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80.パパたちの考えてることが全然分からないの!(ルンルン視点)

目が覚めるとそこは暖かい日差しがきらめく場所でした。

外だけど外じゃなくて、家の中なのに外みたいな不思議な部屋。

そしてわたしはもこもこに囲まれていました。


「ここはどこなの?」

「バウッ?」


わたしの呟きに答えてくれたのは隣に座っていた狼の魔獣。

彼も白い毛並みがとてもきれい。

あとわたしの周りのもこもこも色んな魔獣たちでした。

他にもいろいろな魔獣がここには居ます。

まるで魔獣の楽園みたいなところです。

まだ故郷以外にもこんなところが残ってたんですね。


でもわたしはどうやってここに来たんだろう。

自分では動けなかったから誰かが連れて来てくれたのは間違いありません。

改めてここ最近の眠っていた時の事を呼び起こすと、思い出される暖かい記憶。

誰かがわたしの頭を撫でてくれて、とっても美味しい魔力を送り込んでくれました。

そして更に体の中に溜まっていた穢れも優しく丁寧に吸い出してくれました。

瞼の向こうにぼんやり浮かぶ姿は、多分人間の男性です。

頭を撫でられると安心して眠たくなるけど、もう寝てたんですよね。

きっとこうして目覚めることが出来たのはその人のお陰だから、あったらキチンとお礼を言いましょう。

わたし知ってます。

ご飯をくれる男性の事をパパって呼ぶんですよね。

お母さんのお話でありました。

そうしてベッドの上でのんびり過ごしていたらさっきの白い狼さんが人間たちを連れてきました。

その中のひとりは雰囲気でパパだって分かりました。


「パパ~♪」

「ぱ、パパ!?」


ほらやっぱり。

わたしが呼んだら飛び跳ねるくらい喜んでくれました。

ほかの皆もお祭り騒ぎです。

そして想像していた通りパパたちは凄く暖かくて優しい人達でした。

やっぱり最初に会った人たちが特別悪い人達だったんですね。

ただパパたちとお話していてわたしが随分長い事眠りに就いていた事に気が付きました。

更にパパから出てきた言葉に寝ぼけていた頭が覚めました。

そう、大災厄です!!

わたしは大災厄を、その元凶である穢れを祓ってご先祖の子孫にあたる魔獣のみんなを救うために故郷を飛び出してきたんです。

それをパパに話したら、パパはうんうん考えたあとパッと顔を上げました。

どうやら何か閃いたみたいです。


それからは街の人たちが凄い勢いで走り回っています。

わたしも何かお手伝いをしたいってパパに伝えたら、


「それなら穢れについて知っていることを教えて欲しい」


って言ってくれました。

それならわたしの得意分野です。

パパはわたしの話を聞いた後、実際に穢れを浄化出来るか試してみたり、不思議な門を通ってどこかに行ったりと大変そうです。

空いた時間で街の人たちがやってることを見学に行ったらとんでもないことが起きていました。


「パパ、大変なの!」

「ん?どうした?」

「門が外されちゃってるの。あれじゃあ狂暴化した魔獣たちを止められないの!」

「ああ、なんだ」


わたしの話を聞いてもパパは落ち着いています。

なんで?このままだと街が大変なことになっちゃうんだよ!?


「あれはわざと開けてるんだ」

「ええぇ!?」


パパの言葉の意味が分かりません。

狂暴化した魔獣たちはもう、明後日にはこの国に辿り着くだろうって黒い服を着たおじさんも言ってました。

それなのに街の北と東の門は撤去しちゃうし、街の東側にあった広場には山っぽい変なのが作られてるし、さらにその東には巨大な穴まで掘ってるんです。

わたしにはサッパリ意味が分かりません。


そうして、遂にその時が来ました。

大量の土煙を上げながら森の木々をなぎ倒して突撃してくる魔獣たち。

その誰も彼もが穢れに染まり真っ黒な瘴気を纏っています。

恐らくまともな理性はないでしょう。

本能だけで敵か敵でないかの区別をつけて、敵である人間の臭いを元にこの街へと向かって来ているのです。

更には本来の姿より2まわり以上巨大化して強くなっているのが分かります。

今から逃げてもきっと間に合いません。


「ワオーンッ」

「「ワオーンッ」」


その時、魔獣たちがやってくる方角から多数の狼の遠吠えが聞こえてきました。

そういえばいつの間にか街から魔獣の姿が消えています。

避難したのかなって一瞬思ったけど、さっきの鳴き声がそうだったとすると、勇敢にも狂暴化した魔獣たちに立ち向かっていったのでしょうか。

それとパパたちを含む男性の姿も見当たりません。

防壁の上ももぬけの殻ですし、街の防衛は大丈夫なのでしょうか。

いくら街を覆う魔法障壁があるからと言って、これでは流石に……って街の外に魔法障壁が展開されてない!?


「あ、ルンルンちゃ~ん。そんなところに居たのね」

「ミツキお姉ちゃん、大変なの。魔法障壁が起動していないの」

「それなら大丈夫よ。範囲を狭めているだけだから」


言われてみれば確かに王城を含む街の2/3くらいを覆うように障壁が張られていました。

でも解放された門の付近に障壁は届いていないので、そちら側は魔獣が入り放題です。


「それにパパたちの姿がないの。いったい何をしているの?」

「お兄さんは掃除機で、チチカは扇風機でほかの皆は鬼ごっこかな」

「え?え?」

「それよりも、念のためあたし達はお城に避難していようね」


そうしてミツキお姉ちゃんに手を引かれてわたしはお城へと避難しました。

その間にも地響きを鳴らしながら大量の魔獣が街に押し寄せてきました。


「上の階からなら皆の様子が見えるよ」


なぜか呑気なミツキお姉ちゃんの声に誘われて上の階のバルコニーに行ってみれば、突撃してきた魔獣たちによって破壊されていく街並みと、その前を走る男性たちの姿が見えました。

彼らは一切戦う様子もなく、ただひたすら逃げ続けています。

大丈夫なのでしょうか。

戦う術の無いわたしはここで彼らが魔獣に食い殺されるのをただ見ているしか出来ないのでしょうか。

そしてなぜミツキお姉ちゃんはこんなにも落ち着いているのでしょう。

わたしには分からないことだらけです。



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