7.2度目の襲撃
私の作品はいつもの事ですが戦闘があっさりと終わっていきます。
ふつうもっとこてこての戦闘描写をしてる作品が多い気もしますが。
この世界に来てから3日が過ぎた。らしい。
らしいというのはこの世界、明確な昼夜がないみたいなんだ。
空には常に太陽があって明るく、代わりに月だけがその位置を変えている。
月が1周したら1日と計算して今日で4日目だ。
4日目にして俺の村は8つの小屋と32人の男女が住んでいてまさに村と言える状態まで発展してきた。
このまま順調にいけば町と呼べるくらいまで行けるかもしれない。
そんな安易な俺の考えをあざ笑うかのように、暗雲が立ち込め2度目の警鐘が村に響き渡る。
「領主様。魔物の襲撃です!」
「敵の規模は分かるか?」
「はっ。どうやら敵は2個中隊。南北からそれぞれゴブリンと狼が合わせて20体前後来るようです」
俺の質問にテキパキと答えるヨサク。
きっちり副官っぽい動きをしてくれて有難い。
それにしても20体ずつ計40体か。
最初の襲撃の約5倍である。
まぁこっちは人数だけなら8倍だから前より余裕なのかもしれないが、前回は俺以外が全滅した上での勝利だった。
今回は出来る限り人死にはゼロに抑えたい。
ならどうするか……よし。
「全員で北側の魔物を殲滅するぞ」
「それでは南側から村に侵攻を許すことになりますが」
「構わん。それよりも戦力を分散して徒に人命を失う方が恐ろしい」
「はっ。了解いたしました」
村の北側へ行けば村人たちが手に棒きれを持って待っていた。
どの顔も不安と緊張でいっぱいだ。
そりゃそうか。ある意味みんな初陣だもんな。
「俺は以前戦ったことがあるが、落ち着いて対処すれば負けることはない。
みんな自分と仲間を信じて落ち着いて応戦してくれ」
「「はい」」
「ヨサクとマスオは5人ほど連れて左右へ展開。残りは正面で俺と一緒に正面で敵の突撃を食い止める。
後ろに回り込まれると厄介だからキッチリ跳ね返すぞ」
「あ、あの。領主様も前線に出られるのですか?」
「もちろんだ。俺こそがみんなの模範にならないとな」
「しかし危険です」
「ならしっかり戦ってくれ。お前たちが倒れると俺の守りが薄くなる」
「「はっ!」」
気合い十分な俺達中央は10人2列になって魔物の突撃を待ち構える。
敵の先鋒は足の早い狼だ。ゴブリンは少し遅れて駆けてくる。
「前衛は狼を止めることに集中!」
「「おおっ!」」
「「ガウガウッ」」
がしっ
前衛はこん棒を両手で構えてガッチリガード。
狼の足が止まったところですかさず後衛が攻撃を仕掛ける。
狼が怯めば前衛も攻撃に加わってタコ殴りにする。
それを見て慌てて駆けつけようとするゴブリンだったけど、そうは行かない。
「みんな行くぞ!」
「行くだや!」
「「おおっ」」
左右からの挟撃にどっちの対処をするか一瞬判断悩んでいる間に攻撃され、更に混乱しだす。
よし、この調子ならほとんど被害もなくこっちは勝てそうだな。
ひとつ問題を挙げるとすれば、みんなの攻撃力が低くて予想以上に時間が掛かっていることか。
そして時間を掛ければ南側の魔物が黙っていない。
今も断続的に物が壊される音が聞こえてくるし、なにより狼たちの唸り声がこっちに近づいている。
どうやらゴブリンと違って狼は生き物を優先して攻撃する性質があるみたいだ。
「よし、残りの殲滅はヨサクとマスオの部隊に任せて俺達中央は反転し南から来る狼に備えるぞ」
「「は、はいっ」」
俺の声にバタバタと隊列を作ろうとするけど若干手間取っている。
いや、並び順とか良いから。
この辺りの動きも今後訓練していかないとな。
っと、思ったより狼が速い。
これじゃあ隊列が整う前に突っ込まれるな。
仕方ない。
「お前たちはそのまま態勢を整えろ。
俺が時間を稼ぐ」
「あっ、領主様!」
言うが速いか飛び出した。
そして剣の代わりに木材を取り出すと力いっぱい横に振り回す。
ぶおんっ
「ギャンッ」
鼻先に風圧を受けて狼達がたたらを踏む。
あ、魔物にも恐怖心みたいなのはあるんだな。
とそれは今はいいか。
狼達が怯んだ隙に今度は棒高跳びの要領で近くの小屋の屋根へと飛び乗り、木材をしまって今度は石材を取り出して狼へと投げつける。
「ギャッ」
運良く頭に直撃した1体が光に変わる。
残った奴らが怒って駆けてくるが、小屋の上までは飛び上がれず悔しそうに呻いている。
「領主様に続くぞぉ!」
「「おおーっ」」
そうして稼いだ時間で準備を整えた村人達が加勢したことで残りの狼も無事に壊滅。
ヨサクとマスオ達も加わり無事に残ったゴブリンも程なくして撃退し戦いは終わった。
人的被害は多少怪我をした人がいるけど死者はゼロ。
その代わりに小屋が3つ破壊され柵もボロボロだ。
それはまあ想定どおりなんだけど、今回のことで今後の課題が幾つか見つかったな。