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60.招待客のみなさま

龍と竜の違いについてですが、一般的にはどうかはともかく以下のように使い分けてます。

龍:西洋龍。巨大トカゲに翼が付いたやつ。ドラゴンって言えば大体こっち?

竜:東洋竜。蛇のように長い胴体のやつ。シェンロンをイメージしてもらえれば。

リュウジュは竜樹なので竜のイメージです。


そうして慌ただしく準備は進められ、建国祭初日。

スケジュールとしては全部で3日。初日の前半が各国の使者を招いての式典、後半が領都全体で屋台を沢山だしてお祭りみたいに盛り上がる予定だ。

2日目、3日目は新たに領地になった村を巡って顔見せも兼ねてパレードで練り歩く予定だ。

もちろん俺が居ない間も屋台とかは出ているので、住民たちには3日間楽しんでもらえればと思っている。

で、今は長距離転移門の前で各国の使者が来るのを待っているところだ。

そうして最初にやって来たのは、護衛を2人連れた女性だった。


「ようこそいらっしゃいました。

私はリュウジュ王国の王、リュウジュです」

「建国おめでとうございます。天上王国の女王、キヌエです」


流石女王様。綺麗なカーテシーで挨拶してくれた。

あれ、待てよ。この声ってもしかして。


「あの、もしかしてですが、シルクさん?」

「覚えていてくださったんですね。先日はありがとうございました」


やっぱりそうだったんだ。

俺の言葉に嬉しそうに笑うシルクさん。

あの時は仮面にマントを着ていたけど、今日は勿論それはなく、綺麗なドレスを身に纏っている。

お洒落が好きだって言ってた気がするし、服装を褒めると喜んでくれるだろうか。


「そのドレス、とてもお似合いですよ」

「まぁありがとうございます」


まるで花が咲いたように笑顔を浮かべるシルクさん。

裏の無い雰囲気は社交辞令ではないのだろう。

というか、こんなに素の表情が出てて女王様って大丈夫なんだろうか。

腹黒貴族に騙されていないか心配になってくる。


「ん、んっ」

「ごほんっ」


と、護衛の人が鋭い視線と共にこれ見よがしに咳ばらいをしている。

これはきっと『てめぇたかだか新興国家の王の分際で女王陛下に馴れ馴れしいぞ。身の程を知れ!』とか『女王陛下に色目を使ったらどうなるか分かってるんだろうな。さっさと会場へ案内しろ!』とかいう意味だろう。


「えっと、積もる話はまた後程。

私は他の来賓の方を迎える必要がありますので、この先はあちらに居る女性が案内します。

ミツキ、失礼の無いようによろしく頼む」

「はい。では女王様ならびに護衛の方々。どうぞこちらへ」


そうしてシルクさん達は馬車に乗って迎賓館へと移動していった。

ちなみに馬車も今回用に用意したものだ。

今後は村同士の行き来や物資の輸送に使うことになるだろう。

続いてやって来たのは30代の男性と60代の男性+お付きの方々。

身なりからしてこの2人が国の代表なのだろう。


「ようこそいらっしゃいました」

「建国おめでとう。こうして会うのは初めてだったな。

ワシはブリジス王国の王ギルマンだ」

「僕はパスティン王国の王のナポリスだよ」


って、代理が来るのが普通じゃなかったのか?

