36.スキル検証中
それから2週間。俺は暇を見つけてはスキルの練習を行っていた。
そのお陰で色々と検証も出来ている。
まずこのスキルはメインとなる能力は4つ。
1つ目が最初から使っている飛び跳ねる様な1発物の『飛躍』。
これはそれまでの運動エネルギーを無視して指定方向に強制的に自分もしくは触れているものを飛ばす能力だ。
飛距離は最大3メートルで連続使用制限は4回で次の連続使用までのインターバルは1分。
ただ飛距離と回数は今後レベルアップと共に増えると期待している。
何より凄いのは落下中に上方向に使えば落下エネルギーを無効化出来るし、横方向に使えば斜め下ではなく真横に飛ぶことが出来る。
欠点としては速過ぎる事だろうか。
飛躍中に別のアクションを起こすのは現時点では厳しく、飛躍が終わったタイミングで次の行動を起こしているのが現状。
続いて2つ目は空中を継続的に飛び続ける『飛翔』
飛ぶ速さは走るのよりちょっと早い程度。ゼフの方が速い。
飛べる時間は1分くらいでインターバルも1分。だけど、これもレベル次第だろう。
そして何と言っても安定性が悪い。
飛んでる最中にフラフラしたりして危なっかしい。
横で見ていたミツキ曰く『酔っ払いの千鳥足』だそうだ。
そして3つ目は空中で止まる『静止』
現在の運動エネルギーをゼロにして空中に止まる事が出来る。
効果時間は一瞬。止まり続けることは出来ない。
その代わりと言っていいのか、先の2つとは別カウントで回数制限も無さそうだ。
「お兄さん。それで空中で決めポーズとかしてみてください」
ミツキのリクエストに応えて、飛躍でジャンプした後、カメラで連続シャッターを切るように静止をしながらポージングをしてみた。
うん。ミツキを始め村の皆には受けたけど恥ずかしいので封印しよう。
そして最後は他のにも関係しているんだけど、地面から離れている間は重力や風と言った環境の影響を受けにくくなる。
イメージで言えばジェットコースターに実際に乗ってるのと映画で見てるくらい違う、じゃ分かりにくいか?
まあとにかくそんな感じだ。
全体的にスタミナ消費も少なくて使いやすいんだけど、1つだけデメリットがあった。
それはスキル使用中と使用直後は左の手足の感覚が無くなるというものだ。
飛翔中にバランスを崩すのもこれが影響している。
右利きだから左手が使えなくなるのは問題ないんじゃないかと思われそうだが、そんなことは無い。
木刀や杖を振るうのは基本両手を使う。
トンファーだって片手だけだと手数は半減するしコンビネーションも取れなくなる。
片手一本で戦う武術はあまりない。例えばそう、あれくらいか。
「という訳でミツキ先生。ご指導をお願いします」
「えっと、いきなりなんですか?」
「俺にフェンシングを教えて欲しい」
「あー、分かりました。じゃあちょっとやってみせますから見ててください」
フェンシングを始めとした高速の突きをメインにした戦法なら片手で扱えるくらい軽い武器なので何とかなるかなと思ったんだけど、それはかなり甘い考えだった。
ヒュンッと風を切り裂く音と共に振るわれるミツキの鋭い突き。
確かに片手で行われているが、それは支える安定した両足があってこそだ。
不安定な状態だと力は入らないし、戻す動作も遅くなり隙だらけだ。
これじゃあ実戦では使えない。
「私のスキルなら突きの威力を上げられるからガードの硬い魔物相手でも通用したけど、お兄さんのスキルは速度だけでしょ?
それじゃあ刺さる前に剣の方が力負けして折れるんじゃない?」
「その可能性は高いな」
強力な魔物ほど硬い皮膚をしているし、人間相手でも鎧や盾で武装しているんだから速度任せの突きで急所に当てられるとは思えない。
試しに木刀で案山子を突いてみたら、速度が乗っていたお陰で押し倒すような格好になってしまった。
「これなら短剣にして体重をかけて突っ込むのでもいいな」
「剣に拘らないなら、単純にタックルとかでも良いんじゃない?」
「……ありだな」
エルボドロップとかラリアットとか、体格が同じ相手なら通用しそうだ。
ならハンマーとか重い武器を持って突撃するのもありか。
丸太の杭を抱えてやれば人間攻城兵器に早変わりだ。
そこまで行かなくても右手1本で振るえる程度の重量の鉄の杭でも良いな。
よし、その方向で考えてみるか。




