38.この世界の戦争のやり方
説明回。
今回だけで何回「にゃ」って言ってるのか……
気が付けば文末が全て「にゃ」になってる気がしてきました。
ミークが持ってきた手紙によって、のどかだったうちの村は一気に緊急事態モードに移行していた。
村人たちにはこの村が戦場になる可能性を伝えて防衛の準備と逃げる準備も同時に進めてもらう。
その間に主要メンバーは領主館に集まって会議だ。
「それでミーク。手紙の送り主は誰だ?」
「ブリジス王国所属のタイラス領ですにゃ」
どっちも知らない名前だな。
自由広場に行ったのは結局あの1回きりだし、どこかで会ったという事はないはずだ。
「なぜうちに攻めてくるんだろうか」
「それはくじ引きの結果ですにゃ」
「「くじ引き!?」」
この世界はくじ引きで戦争相手を決めるのが普通なのか!?
「ミーク。済まないがもうちょっと詳しく説明を頼む」
「分かったにゃ。
戦争には幾つか種類があるけど、今回のは単発の遭遇戦に相当するものにゃ。
これはうち達、商人から自分たちと同程度の領地への転移情報を買う事で行われるにゃ。
どの領地の情報かは完全にランダムにゃので『くじ引き』と表現したにゃ。
転移情報は1回使うと消えるから粘着される心配は無いので安心してほしいにゃ。
ちなみに、自分と同じ所属国の領地は対象外になるにゃ」
つまりそのタイラス領の領主に知らない内に目を付けられてた訳ではないらしい。
転移情報だけってことは実際の領地の場所が知られた訳ではないのも助かる。
いつ誰から戦争を吹っ掛けられるか分からないのは困るが。
「そして以前も伝えた通り、メインとなる村で戦う前に砦があるならそっちで防衛も可能にゃ。
砦を指定できる数は領地の規模に影響するから今のこの領地なら1つが限界にゃ。
戦争はまず砦で戦いが行われ、攻撃側が勝てば続いて村での戦いになるにゃ。
戦いと戦いの間には遭遇戦の場合1日のインターバルが設けられるにゃ。
その間に停戦交渉するっていうのも一つの手にゃ」
「勝敗はどうやって決まるんだ?」
「攻め手の勝利条件は規定時間内に砦もしくは村の中心部に立てられた旗の奪取もしくは破壊にゃ。
守り手の勝利条件は攻め手の大将格を撃退もしくは規定時間まで旗を守りきればいいにゃ。
砦で守りきればそこで戦争は終了で村が襲われることはないにゃ」
「戦争で勝った時のメリットと負けた時のデメリットは?」
「攻め手が勝った場合は、その領地にある物資を最大8割奪い取れるにゃ。
守り手側は村が相当破壊されるので復興が大変にゃ。
戦わずに停戦交渉する場合は3~5割を差し出すのが通例にゃ。領地が荒らされない分、復興も楽になるにゃ。
で、守り手が勝った場合は、まず攻め手が用意した物資を根こそぎ頂けるにゃ。
砦で守りきれた場合はこれだけで収支は多少プラスになるにゃ。
更に攻め手の領地への反撃する権利が得られるにゃ。こっちを舐めて攻めてきた相手をボコボコに出来るにゃ。あとそれで反撃に失敗しても更に攻め返されることは無いから安心するにゃ。
ちなみに、攻め手も停戦交渉が出来るにゃ。
その場合は物資を置いて行くから反撃は無しでお願いっていう感じにゃ」
「なるほどね。あと気になるのは寄り親の国が手を出してくることはあるのか?」
「直接介入は無いにゃ。出来るのは事前に物資や傭兵を貸し出すことくらいにゃ。
傭兵も無尽蔵に連れて行けるわけじゃないから安心するにゃ。多くて全体の戦力の1割にゃ」
「それは助かる」
親の国の兵士が9割とか言ったら勝ち目がないからな。
それでも竹やり同士で戦ってるところに戦車が1台投入されたらアウトだけど。
