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49.包囲網からの脱出

村の制圧と同時に送られて来た宣戦布告の書状。

おかしい。早過ぎる。

偶然向こうの首都がこの近くにあったとしても、制圧された話を聞いてどうするかを協議し開戦を決断して書状を送る。

これだけの事をするのだから1日2日掛かっても早い方だ。

まして数時間で出来るとは思えない。


「……様。領主様!」

「はっ」

「どうされますか?」

「ひとまず全員を集めて防戦用意。すぐに攻めてくるぞ」

「了解しました」


ヨサクとマスオが皆に指示を出すのを眺めながら思考を巡らせる。

今回の事は色々と腑に落ちない事が多い。

最初の疑問点はそう、この村の規模だ。

ミークも領主でもないのに2000人規模になる村はあまり例が無いと言っていた。

実際に見てみたこの村は壁も貧弱だし建物も質が悪い。

立派なのは村長宅だけ……いや違う。

もう1つこの村には不釣り合いなものがあった。

それは兵士の装備だ。

村長宅に居た兵士たちは全員フルプレートだった。

あんなのうちの村では誰も着けていない。

それは重くて動きにくいって言うのもあるけど買おうとしたらかなり高いんだ。

それに領主になっていないという事は長距離転移門もないので自由広場で装備を買う事も出来ないはず。

なら別ルートで手に入れるしかない訳で、何処かと言えば南の領地だ。


「あぁ、なるほど」


つまりこの村は独立した村と見せかけて既に南の領地の軍門に下っていた訳か。

完全装備の兵士たちはこの村の人間ではなく、南の領地から派遣された兵士。

そう考えれば村長が死んでも一切動揺しなかったのも説明がつく。

奴ら俺達がここを攻めるのを手ぐすね引いて待ってたんだ。

だからすぐに宣戦布告も出来て兵も展開出来たって訳か。

……ん?そういえば攻めてこないな。


「敵の様子は?」

「はい。それが南側の敵兵がじりじりと圧力をかけてくるのですが、攻めてはきません」

「彼我の戦力差を推し量っているのか……おおよその数は分かるか?」

「約500人です」


ここまで用意周到に準備しておいてたった500?俺達の足止めが目的なのか?

そんなことしなくても一気に攻め込んだりはしないが。


「報告します。東西に敵部隊を確認。それぞれ約3000が北に移動中です」

「そうかそっちが本命か」


俺達をここに釘付けにしてその間に首都を攻略する。なるほど悪くない。

だけど俺達が居なくたってイメーコなら十分守り抜いてくれる。心配は要らない。

……いや待て。書状はここに送られて来たのはなぜだ?

普通なら首都の領主に宛てて出されるものだ。ここに持ってきても俺が居なければ意味が無い。

つまり奴らは俺がここに居るという事を知ったうえで行動してるんだ。

なら首都を落とすなんて面倒な事をするより、俺を確実に殺した方がいい。


「みんな良く聞け。敵の狙いは俺達だ。

東西に居る敵は村の北に移動して俺達の退路を断つ気なんだろう。

かと言って南に抜ければ敵の腹の中だ。補給も出来ず潰される未来しかない。

よって数は多いが北の敵を突破するぞ」

「「はい!」」

「ヨサク。多少陣形が崩れても良い。敵の包囲が完成する前に動くぞ。

進路は北西。俺とミツキで敵の壁に穴を開ける。全員遅れずに付いて来い!」


そうして動き出した俺達を、当然敵も黙って見ていてはくれない。

南に展開していた部隊が遂に攻撃を開始した。


「総員、攻撃開始。奴らを釘付けにしろ!」

「止めろ。領主様達の撤退を邪魔させるな!」

「おおっ」


こちらも負けじとマスオを中心とした部隊が応戦する。

激しくぶつかり合う両軍。

これでは隙を見せた瞬間に潰される。逃げる隙が無い。


「ここは任せて行ってくだせえ、領主様」

「マスオ!」


一瞬、マスオがこっちを見てニカッと笑った。


「おらはこの領地一の益荒男だ。

おらが居る限り領主様には指一本触れさせねえだ!!」


マスオのハンマーが金属鎧の敵を容赦なく叩き潰す。

横に振りぬけば10人が吹き飛ばされる。まさに一騎当千の金剛力士のような活躍だ。


「おおオぉっ」


更に敵中に飛び込んで敵を粉砕していくが、でもそれじゃあダメだ。


「待て、深入りするなマスオ。戻って来れなくなる!」

「ダメです領主様。我々はこの隙に撤退しなければなりません」


マスオの元に向かおうとする俺をヨサクが引き留める。


「しかし!」

「領主様が逃げなければ全員ここを動きません。

そうなれば我々も村に残った者たちも皆殺しです。

どうかマスオの行動を無駄にしないでやってください!」

「くっ」


俺は奥歯を噛み締めながら北を睨んだ。


「行くぞ。俺に付いて来い!

誰一人欠けることは許さんからな」

「「はいっ!」」


北西に向けて撤退を開始した俺達の前には当然敵が待ち構えていた。

ただこちらの敵は包囲を優先する為か若干軽装だ。

そんな装備で今の俺達を止められると思うなよ!


「魔法を撃てる者は『魔弾』の一斉射撃。撃て―っ」

「「おおっ」」

「俺とミツキとヨサクで中央に穴を開ける。

全員遅れずに付いて来い!」


魔法で敵の隊列を崩し一気に突撃を仕掛ける。

しかし敵も簡単には通してはくれない。

将軍級と思われる男が2人、俺達の前に立ちはだかった。


「我は剛腕将軍ニトウキなり。キサマが噂の領主だな。その首我が貰い」

「うるさい、死ね!」


無駄に長い前口上を言い始めた馬鹿をスキルで一気に距離を詰めて首を刎ねる。


「なっ。ニトウキ!キサマ、許さんぞ」

「邪魔よ!」


ミツキの2連突きが1mmの狂いもなく敵の心臓と眼球を貫いて絶命させる。

将軍級が倒されたことで敵に動揺が走った。


「今だ。叩き潰せ!!」

「「おおおっ」」


勢いを増した俺達はそのまま敵軍を突破し、何とか北側へと抜けることに成功したのだった。



自分でそういう流れにしておきながら、負け戦というか名のある登場人物が脱落するのは気が重いですね。

だけど戦争である以上、常勝不敗とはいかないですから。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 作戦の立案過程が丁寧に描写されていてわかりやすかったです。 [気になる点] あとがきのネタバラシが早すぎます。容易に推察されると確定したには大きな違いがあります。結果が確定した後にやらない…
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