33.不完全なスキルを手に入れた
ステータスっぽいのを出しますが、今後活用は多分しません。
早速受け取った『あめイジング』を瓶から1つ取り出して口に入れてみる。
味は普通にベリー系の甘い感じだ。
舌の上でコロコロと転がしていると結構早く溶けていくのが分かる。
ただずっとシルクさんが俺の事をじーっと見てるのが気になるけど。
ガリガリボリボリッ
「えっ!?」
「ん?」
小さくなってきたんでもう良いかなと噛み砕いてしまったんだけどまずかっただろうか。
ちなみに俺は普段から飴は小さくなってきたらボリボリ噛み砕く派だ。
この方が最後に一気に味が濃くなって美味しいからな。
「って、噛んだらダメだったかな?」
「いえ、ダメ、ではないのですが噛まずに舐め切った方が成功率は高いという説がありまして」
「そうなのか。じゃあ次は最後まで舐めてみよう」
言いながらもう一つ口に放り込む。
おっ。今度はオレンジ味だ。見た目同じなのに味が違うとはやってくれるな。
そうして舐めていると、ついつい噛みたくなる自分が居る。
まさかこれは忍耐を鍛える修行か!?
って、んな訳ないけど。
「……どう、ですか?」
恐る恐るシルクさんが聞いてくるけど、そういえばスキルってどうやって確認するんだ?
特に目の前にいつもの木札が出てくる訳でもなければ脳内アナウンスが流れる訳でもない。
「つかぬことを聞きますが、自分のスキルはどうやれば確認出来るんでしょうか」
「え、えっと。心の中で自分のステータスを確認したいと考えれば頭の中に思い浮かびますよ」
え、そんなことも知らないの!?みたいに一瞬驚かれたけど、一応教えてもらえた。
ふむふむ、資材の量を確認するときと同じ感じか。
さて、どれどれ。
『
名前:坂上竜樹(リュウジュ)
種族:人族?
領主レベル:17
領地レベル:7
領地人口:844人
スキル:死中に活あり(2)Down、雑草魂(3)、片翼の王(1)New
仲間:ミツキ、ゼフ
』
なんか色々出てきたな。
領地レベルに領地人口っていうのが俺の村の状態を指しているのだろう。
そうか。いつの間にか800人を超えてたんだな。1000人の大台ももうちょっとか。
それで肝心のスキルだけど何故か3つあるな。
1つにNewとか付いてるから他のは元から持っていたスキルって事か。
あとDownと出てるのもあるから2つ舐めたうちの1つが成功、もう1つは失敗したみたいだ。
5%で1回成功したのだから大成功というべきだろう。
で、詳細は分かるのか?
『死中に活あり:パッシブ。
強敵と戦う場合やピンチに陥った場合に全能力にプラス補正。
また生存に繋がるルートが見つかりやすくなる』
お、スキル名のところに集中したら詳細が見えた。
これはどうやらボス戦で役立つスキルだな。
パッシブってあるし、もしかしたら今までの戦いでも無意識に使っていたんじゃないだろうか。
『雑草魂:パッシブ。領主専用。
自分の領地の村人やゴブリンなど、一般職に対して全能力プラス微補正。
また何事にも諦めが悪くなる』
こっちは多分兵士を使わずに村人だけで頑張って来た結果かな。
これのお陰で少しでもみんなの生存率が上がってくれれば重畳だ。
それで新しく入ったスキルはなんだ?
『片翼の王:アクティブ/パッシブ。
空を制し、空を自在に誰よりも速く飛ぶことが出来る。
王たるその翼は何者にも縛られることは無い。
しかし片翼しかない為に短時間しか飛べず、高度も確保できず、空中に静止することもできず、真っすぐ飛ぶことも困難である』
これは……欠陥スキル、なのか?
いや多くの欠陥を抱えていても空を飛べるというのはかなりのアドバンテージな気がする。
領地の探索でも森の木よりも高く飛べば周囲がよく分かるし、戦闘でも防壁を飛び越えたり上空から急降下突撃とか有効だろう。
上手く使えば立体機動で敵を翻弄できるかもしれない。
あと名前が格好いいから良スキルだろう。
でもあれ。ちょっと待てよ。
雑草魂はともかく残りの2つのスキルってもしかして……
「じー(おろおろ)」
っと、俺が反応を返さないものだからシルクさんが凄い不安そうな顔でずっと俺を見てた。
「2つ舐めたうちの1つが無事に成功していたみたいです」
「ほっ。それは良かったです。
スキルは使えば使う程レベルも上がって性能もアップしていきますから体力に余裕がある時は積極的に使って行くと良いですよ」
「分かりました。領地に戻ったら早速練習してみます」
結果を聞いて胸を撫でおろすシルクさん。
他人の事なのにここまで気を揉んでくれるなんて随分優しい人だ。
でもシルクさんも自分の領地に戻れば弱肉強食の過酷な環境を生き抜かないといけないはずだ。
こんなに優しくて(しかもひったくりに遭うくらい警戒心がなくて)やっていけるんだろうか。
出来ればこういう人には幸せになってほしいのだけど、俺でも力になれるか?
「あの、この世界でどう表現するのが正しいかは分からないですが」
「はい?」
「同盟……いや、お友達になってくれませんか?」
「お友達……ですか?」
「ええ。ここで会えたのも何かの縁ですし、今後も仲良く出来たら嬉しいなと思いまして」
「いいですね。こちらこそよろしくお願いします」
そう言ってシルクさんと握手を交わす。
と、シルクさんが笑い出したんだけどなんだ?
「えっと、何か変でしたか?」
「ふふふっ。いえ。実は私、この世界でお友達が出来たのって初めてで」
「え、そうなんですか!?」
てっきりシルクさんなら友達が大勢居てもおかしくはないと思ってたんだけど。
やっぱり領地の奪い合いが多発するこの世界で友達になろうなんて悠長なことを言う人は居ないって事なのかもしれない。
でも同盟を結ぶのは、利害関係のみの繋がりっぽくて違うと思うから、俺が望むのはこっちの関係だ。
それにシルクさんも嫌がってはいないみたいだし、間違ってはいないだろう。
と、笑顔を浮かべていたシルクさんの元に、2人の男性が駆け込んできた。
「ご無事ですか、陛下!」
「警報を聞き急ぎ参上しましたが、賊はいずこに?」
言葉の内容からしてシルクさんの部下かな?外套の模様もシルクさんのと似てるし。
2人は身長こそさっきのひったくりより小さいけど、キビキビとした身のこなしから相当な腕前と見える。
そのうちの1人がキッと俺を睨んだ。
「まさかこの男がっ!」
「落ち着きなさい。ブルトン」
先ほどとは違い、威厳に満ちた声を出すシルクさん。
これが領主としての彼女の姿ということなのだろう。さっきまでのはお忍びモードというところか。
「この方はリュウジュさん。私の友人です。決して粗相のないように」
「「は、はは~」」
シルクさんの言葉を聞いてビシッと姿勢を正す2人。
教育が行き届いているというより、シルクさんが敬われているって事だろう。
と、シルクさんが俺の方を見て少し申し訳なさそうにほほ笑んだ。
「リュウジュさん。お迎えが来てしまったのでこれで失礼します。
また今度ゆっくりとお話しましょう」
「ええ、喜んで」
シルクさんは席を立つと2人を伴って颯爽と立ち去って、あっ、躓きかけたけど何とか持ちこたえた。
うん、どうやら運動は苦手っぽいな。