「相手をボコボコにして親が怒ったりは?」
「それも無いというか、どちらかと言えば評価が上がるにゃ。
『○○って領地は中々にやるようだな』『そこの○○って武将が特に強いらしい』って感じにゃ。
評価が上がれば自国に召し抱えようと交渉を依頼する国も出てくるかもしれないにゃ」
交渉というか、引き抜きだな。
領主に対する忠誠心が足りないと大切な人材を奪われる危険もあるってことか。
俺も気を付けないといけないな。
「あ、そうそう。むやみやたらに格下相手に攻め過ぎると、悪い意味で目立つから気を付けるにゃ。
最悪粛清の対象になって攻めた先に予想外の大部隊が待ち構えてる、なんてことも起きるにゃ」
「まあ今のところ積極的に攻めようとは思ってないからそれは大丈夫だ」
うちはまだ領内の開拓で手一杯だからな。
軍事力という意味で他領に大きく勝っているとは思っていない。
それに将来的に敵になる相手なら別だけど、金儲けの手段に人殺しをするとズルズルとダークサイドに落ちそうだ。
残念だが魔王とか覇王と呼ばれる趣味は無い。
「最後に、こちらの情報はどこまで向こうに知られてるんだ?」
「領主の名前と首都の人口、砦の数は知ることが出来るにゃ」
「他には?」
「……」
突然声のトーンを下げた俺にミークの毛が逆立つ。
ちらりと出口に目を向けるが簡単には逃げ出せないだろう。
「ミークならこの領地の内情もある程度知ってるよな。
この前ワカメ達と楽しそうに色々話してたし。
機密情報の1つや2つ、伝わってると思ってるんだけど」
「にゃうぅ~」
「で、お金を積むと他にどこまでバレるんだ?」
「それは、そのぉ」
部屋の温度が1度か2度下がった気がする。ミツキなんかはぶるっと身震いしたほどだ。
我ながら冷たい眼が出来るようになったな。
伊達にこの世界に来て何十人も殺してきてはいないってことか。
「今ここで有り金全部積めば聞けるのか?
それともこれ以上の情報が漏れないように手を打った方が良いのか?」
「わかったにゃ。話すにゃ。それとうちは味方だから殺気は出さないでほしいにゃ」
情報を漏れないようにするには漏れる元になる商人をどうにかしないといけないからな。
追放か最悪殺したり洗脳したり。
ただそれは本当に最悪の手段だからやらないに越したことは無い。
「それは悪かった。で?」
「領地の総人口、鉱脈の数、軍事総合評価、兵士の最高ランク、軍事技術評価まではお金で買えるにゃ」
「それ以外は金以外で手に入れるのか?」
「商人以外からなら手に入るにゃ。
例えば所属している国に間諜を送り込んで所属している将軍の数や特技を調べる事はよくあるにゃ」
そう言えば所属する国を変えようとするとスパイと間違われるって言ってたか。
将軍の特技は戦場の盤面を一気にひっくり返す可能性もあるし事前に知って対策が取れれば圧倒的に有利に事を運べるだろう。
今後は必殺技については人前で練習しない方が良いかもしれないな。
「ちなみにここの軍事総合評価とか聞けるのか?」
「大丈夫にゃ。ここはかなり低いにゃ」
「あれ、そうなのか」
これでも毎日練兵とか演習とかは村の皆でやってるんだけどな。
ヨサクとかならもう、オーガ相手でも1対1で勝てると思う。
「なにせここって兵士がいないにゃ」
「あーそうか。そうなるのか」
「そうなるんだにゃ」
結局この村は村人しか居ない。
村人は兵士ではないから軍事力としては評価されないってことだ。
ミツキの村は半数以上が兵士だけど、そっちはカウントされないのか。
若干詐欺臭いけど俺がそうしろと言った訳じゃないからいいや。
よし、聞くべきことは聞いたと思うし、後は丁重にお出迎えしてあげよう。




