30.今後の活動方針
領主館に戻った俺は主要メンバーを集めて会議を行うことにした。
あ、ミツキもちゃんと起きて朝食を済ませている。
「今朝はどうだった?」
「うん、朝日を浴びて目が覚めるっていうのが凄い新鮮だった。
目覚まし時計無しで寝坊しないかなってちょっと心配だったけど、自然と起きられるものだね。
お兄さんは?」
「俺はまぁ朝起きたら全部夢でしたってなる可能性も考えていたけど、そうならなくて嬉しかったような悩ましい感じだな」
「あぁ、確かに」
ミツキの方も思うところはあったのだろう。
もしかしたらこの世界は全部夢で、現実世界で事故に遭って意識不明になっている間に見ているものじゃないかって。
でも結局目が覚めても普通に目が覚めただけだし、仮に夢だとしても俺の場合はどう考えても助かりそうもない飛行機の墜落が向こうでの最後だから、仮に向こうで奇跡的に生きていたとしても、太平洋上をプカプカ浮いて魚に食われるのを待つだけだろう。
それならこのままこの世界に居れた方がいい。
と、思考が逸れたけど、みんな集まったな。
「みんなおはよう」
「「おはようございます」」
「今回皆に集まってもらったのは、今後の方針を伝えるためだ。
といってもまだ仮で考えてる段階だから、みんなの意見を積極的に聞かせてほしい」
みんなの顔をしっかりと確認しながら話を進める。
将来的には民主的に協議すべきなんだろうけど、今はまだ俺が主導権を握って話をした方が何かと良い。
『船頭多くて船山に登る』なんて諺もあるしな。
「まず何処かの国の傘下に入るかどうかだけど、現時点では入らないことにする。
その一番の理由はこちらから助けてくださいとお願いすると、どんな無理難題を吹っ掛けられるか分からないし、何より見下されてヘコヘコ頭を下げながら生きる趣味はない。
それよりも例え困難が多くても自分達の力で生き抜いて行こう。
もし他国と組むとしたら対等な同盟か、もしくはこちらが上だ」
俺の言葉にヨサクとマスオがにやりと笑う。
やっぱり男なら一国一城の主に成りたいだろう。
「それをベースに考えたとき、今後やるべきことは本当の意味でのこの地域の掌握だ。
現状まだ徒歩で1時間圏内しか把握できてないがそれを拡大させる。
それを担当するのは隠密隊とゼフの魔獣隊の混成部隊だ。
行動範囲も広いし大変だが頼めるか?」
「はっお任せを」
「バウッ」
「調べるべきは周囲の地形、鉱脈や珍しい植物や動物が居ないか、敵対勢力やダンジョンの有無だ。
見付けたら自分達で何とかしようとせず報告に戻ってくれ。
持ち帰った情報を元にヨサク隊、マスオ隊がメインで担当する。
指示を仰ぐ必要がある場合、特に目新しいものを見つけた場合は俺も同行するから置いて行かないように」
「承知いたしました」
単純な魔物の討伐とかであれば問題ないけど、ゼフのような意思疎通の出来る魔獣が見つかった場合や秘境と呼べそうな場所があるなら行ってみたいからな。
あとは新たに村が見つかった場合に、そこの領主との交渉には色々と訳知りの俺が行った方が話が早い可能性が高い。
「そう言えばまだ隠密隊隊長に名前が無かったな。
今日からは『ハトリ』と名乗ってくれ」
「ははぁ。有り難き幸せ!」
ハトリの敬礼は片膝を突いて両手を顔の前で合わせるタイプだ。
他の村人は直立で胸に手を当てている形なので、かなり独特なんだけど様になっている。
というか、どこぞの武士か忍びだな。
「ヨサク隊とマスオ隊は今の話に追加で村の周辺の警戒、そして防衛用の陣地というか砦を造ってもらいたい。
ミークの話では他の領地がここに攻め込んできた時に先にそっちで迎え撃つ事が可能なようだからな」
「は、承知しました」
「理想はトロルの大軍を罠で封殺してダークウルフの群れを遠距離から狙撃してオークの重装部隊を火攻め水攻めで殲滅出来たら最高だ。
そこまで行かなくても俺達村人の利点を活かして直接戦闘以上に罠や陣地で優位に戦えるように工夫をしてみて欲しい」
「な、なかなかに難しい注文ですが領主様の期待に応えられるように全力を尽くします」
「うん、頼んだ。あ、ちなみに今は魔物を例に取ったが今後は人間の領主もここを狙ってくる可能性もあるから忘れないように」
多分今はまだここを襲っても大した旨味は無いけれど、今後発展していって珍しい資源が取れるようになったりしたら積極的に狙ってくるところも出てくるだろう。
悪いがここを攻めるなら人間も魔物も関係なく敵だ。容赦はしない。
「イメーコは引き続きこの村の発展の為に力を尽くしてほしい」
「はぁ。まあ出来る限りはしますよ」
相変わらずイメーコは気の抜けた態度だけど、それで問題ない。
やる時はきちんとやるってのは前の戦いで証明してくれてるからな。
「ああ。肩ひじ張り過ぎるよりそれくらいの感覚で良い。
村人の皆にも無理はさせず休む時はきっちり休ませてやってくれ。
ヨサクとマスオもな。自分は大丈夫だからってみんなに無理させないこと。
体調や衛生面に関してはワカメが中心になって気に掛けて欲しい」
この世界に曜日の概念や休日を取る習慣があるかは確認していないけど、何も言わなかったら延々と仕事してる気がするからな。
いい仕事をする為には適度な休憩と遊びは必要だ。
そういった心のゆとりから新しい発見が生まれることは多いしな。
「そして最後にミツキだけど」
「う、うん」
「特になし」
「えぇ~~。何言われるか楽しみにしてたのに~」
俺の言葉にあからさまにがっかりするミツキ。
戦いの時は凛々しいのに普段は天真爛漫なところは面白いな。
「まあそれは冗談だけど。
ミツキには元の獣人の村の管理と獣人部隊の運用を任せたい。あ、管理についてはイメーコみたいに適当な代官にさせても良いかもな」
「って、俺ってば代官だったんですかぁ!?」
「今決めた。イメーコなら出来るから頑張れ」
「うへぇ」
「まぁイメーコは置いておいて。獣人ってこっちの人間と比べて戦闘能力に優れているみたいだから将来的には遊撃部隊みたいな位置づけで活躍してくれるのを期待してる」
「うん。任せて」
よし、これで大体指示は出せたかな。
特に反対意見も無いみたいだし、これで一回動いてみて問題があれば都度修正していけば良いだろう。
「ところでお兄さんは何をするの?」
「俺か。俺はひとまずは『自由広場』ってのに行ってくる」
その結果次第では行動方針を大幅に変更する必要も出てくるかもしれないからな。
科学技術とか中世くらいかと思ったら現代、むしろ未来に近くて銃火器とかが普通に出回ってたらヨサク達に作ってもらう砦も全く役に立たなくなる。
飛行機とか戦車とか核兵器とかそう言ったのは無いことを願おう。




