70.決死の突撃戦
俺達の目の前に、遂に不死の王国の最強の軍団が姿を現した。
まず一番に目に付くのが全長50メートルは優にあるだろうドラゴンの骸骨だ。
白骨の顔の目の部分には魔石なのか巨大な石が煌々と輝いている。
そのボーンドラゴンの隣には不死の王も立っていた。
「本当は出てくるつもりは無かったんだがな。
最強の軍団を出すと言ったからには私自身も出ない訳には行かぬだろう」
「それはどうも。これは本気を出させることに成功したと喜ぶところかな」
そして彼らを囲むように隊列を組むのは骸骨戦士たち。
それはまるで初戦と同じような構成だったが、実際に対面すると全く別物であることが分かった。
「どうやらただの骸骨兵って訳じゃなさそうだな」
「ああ。彼らは骸骨兵の最高形だ。
発展途上の領主を相手なら1対1で戦えるだろう。
先の戦いで言えば、ヨサクやマスオを相手に5体も居れば勝てるだろう」
つまりヨサクとマスオはそんじょそこらの領主の5倍は強いって褒めてくれたらしい。
ただそんな骸骨兵が1万体以上だ。
こちらは戦力となる国民が7000程度だ。
残りは子供だったり新人だったりで戦闘に参加したら逆に足を引っ張りかねない。
「前に出れない者たちは応援を頼む」
「応援、ですか?そんなものが役に立つのでしょうか」
「もちろんだ。強大な敵に立ち向かう時に、自分たちの後ろに支えてくれる仲間がいると感じられることは俺達の支えになる。頼んだぞ」
ただそうは言ったものの、あれと正面衝突は厳しい。
でも小細工は通じないだろうなぁ。
さてどう戦うべきか。
と考えてたところで敵が動き出した。
まず動いたのはボーンドラゴン。
ぐわっと口を開けたかと思うとその口の中が眩く光り出す。
まさかブレス攻撃か。
それを見たチチカが大声をあげながら走り出した。
「防壁魔法が使えるものは正面外壁の上に集まりなさい!」
「「は、はい!」」
チチカの薫陶を受けたうちの国民はほとんどが魔法を使える。
その中で防壁魔法が使えるのは1000人ほどだ。
「私が魔法を放ったら全員後先考えずに全力で防壁魔法を前面に展開しなさい」
言いながらチチカも魔法を構築する。
あれは、以前チチカがうちの門を破壊した時の魔法か。
あの時よりもかなり強力になっているのが遠目にもわかる。
そして。
ドラゴンがブレスを放つと同時にチチカも魔法を放った。
2つのエネルギーがぶつかり合い激しい爆発が起きた。
巻き起こる突風が止んで目を開けてみれば、外壁は瓦礫の山へと姿を変えていた。
慌てて駆け寄りつつ声を掛ける。
「みんな、無事か!?」
すると瓦礫の一部が崩れてチチカが顔を出した。
「チチカっ」
「まだ生きてるわよ。
でもやっぱりドラゴンブレスを完全に相殺は出来なかったか。
あれは恐らく不死の王によって強化されてたわね。
ま、後は頼むわ。ちょっとすぐには動けそうにないから」
「ああ、任せろ」
「ブレスの連発は出来ないはずよ」
「ならこれで俺があのドラゴンを倒せば、チチカがあのドラゴンに勝ったも同然だな」
「ふふっ、それは言い過ぎ……」
そこでチチカは意識を失った。
酷いダメージと魔力切れだろう。
俺はチチカをそこに残し、駆け寄って来たミツキ達に声を掛けた。
「全軍紡錘陣形で敵中央を突破する。
チチカ達が作ってくれたこの時間で一気に不死の王のところまで突っ込むぞ」
「分かったわ」
「そう言う事なら私が先頭を務めます。ミツキさんは陛下のそばに」
「イメーコ……」
「戦闘力ではヨサク達に劣りますが、道をこじ開けるくらいは出来るでしょう」
「苦労を掛けるな」
「ならこれが終わったらのんびり休暇をもらいましょう」
「お安い御用だ」
「では。全軍総攻撃をかける。
腕に自信のある者は前に出よ!
心に折れぬ信念を持っている者は我に続け!
狙うは敵総大将の首一つ。突撃せよ!!」
「「おおおっ!!」」
イメーコを先頭に全軍が巨大な槍となって不死の軍団へと突き刺さる。
だが不死の軍団もそう簡単に突破はさせてくれない。
敵の半ばまで突き刺さったところでその勢いは止められてしまった。
そして止まれば左右から包囲されて一気に劣勢に立たされる。
「陛下、行ってください。
ミツキさん、後はお願いします」
「分かったわ。お兄さん、遅れずに付いて来て!」
味方をかき分けて先頭に出たミツキは手に持っていた剣を投げ放った。
それはまるでレーザービームのように光を纏って敵を貫いていった。
「ミツキ、いつの間にそんなスキルを?」
「さあ。前からあった刺突スキルの派生だとは思うんだけど、ね!」
2本3本と放てば敵の間に細いながらも道が出来た。
そこへミツキと俺は駆け抜けた。
左右から押し迫る敵を潜り抜け、何とか抜けたかと思ったところに光が走りミツキが吹き飛ばされた。
「きゃあっ」
「ミツキ!」
「良く突破できましたね。ですがここまでです」
ミツキを吹き飛ばしたのは骸骨兵の中でもひと際見事な甲冑を纏った奴だった。
恐らく将軍級。全く不死の王国の人材の厚さには感心させられる。
恐らく今回参戦していない将軍も多数居るんだろう。
ミツキは、無事だ。
吹き飛ばされたものの受け身を取って立ち上がりすぐに戻ってきた。
「お兄さんここは任せて」
「分かった。死ぬなよ」
「お兄さんこそ」
俺達は一瞬目を合わせて頷き合う。
「おやおや、みすみすここを通すとでも?」
「あなたの相手は私よ。やああっ!!」
ミツキの放つ渾身の刺突スキルを受けきる骸骨将軍。
その隙に俺は飛躍スキルを使って一気に駆け抜けた。
そして遂に俺の目の前には不死の王が立っているのだった。




