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76.張り切る王国

不死の王国との模擬戦から半月。

うちの国は相も変わらず平和に、と言いたいところなんだけど、色々と変わってきている。

その最たる変化は2日に1度行われるようになった模擬戦だ。

ヨサク隊、マスオ隊、ミツキ隊、イメーコ隊、隠密隊の他、魔獣隊、魔物隊、プロステイン領軍、ルクセン領軍。

それぞれの隊ごとに分かれて行う事もあれば2つ3つが合体して連携を取りながら行う事もある。

みんな今度不死の王国と戦うことになったら返り討ちだと息巻いているのだ。

ただ頑張るのは良いけど、釘を刺すべきところは刺さないとな。


「良いか。勝っても負けても恨みっこなしだ。

負けた側は勝った側に称賛を送りつつ、自分たちの敗因を考えて対策を打つこと。

勝った側は勝利に驕ることなく、今回の作戦で良かったことと改善点を考え、次回に活かすこと」

「「はい!」」

「あと、模擬戦だから死ぬことは無いと、自滅覚悟の戦い方は禁止だ。

そんなのを実戦で使ったら死体の山を築くことになる。

くれぐれも実戦と同じ気持ちで戦いに臨むように!」

「「分かりました!!」」


しっかりと頷くみんなを見送る。

ちなみに各部隊の強さで言うと、ヨサク隊とマスオ隊が他よりも頭1つ出ている感じだ。

ミツキ隊は攻撃が得意だけど防衛が苦手。逆にイメーコ隊は防衛が得意だけど攻めるのは苦手だ。

隠密隊や魔獣隊なんかは森の中や夜間などでの戦いが得意だ。

プロステイン領軍、ルクセン領軍は個の戦力でいうとヨサク隊の下位互換だが人数が多いので物量で圧し潰したい時は有効だろう。

そして防衛面の強化ということでチチカが主導となって王都と砦の改造が行われた。


「システムオールグリーン。スタンバイOKです」

「よし。では魔法障壁起動」

「魔法障壁起動します」


ブオンッという短い振動音の後、王都全体が透明な膜に包まれた。

途端に挙がる歓声。

これさえあれば上空からの侵入も防げるし遠距離からの魔法攻撃だって防げる。


「こらーーっ。喜ぶのはまだ早いわよ!!」


大きな声で叫ぶのは王都の外で仁王立ちするチチカだ。

彼女には早速耐久テストを行ってもらうことになっている。

障壁が出来たとは言え、出来ればドラゴンのブレス攻撃にだって耐えて欲しいからな。

攻撃系魔法が得意な彼女の魔法ならうってつけだろう。


「じゃあ行くわよ。

……こんのぉ、吹き飛べ~~っ」


チチカから放たれたのは先日の模擬戦でドラゴンブレスを迎撃したのより更に強力になった魔法だった。

巨大な砲弾となったそれは魔法障壁にぶつかると大爆発。

辺りは光と煙に包まれた。


「やったかしら」


楽しそうに呟くチチカ。でもやっちゃダメだから。

煙が晴れてみればそこには無事な姿の魔法障壁があった。


「ちっ」


舌打ちするチチカだけど、だから耐えられないと困るんだって。

でもこれで無事に弱めのブレス攻撃くらいなら耐えられることが確認できた。

ちなみにチチカの一撃すら耐えてみせたこの障壁をどうやって破壊すれば良いかと言えば、一番手っ取り早いのが物量作戦だ。

ひたすら魔法を撃ち続けて過負荷にしてやればいい。


「という訳で、チチカ魔法部隊(あんたたち)。やるわよ!」

「「はいっ」」


いつの間にかチチカの後ろに集まった200人程の魔導服に身を包んだ人が居た。

彼ら彼女らはチチカの魔法授業で特に攻撃魔法が優秀だと評価された人たちだ。

それ以外の支援魔法などが得意な人達は各部隊に編入してもらっている。


「こんな機会はあまりないからね。

魔力尽きるまで撃ちまくりなさい」

「「はいっ」」


それから放たれる各種属性の魔法の雨あられ。

それを受けて何とか耐え続ける障壁だったけど、流石にそろそろマズい。

過負荷で壊れたら直すの大変なんだから。


「チチカ、ちょっ……」

「あはははっ。もっとよ!どんどんやりなさい!」


だめだ。ハイになってこっちの声が聞こえてないな。


「よし。ラストは頂くわよ」


そう言って巨大な槍を生み出すチチカ。

多分最初の魔法の派生かな。形状から言って爆発力よりも貫通力を強化した感じか。


「つぅらぬけぇ~~~」

ブォンッ……バキッ!


チチカの放った魔法の槍は遂に魔法障壁を破壊した。

そしてそのまま王都の外壁に突っ込んでいく。

と、そこへ1つの影が割り込んだ。


「ふんっ」

ズババババッ

「きゃあっ」


その影、ヨサクが剣を振りぬき槍を両断していた。

魔力によって強化されたその一撃は槍のエネルギーを消し飛ばすだけに留まらず、その向こうに居たチチカ達にまで届く。

咄嗟に防御魔法で防いだチチカも流石と言うべきか。


「こらぁ。危ないでしょ!」

「すまんな。だがこれくらい出来ないとあの死神には勝てそうにないのでな」


キリっと答えるヨサクは実に格好いい。

ただそのすぐ後に耳さえ引っ張られてなければ。


「ほら、あんた。今日の午前中は畑仕事でしょ?

こんなところでサボってないでさっさと行くわよ」

「いててっ。ちょっ、行く。行きます。だから耳を引っ張らないでくれ~」


うーん、いつの間にかヨサクもすっかり嫁さんの尻に敷かれるようになってしまった。

あれでヨサクも幸せそうだから良い事なんだろうけど。

そして俺は俺でこっそりと逃げ出そうとするチチカの首根っこを拾い上げた。


「ちょ、はなして~」

「チチカはこの後、魔法障壁のメンテナンスな」

「ていうか、最近私の扱いが酷い気がするわ。

特にこの捕まえ方とか、待遇の改善を要求する~」

「ふむ。つまり初めて会った時みたいに胸を鷲掴みにしてほしいということか」

「ばっ。このセクハラ親父!昼間っから何を言ってるのよ」

「じゃあ夜なら言って良いんだな」

「そう言う事じゃなくて」

「はいはい、いいから行くぞ」


魔法隊のみんなに見送られながら制御室を目指す俺達。

だけどそれは途中でやってきたミークによって遮られた。


「あ、陛下こんなところに居たにゃ」

「ん?俺を探してたのか?」

「はいにゃ。お届け物を預かってきたにゃ」


そう言って差し出してきたのは棺桶。

俺そんなの注文した覚えないんだけど。



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