6.増える住民
気合い十分のヨサク達を連れていざ村作りだ!
……といっても、やることは地味で単調な作業だ。
トントンザクザク木を伐って小屋を建てて畑を耕す。
まあ世の中そんなものだ。
そして小屋の数に比例して当然のように森の奥から村人っぽい人達がやってきた。
「領主様。私達もこの村に置いては頂けないでしょうか?」
「もちろんいいぞ。
皆と仲良くすること、村の発展に貢献すること、自分たちの命を大事にすること。
これが条件だが守れるな?」
「私達の命、ですか?」
やはりそこは違和感を覚えるらしい。
こればっかりは少しずつ慣れて貰うしかないな。
ところで、人が増えれば問題も増える。
そのひとつはちょうど今合流した4人がキーだった。
「おんな」
「女だ」
そう。
ついさっきまで、ヨサク達の後に増えた村人を含め12人は全員男性だった。
そこへ20歳~30歳くらいの女性が4人追加されたことで男たちの目がギラついている。
こりゃさっさと釘を刺しておかないとマズいな。
「あーお前ら。何となく考えてることは分かるけど、女性を見下すなら叩き出すからな」
「「げぇっ」」
俺の感情を殺した発言に、主にここに来て日が浅い男たちが顔を青褪めさせる。
やっぱりか。
元々この世界は人の命の価値が低いし、常に魔物の襲撃に備えないといけない事から前面に立って戦う男たちの方が偉いという思想は良くあることだ。
男尊女卑の国が栄えないのかと聞かれたら歴史的に考えてもそんなことは無いと言える。
だけど、俺の目指す国家像ではない。
「俺としては女性も男性も同じ一人の人間だ。どっちが上とか下とかはない。
能力があって才能があって努力家でこの村の為に尽くしてくれるなら、男女問わず重用していくし、逆に罪を犯せば誰であろうと裁く。
他の村だと何かの褒美に女性を下賜するのかもしれないけど俺はする気は一切ない」
「あの、じゃあどうやって女を手に入れたら良いんですか?」
「簡単な話だ。口説いて惚れさせろ。それなら俺は何も言わん。
だけど、脅迫してとか、力尽くでとか、相手の意思を無視した場合は重犯罪と見なす。
あ、言っておくけどこれは女性にも当てはまるからな」
俺の話を聞いて喜ぶ者、困惑するもの、様々だ。
ずっと俺の価値観を押し付けてきたからな。もしかしたら近いうちに離反者が出ると思われる。
それはそれで仕方ないし、むしろ篩にかかって俺の期待する人材だけが残るなら将来的に見てもプラスだろう。
そう思ってたら村人の中でも特に背の高いがっしりした男性が質問をしてきた。
「あ、あの」
「ん?」
「おら、口下手で顔も不細工で、口説くとかぜってー無理だ。だばやっぱ家庭は諦めねばなんねか?」
訛りというかこれまでの村人とはイントネーションがちょっと違うな。
だけど言葉の意味は伝わるし、不快な感じはない。きっと素直で真面目な奴なんだろう。
顔だっていう程酷くはない。
「いや。諦める必要はないさ。
口がダメなら態度で示せばいい。
村の発展に誰よりも貢献して、村の危機には勇敢に立ち向かい、そして何があっても生きて帰ってくる。
誰にでも優しくて、会えば笑顔を見せてくれて、一緒にいてくれてありがとうと言ってくれる。
女性陣どうだ。もし彼がそんな村一番の益荒男になったとしたら彼の妻になりたいという者は居るか?」
俺の問いかけに女性陣全員が笑顔で頷いた。
更のそのうちのひとりはそれだけに止まらず大きな声で宣言した。
「良いね。そうなったら私があんたの1番目の女になるよ」
「ほ、ほんとだか!」
「ああ。でも中途半端は許さないからね」
「分かった。おらぜってえ村一番の益荒男になるだ」
なんかトントン拍子でカップルが成立してしまった。
ま、幸せなのは良い事か。
せっかくだし俺からも祝福を贈ることにしようか。
「よし。ではこれから村一番になるお前には『マスオ』という名前を与える。
名前に恥じぬ活躍を期待する」
「へぇ。必ず領主様の期待に応えてみせるだ!」
「そして女性の方は『ワカメ』だ。
女性陣の纏め役と共に、マスオと協力して理想の夫婦像の模範となってほしい」
「ええ、喜んで!」
笑顔で頷きつつ手を取り合うふたり。
この短い時間で一気に距離が縮まっているようだ。
これは子供が出来るのも時間の問題かもしれないな。
って、この世界って子供とか出来るのか?今の環境で子育てが出来るとも思えないけど。
ま、なるようになるか。