表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/111

56.(閑話)妖精郷の昔話

閑話と言いつつ、この世界の世界観が決まった瞬間でもあります。


私が子供の頃、お母さんが良く寝る前にものがたりを話してくれました。

それは私達が住むこの地のお話だったり、外の地のお話だったり、この世界のお話だったり。

でも不思議といつも『むか~し、むかし』から始まるんです。

「どれくらい昔なの?」って聞くと「私のひいおばあちゃんのそのまたひいおばあちゃんのさらにひいおばあちゃん位よ」なんて言ってましたけど、よく分かりませんでした。

とにかくとっても昔みたいです。


「むか~し、むかし。

神様がお創りになったこの大地には動植物の他に私達妖精が住んでいました。

妖精はこの世界を愛し、この世界に生きる全てのものが幸せになれるようにと願っていました。


しかしある時。空から幾つもの岩が降ってきました。

岩が地面にぶつかると、そこにあった森を潰して平らな荒れ地に変えてしまいました。

そしてその岩は種、もしくは卵でもあったのでしょう。

この大地にはそれまで居なかった人間と魔物が、その荒れ地に生まれてきたのです。

人間と魔物は瞬く間に数を増やし、周囲の森を荒らし始め、そして私達妖精を襲い始めました。

元々平和なこの世界で生きていた妖精たちは戦う術を知らず、次々に殺されてしまいました。


『このままむざむざ殺されて堪るか!』


と妖精達は遂に立ち上がりました。

ただそうは言っても戦う力を持たない妖精達です。

彼らは考えに考えた末、2つの方策を立てました。

1つは戦う力のある生き物たちに自分たちの力を宿し、人間や魔物たちを撃退することです。

そしてもう1つは人間や魔物たちが近づけないような強力な結界を張って、その中に避難することです。

つまり攻めと守りですね」

「その守りで出来たのがこの妖精郷なんだね?」

「ええ、そうですよ。私達が平和に暮らせているのはご先祖様のお陰ですからしっかり感謝しましょうね」

「はい。それで攻めのご先祖様は上手く行ったの?」

「それがそうでもないの。

人間も魔物もあっという間に数を増やしてしまい、最初こそ優勢だった妖精達も次第に数を減らしていきました。

そうしていつしか妖精は人間や魔物たちの前から姿を消したのです。

すると今まで妖精を襲っていた彼らは今度は自分たちで争い始めました。

それは人間と魔物だけではなく、人間同士、魔物同士でもです。

それでどちらも滅んでくれたら楽だったのですがそうはなりませんでした。

彼らはお互いに喰らい合い、敗者は勝者の血肉となり、次第に幾つもの強大な国家を創り上げて行きました。

そして起きる大規模な戦争。

1度の戦争で数千人、数万人が死に、この世界を血に染めて行きました。

恨みある血で汚された大地は放置しては腐ってしまいます。


『この大地を守るのが我々の使命だ』


生き残っていた攻めに回ったご先祖様達は自分たちの力を総動員して世界の穢れを取り込み浄化しようと試みました。

ですが余りにも穢れが強すぎたのです。

ご先祖様の多くがその穢れに飲み込まれ理性を失い魔獣と呼ばれる存在になってしまいました。

魔獣となった彼らは穢れの元凶である人間と魔物を襲うので、当初の目論見通りかと言えば、残念ながらそうでもありませんでした。

魔獣は巣を作りその地を生き物の住めない土地にしてしまいます。

その小規模な巣の事を最近ではダンジョンと呼ぶようですね。

その程度であれば周囲に影響はありません。

ですが大規模になると山一つがまるまる浸食され、魔境とか秘境と呼ばれるようになりました。

そして数年に1度、これら秘境から一気に魔獣が溢れ津波となって地上の全ての穢れを洗い流そうとします。流されるのが穢れだけなら良いのですが、それに巻き込まれて穢れ以外も破壊され後には荒れ地だけが残ります。

これが世に言う『大災厄』です」

「大災厄を防ぐ手立ては無いの?」

「難しいでしょうね。ですが可能性はあります」

「可能性……」

「ヒントはここ妖精郷です。これまで何度も起きた大災厄ですが、妖精郷が襲われたという記録はありません。

それはなぜでしょうか」

「うーん、あっ。穢れが無いから?」

「そうです。魔獣は穢れを求めて暴れるのですから、必然的に穢れが無いところには近づきません。もしくは近づいても無暗に暴れることはありません。

だから妖精郷の外でも、完全にゼロとまでは行かなくても穢れを薄く出来れば大災厄の被害を最小限に留める事は出来るかもしれませんね。

ですが人間も魔物も穢れを祓う力はありません。それが出来るのは私達妖精のみです」

「なら私達が世界中を巡って穢れを祓って行けばいいの?」

「そうですね。ですが私達はもう、世界中を巡れるほど数が居ません。

それに忘れてはいけません。人間も魔物も妖精を襲う生き物なのです。

きっと穢れを祓う前に彼らに襲われてしまうでしょう」

「えぇ、でも襲われたのはずっと昔なんでしょう?

それに今なら穢れを祓わないと大変なことになるって伝えれば力を貸してくれるんじゃないかな」

「残念ながら話を聞く前に襲われるのが落ちでしょう」

「そう、なのかな」


それから私はいっぱいお勉強をして、穢れについて調べました。

私の仮説が正しければ、私達妖精じゃなくても穢れを祓ったり生み出さなくすることは出来そうです。

後は実地で検証するだけです。

私はお母さん達に無理を言って外の世界に飛び出しました。

これが上手く行けばこの世界から穢れを祓ってお母さんのおとぎ話にあるように美しい世界に戻せるかもしれない。


そうやって希望に胸を膨らませていた私はほんの3日後に謎の集団に襲われました。

気が付けば穢れに満ちた牢の中。

深い穢れは私の精神を蝕みます。このままではきっと私は魔獣になってしまうでしょう。

そうなればもう世界の穢れを祓う事は出来ません。

仕方なく私は苦肉の策として自分の感情に蓋をし深い眠りに就きました。

いつか穢れが薄い場所に連れて行って貰えることを願いつつ。







降って来た岩は一体だれがどうして降らせたのかは謎です。

恐らくどこかの自己中な神様たちの仕業です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