なんで揃って王様が来てるんだよ。

焦る俺の顔を見てナポリス王が朗らかに笑った。


「あ、僕たちは堅苦しいのは嫌いだから気楽に行こうや。敬語とかも気にしなくて良いしさ」

「そう言って頂けると助かります」

「じゃあまた後でね」


ふたりはヨサクに連れられて移動していった。

さて、残るは魔物の国が2国か。一体どんな人(魔物?)が来るのだろうか。


「……フム。なるほど。なかなかに穏やかな風が吹く」

「えっ?」


突然真横から聞こえてきた声に慌てて振り向くと、そこにはくたびれたマントにカウボーイハットを被った骸骨が立っていた。

もう確認するまでもなく、この人が不死の魔物の国の使者だな。

彼は静かに村の景色を眺めていた顔をこちらに向け、帽子を取りながら挨拶してきた。


「やあ驚かせてしまったかな。

人の村に戦争以外で来るのは実に久しぶりでね。

今日は噂の国がどんなところか確かめに来たんだよ」


予想外に人間味のある話し方に驚きつつ、もう一つ気になったことを聞いてみた。


「噂、ですか?」

「ああ。今回招待状を持ってきた商人にこの国の話を聞いてみたんだ。

そうしたら私の国とは全く違うようだったのでね。気になって見に来たのさ」

「そうだったんですか。それでいかがですか?」

「ああ、悪くない。この世界に初めてやって来た昔を思い出す。

私に眼球が残って居たら郷愁の念に駆られて涙の1つも流していただろう。

まだ弱小領地だった頃に君のような男がうちに居てくれたら、私の人生は大きく変わっていたかもしれないな。

どうだい、今からでもサクッと死んで私の所に来ないかい?歓迎するよ」


気軽に死んでみないか、なんて言うのは流石だとは思うけど、やっぱり噂ほど怖い印象はない。

『血も涙もない悪魔』ってただ単に骸骨だからって意味だったんだろうか。

まぁどちらにせよまだ死ぬわけにはいかないが。


「これでも1国の王ですから。民を置いて行く訳には行きません」

「ハハッ。言ってみただけさ。でももし嫌でなければ近いうちに遊びに来てくれたまえ」

「ええ、それならぜひ」


不死の王は馬車に乗らずに散歩がてら歩いて迎賓館へと向かっていった。

というか、話の内容からしてあの方も魔物の王様だよな。どうなってるんだ一体。

と、首を傾げていたら遂に最後の来賓の方が来た。


「ようこそいらっしゃいました」

「うむ、いらっしゃったのじゃ!」


ぴょこんと飛び跳ねるようにやって来たのは小学校低学年くらいの子供だった。

シュバッと右手を上げて元気に挨拶する姿は見ていて微笑ましい。

でもただの子供ではなく頭には角が生えてるし、尻尾もあれば顔や手に鱗っぽいものも見える。

多分ドラゴニュートなのだろう。

そしてその子に続いて女性がやってきた。こちらは角はあるけどそれ以外は普通の人間と見た目は変わらない。


「これこれ。勝手に先に行ってはいけませんよ」

「ごめんなさい、母上!」


どうやら親子らしい。

そのお母さんは俺を見てゆったりとお辞儀をした。


「龍王国第7夫人マジョルヌです。こちらは娘のチックルです。ほらチックル、ご挨拶なさい」

「チックルです。先日は助けて頂きありがたき幸せなのじゃ」

「助けた?」


そんな記憶は無いが。

少なくともこの世界に来てから子供とかかわった記憶はほとんど無い。

こんな特徴的な言葉遣いの子なら忘れないと思うんだけど。

首を傾げる俺にぽんっと手を叩く女の子。


「あ、そっか。こっちの姿だと分からぬな。ならばこれでどうじゃ」


パッと光ったかと思ったら女の子は1メートルくらいの龍に姿を変えた。

いや、姿を変えられても、それこそ龍にあった事なんてない。

悩む俺にマジョルヌ夫人が助け舟を出してくれた。


「先日この子は奴隷狩りに攫われてしまったのです。

何とか彼らの隙を突いて脱出した時にあなたに匿って貰ったと言っていました。

今は成長期なのでここまで大きくなっていますが、その当時はまだ15センチくらいでしたでしょうか」


奴隷狩りから逃げてたのを匿った?

そう言えば以前自由広場の裏町を歩いてる時に怪しい黒服の男たちが居たっけ。


「……あぁ! あの時のト、とっても足の速い子か」


思わずトカゲって言いそうになったのを言い換える。

龍にトカゲっていうのは禁句だろうからな。夫人も無言の笑顔だし正解だろう。


「でもよくその時の人間が俺だって分かったな」

「招待状に付いていた匂いでビビッと来たのじゃ!」


警察犬もびっくりの嗅覚だ。

ムフーっと胸を張るチックルはなんとも微笑ましい。思わず頭を撫でてしまうじゃないか。

でもこれでやっと面識のないはずの魔物の国が招待に応じたのかは分かったな。



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― 新着の感想 ―
[一言] もっと大人数で来るのかと思ったらそうでもないのですね。
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