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48.罠

部屋の左右の壁際には重装備で固めた兵士が合計10人。

そして奥には一人だけ優雅に椅子に座ったデブが居た。


「ヒヒッ。良く来たね。

聞いた話だと北の領地の領主が直々に来てくれたということだけど間違いないかね?」

「ああ。領主のリュウジュだ。あなたがここの村長か?」

「そうだとも。ヒヒッ。

それで何か話がしたいそうだね?いいよ。僕も暇ではないけど少しくらいは付き合ってあげよう」


うーむ、こちらを見下す態度を隠そうともしてないな。

というかさっきから視線がミツキを嘗め回すように動いていてミツキが俺の後ろに隠れてしまった。


「俺からの要求は今後一切北の地には入ってこないで欲しいという事だ。

狩猟などで村の外に出るときは南の領地で行ってほしい」

「ヒヒッ。良いだろう。代わりにそちらが保有している鉱山を明け渡してもらおうか」

「また随分と吹っ掛けてきたな」

「ヒヒッ。そうでもないさ。領主の命と引き換えだ。安いものじゃないかね?」


その言葉と共に村長が右手を上げると、左右に控えていた兵士たちが剣を抜いた。

……よく見ればみんなまともな鉄の剣を持っているんだな。

こんな村にしては意外と裕福なのか?まぁ良いんだけど。


「こうなる可能性は十分考えていたけど、それでもなお俺がたった2人でやって来たことに疑問は持たないのか?」

「ヒヒッ。ただ馬鹿なだけだろう。

やれ。ああ、女は殺すな。後で俺がたっぷり可愛がってやるからな」


村長の号令を受けて兵士たちが俺達に切り掛かる……前に俺達が先に動いていた。


「『飛躍』」

「なっ、がはっ」


俺のニードロップが村長の喉に突き刺さり一瞬で絶命させる。


「やあーーっ」

「ごふっ」


ミツキはミツキで入り口側に立っていた兵士を吹き飛ばし出口を確保する。

さてこれで敵のトップは倒したので残りの兵は烏合の衆に……ならないか。

影武者だったのか?

と何やら焦げ臭いにおいがしてきた。

まさか村長宅に火を点けたのか。

残った兵士はミツキを無視して俺をこの部屋から出さないように壁を作っていた。


「お兄さん!」

「構うな。先に脱出しろっ」

「う、うんっ」


俺の指示に従って一人村長宅から脱出していくミツキ。

こういう時に「でもお兄さんを置いて何て行けない!」なんて言わないようにいつも言い聞かせてある。

それにミツキだって俺がこの程度でどうにかなるなんて微塵も思ってない。

とその時、兵士の一人が不敵に笑った。


「ふ。部下に見捨てられたか。良いザマだ。

貴様はこのまま我らと共に火にまかれて死ぬのだ」

「いや俺そういう自己犠牲というか愛国心みたいなのは好きじゃないんだ。

死ぬなら自分たちだけで死んでくれ」

「その余裕も何時まで続くかな。放った火は約1分で家全体を包み込むであろう。

幾ら貴様が強かろうと1分くらいは持ちこたえてみせるぞ」


その兵士が言う通り、フルプレートの重装歩兵10人が狭い室内で鉄壁の姿勢でいるのだ。

これを一撃で吹き飛ばせるような破壊力は俺にはない。

それに言ってる間に早くも火の手が見えてきたな。なら。


「出口が無いなら作れば良いんだよ。『飛躍』!」

バキッ

「なっ!」


壁に向けて全力で突撃すれば、所詮木製の壁は見事に粉砕され、俺は隣の部屋に出ることに成功した。

そのまま同じことを数回行えば無事に外へと出られた。


「さっきの兵士たちは、追って来てはいないか。

しかしどこか危険な感じがしたからな。出来ればここで死んでいて欲しい。

という訳で『燃焼(ナパーム)』」


俺は炎上中の村長宅に更に魔法で火の手を強めておいた。

更に玄関側に回り込んで奴らが逃げ出してこないのを確認する。


「お兄さん!」

「ミツキ。無事に脱出出来てたか」

「うん」


先に脱出したミツキは多分俺が出てくるのを待っててくれたんだろう。

ならここからは2人で敵をなぎ倒しながら村の外に出れば、って、その必要も無いか。


「吹き飛ばせーーっ」

「領主様を助けるだ。うおおおっ!!」

「「おおおっ」」


多分村長宅の火の手を見て、交渉が決裂したと判断したヨサク達が突撃を開始したのだろう。

既に村の外壁は破壊され、敵兵も碌な抵抗も出来ずに逃げているようだ。

そのまま1時間と掛からずに戦争は終わってしまった。


「領主様、ご無事ですか!」

「ああ。こっちは2人とも無事だ。みんなもご苦労様」

「ありがとうございます。

では我々で後処理を済ませてしまいますので領主様は休憩していてください」

「そうだな。流石に少し気疲れしたよ」


こういう騙し合いみたいなのはやっぱり趣味じゃないな。

将来国家という体裁を取るにしても貴族たちのどす黒い権謀術数には巻き込まれたくないものだ。

ミツキと一緒に一息入れていた所に、村人のひとりが慌てて駆け込んできた。


「領主様大変です!」

「どうした?」

「こ、これを」


手紙?そこには手短にこう書かれていた。


『国益を防備せんが為、貴殿の領地に宣戦布告する。

プロステイン領領主ポージン』


プロステイン領というのは多分南の領地の名前だろう。

しかしどういうことだ?

なぜ突然このタイミングで宣戦布告をしてきた。

これじゃあまるで俺達がここを制圧するのを待っていたようじゃない、か。

その時、俺の疑問に答えるように村の南側で鬨の声が上がったのだった。



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