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72.戻ってきた笑顔

目が覚めると俺はベッドの上だった。

窓から差し込む日差しから考えて明け方だろうか。

ふと横を見ればミツキがベッドに上半身を預けた形で眠っていた。

多分夜通しそばに居てくれたのだろう。

その頭をそっと撫でてみるとサラサラとした感触が返ってくる。


「ん、んぅ」

「おっと、起こしてしまったか」

「あ、おはよう、お兄さん」

「うん、おはよう」


寝ぼけた顔でふわりと挨拶をしたミツキだったけど、次の瞬間がばっと跳ね起きると俺に抱き着いてきた。


「良かった。もう目を覚まさないんじゃないかと心配したんだから」

「えっと、うん。ごめん」


状況はよく分からないが、とにかく心配を掛けてしまったようだ。

しばらくの間、ミツキの頭を撫でながら落ち着くのを待った。

そして俺が起きたのを察知したようで、バタバタと階段を駆け上がる音と共に、チチカを始めヨサクやマスオ達が部屋に入って来た。


「陛下、お目覚めになられましたか!」

「ああ。見ての通りだ。

しかしこの様子だと随分長い事寝ていたようだな」

「はい。不死の王国との戦いから既に3日が経過しております」


そうか。それならこのミツキの心配も仕方ないな。

ただ俺の事よりもヨサク達が元気なことが気になる。結局あの後どうなったのか。


「詳しい話は後で聞くとして、まずはみんな無事なのか?」

「はい。私達を始め、戦争に参加したものは全員無事です」

「そうか。それは良かった」


どうやら不死の王は約束を守ってくれていたようだ。

皆が無事なら後は慌てることは無いな。

あとはゆっくり食事でも摂りながら聞こう。

流石に3日も寝ていたせいでお腹が空いた。

俺達は食堂に場所を移して続きを聞いていった。


「まず陛下は何処まで覚えていらっしゃいますか?」

「えっと、不死の王と対決して吹き飛ばされて魔法陣に捕らわれた所までかな。

というか、その時ってヨサク達は殺られた後じゃないか?」

「はい。それなのですが、実は私達は全員倒された後は身動きが出来ないだけで意識ははっきりしておりました。

また視界も何故か戦場を俯瞰して見えるようになってました」


そうだったのか。

つまり死んだフリならぬ殺したフリだったのか。


「不死の王のスキルはとんでもないな」

「あ、いえ。どうやらこれは【もぎせんもーど】という神々の力を使ったそうです。

天上国の女王もそれに気付いてアッサリ手を引いたと言ってました」


模擬戦モード、ね。

全く便利なものだ。

というか、久しぶりに神様の話が出てきたな。

もう随分と音沙汰無かったからすっかり忘れていた。


「じゃあ試練だなんだって言うのも全部はったりか」

「いえ、実はそうでも無かったようで。

最終戦の時に我々の手で陛下を殺していた場合は例外だと言っていました。

もしそんなことをしたら『約束通りお前達を皆殺しにして我が国の死兵としてやった』と笑っていました」


そういや不死の国に迎え入れるって言ってたもんな。

その場合は1度殺してからになるか。

多分それこそが今回の戦争の唯一最大の死亡ルートだったってことだ。


「ふう。ならこれで全部元通りか」

「あ、いえ。それが開戦前に出ていった者達が帰ってくる気配がありません。

それについては不死の王ならびに天上国の女王が話があると言っていました」

「分かった。なら後の詳しい話は不死の王達から直接聞くとしよう。

改めてみんなが無事で良かった。

頼りない王だがこれからもよろしく頼む」


食事を終えて外に出ると国民全員が広場に集まっていた。


「陛下だ。陛下が出てきたぞ」

「リュウジュ王様~!」

「ワオーーンッ」


人間も魔物も魔獣も関係なく、みんなが肩を並べている。

良かった。

模擬戦だったとは言え臨死体験をしたんだ。

トラウマを抱えてしまった人も居たんじゃないかと思ったけど、この笑顔を見る限り心配なさそうだ。

みんな俺が思ってるよりずっと強い。


「みんな、よくあの厳しい戦いを乗り越えてくれた。

我が国はより一層団結し反映していくことは間違いないだろう。

全てみんなのたゆまぬ努力と献身のお陰だ。

俺はみんなを誇りに思う。

これからも共にこの国を良くしていこう」

「「はいっ!!」」


力強く頷くみんなを見渡した俺は、もう一言付け加えた。


「それといいか。次は勝つぞ!」

「「お、おお!!」」


無事で良かったねで終わらせてなんてやらない。

大変だとは思うが、今後はあれ以上に厳しい戦いだって待ち受けているかもしれない。

だから俺達はまだまだ立ち止まる訳にはいかないんだ。


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