれていく。


「うっ、ぐぅぅ」


これは……きついな。

先日の不死の王のが如何に温情を掛けられていたのかが分かる。

翼を捥がれるどころか、背中から腹に突き刺される。

更に全身が神経になって激痛が全細胞を突き抜け、視界には大切な仲間たちがズタズタに引き裂かれゾンビになって俺に呪詛を吐く姿が映し出される。

厄獣っていうのはこんな痛みや悲しみ、嘆きを強引に押し込まれていたのか。

それは暴走するのも仕方ないな。

そしてまだまだ穢れは残っている。


(まずいな。これは吸いきれないかもしれない)


考えれば当然だ。

なにせここにある穢れは全体から見れば一部とはいえ、世界中の穢れを何年も溜め込んだもので、あれだけの魔獣を厄獣に変え暴走させていたんだ。

俺一人で回収するのはちょっとどころじゃなく無理があった。

痛みと苦しみで霞む視界の中、ふと声が聞こえてきた。


「まったく陛下は一人で抱え込み過ぎなのです」

「そうだべ。おら達のことを忘れてもらっては困るだ」

「水臭いよ、お兄さん」

「仕方ないから貸しにしといてあげるわ」

「「陛下!」」


それまで停滞していた穢れがさあっと幾つもの小川となって地上に流れていく。

その先に居るのはミツキ達国のみんなだ。

お陰で俺に掛かる負荷が一気に減った。

よし、これなら。


「雲を吹き飛ばせつむじ風。大地を照らし輝け太陽。

『サンシャイン』!」


俺の放った魔法が空を覆っていた雲を吹き飛ばせば太陽が顔を出し、更に光魔法で疑似太陽を創り出す。

ルンルンの話では穢れは太陽光で浄化できるって話だ。

最初の積乱雲は無理だったと思うけど今の霧くらいの濃度なら行けそうな気がする。


「……ここで『やったか!』とかいうとフラグなんだろうけど」


幸いにして穢れは朝霧のように消えてくれた。

それを見て歓声をあげるみんな。

あ、うん。困ったな。

喜んでるところ悪いんだけど、まだ終わりじゃ無いみたいなんだよ。



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