29.朝の風景と新たな仲間
朝、窓から差し込む光で目が覚めた。
眼前に広がるのは見知らぬ天井。って、これ元ネタなんだっけ。
まあいっか。とにかくベッドから起き上がって外を見れば丁度森の向こうから太陽が顔を出したくらいだった。
1階に降りてまず向かう先はトイレ。
……そうか。今後はトイレも行く必要があるんだよな。
むしろ今までどうしてたんだ?垂れ流しとか嫌過ぎるぞ?
うーむ、今のところ村で異臭が発生したという話は聞いたことが無いので大丈夫と信じよう。
顔を洗って食堂に行けば、既に朝食の準備が済んでいた。
「おはようございます。領主様」
「ああ、おはよう」
「は、はい!」
朝食を用意してくれていた女性と笑顔で朝の挨拶を交わす。
すると物凄く嬉しそうな顔をされたのだけど、なんでだ?
「その、今まではお声を掛けても素っ気ない返事だけでしたから」
「それは済まないことをしていたようだな。今後は大丈夫だから安心してほしい」
どうやら神様はそこまで親切に面倒を見てはくれていなかったらしい。
むしろ保護期間の意思ない間に何かやらかしてないか心配になってくるんだが。
「ところでミツキはまだ寝てるのかな」
「恐らくは。起こして参りますか?」
「いや。今日はゆっくり寝かせておいてやろう」
きっと彼女も久しぶりの寝るという行為を満喫しているだろうからな。
朝食の献立はパンとスープとサラダ。多分この世界の一般的な朝食なのだろう。
全体的に薄味だけど、その分サラダとかは野菜の甘みが感じられて美味い。
元の世界だと野菜なんて栄養価ゼロで味もしないなんてのもよくあったからな。
やはり自然豊かだと違うという事なんだろう。
朝食を終え外に出た後は皆と朝の挨拶を交わしながら村の様子を見て回る。
村人の半数は畑に入って農作業を行っており、残りの半数は新たな施設の建築や資源採集に動き回っている。
誰もが働き者だというのは良い事だ。
見回りの途中、ゼフが森の中から出てきた。
その口には大きなウサギっぽいのを咥えているから狩りに行って来てくれたんだろう。
「バウッ」
「「ワンワンっ」」
っと、ゼフに続いて狼が20体ほど出てきた。
一瞬警戒したものの襲ってくる気配はなし。
どうやら見た感じゼフに付き従っているみたいだな。
確かゼフは狼の上位種の更に特異個体だって話だからそのお陰なのかも。
「よーしよし。獲物を取ってきてくれたんだな。ありがとう。
それで、後ろに居る狼たちは友達か?」
「バウバウッ」
「なるほど、部下か。今後はゼフと一緒に村を守ってくれるのか。それは助かるな」
狼と言えばこれまで魔物たちと一緒にこちらを襲って来た記憶しかない。
でもよく考えれば狼を倒しても魔石は手に入らないので、実は魔物とは別だってことだろう。
魔物には狼などの魔獣を従える技能というかスキルが備わっているのか?
まあいい。
とにかく今後はゼフのお陰で狼たちも仲間に出来るという事だ。
ただぱっと見で仲間かどうかが分からないから後で首輪でも付けさせてもらおうかな。
あと、犬もそうだけど狼もきっと最初の上下関係をしっかりさせるのが大事だと思う。
俺はゼフを撫でるのを中断して立ち上がるとスッと右手を斜め上方に伸ばした。
それを見てビクッとした狼たちに告げた。
「いいかお前達。
俺がゼフの主でここのボスのリュウジュだ。
ここでのルールは単純だ。自分と仲間を幸せにすること。そして生き抜くことだ。
守れないとは言わせないぞ。良いな!」
「「ワンっ」」
俺の言葉が理解できたのか、姿勢よくお座りして返事をする狼たち。
賢いな。
恐らくただの動物ではなくれっきとした魔獣なのだろう。
これだけきちんと意思の疎通が出来るなら部隊に組み込むのもありだな。
そう思って俺は隠密隊の隊長を呼び寄せた。
「お呼びでしょうか」
「ああ。ゼフが連れて来てくれた狼たちを、村に慣れた後で隠密隊と一緒に運用させようと思う。
彼らは森のハンターだ。索敵は勿論のこと、機動力も高く奇襲戦法にも優れている。
夜目も利くので夜警の供としても活躍するだろう。
仲良くしてやってくれ」
「はっ。承知致しました」
狼は本来平地での戦いよりも遮蔽物の多い森での戦いの方が適している、はずだ。
実際に見た訳じゃないけど、その昔ベトナム戦争などで軍用犬が多大な功績を上げたのは社会の授業で習う程有名だ。
しっかりと訓練さえすれば熟練の兵士にだって勝てるようになるだろう。
訓練についてはゼフを中心に頑張ってもらいたい。
さて。
村の発展はもう、みんなに任せておけば大丈夫な気がする。
着々と施設は充実しているし新たに入って来た村人の教育についてもヨサクとイメーコが中心となって行ってくれている。
マスオは力仕事を中心に大活躍だしワカメが女性を指揮して村の健康や衛生面を見てくれている。
なら後は領主としてこの領地全体の方向性を決めて行くのが俺の役目だな。
といっても独裁政治をする気は無いので、みんなの意見も聞こう。




