23.戦の前の声かけ
話の区切り的に今回はちょっと短いです。
その代わり次は長めになる予定。
部隊の再編を終えた俺達は現在、魔物の集落アルファを目指して森の中を進んでいた。
「それでお兄さん。正面から攻撃を仕掛けるの?
大きい集落ならトラップや防衛施設なんかも充実してそうだけど」
若干心配そうに俺の顔を覗き込みながらミツキが聞いてくる。
ミツキの言う通り、小さい集落ならともかく、大きくなればそれだけ襲撃への備えをしているものだ。
魔物だって力があり余ってる体力バカだけじゃない。
コボルドのように器用にクロスボウを扱いもするし、罠の一つや二つ作れるだろう。
それにこれまでの経験からボスは確実に人間並みの知性を持ち合わせている。
ミツキが獣人の姿になっている事を考えると、魔物のボスも実は元は普通の人間だった可能性もある。だからと言って敵に情けを掛けたりする気は無いが。
確か三国志か何かで聞いたけど敵の要塞を攻めるなら3倍の兵力を持って当たるのが常道らしい。
今回はまだただの集落だから良いけど、それだけ守る方が有利だって話だ。
なので俺は幾つか策を弄することにした。
その一つはイメーコに依頼した陽動部隊だ。
村に残してきたのは経験の浅い人達なので無理はして欲しくないが、過保護も良くない。
その辺り、慎重派なイメーコならいい感じに動いてくれると期待している。
最悪、全く敵を引き付けられなくても大丈夫。むしろ敵の本隊を引き寄せられたら困る。
その辺を踏まえてもう一つの策の為に、今回先鋒を務めるヨサク隊には『ボロボロになった服』に着替えてもらった。
「領主様。これくらいで良いですか?」
ヨサク達を見れば、まるでハロウィンの仮装かと言いたくなるくらい所々に血糊っぽいのまで付けた格好になっていた。
「あ、ああ。
ちょっとやり過ぎな気もするけど、良いんじゃないか?
それなら遠目なら間違いなく負傷しているように見えるだろう」
と、集落に着いたか。
「イメーコの部隊は?」
「はっ。既に配置についているそうです」
「よし。では10分後に進軍を開始すると伝えてくれ」
俺はそばに控えていた伝令役の隠密隊に指示を出した。
一礼してスッと音を立てずに走り去っていく様はまるで忍者だな。
それを見送った後、俺は皆に向き直った。
「いいかお前達。今回の目標はこの集落を陥落させることだが、最優先事項は生きて帰ることだ。
仲間を救いたいなら生き抜け。百戦錬磨のお前達が1欠ければ残った者たちは窮地に立たされる。
大切な人を幸せにしたいなら生き抜け。自分の元気な姿以上にその人を幸せにするものはない。
間違っても自分の命を捨てて仲間を助けようなんて考えるな。
助けられる可能性がゼロで無ければ最後の最後までその可能性に賭けて全力でぶつかれ。
死ぬほどの傷を受けても最期まで諦めるな。その足掻きこそが仲間の命を救うし、俺達には心強い治療隊だっている。無事に生き残れれば、その瀕死を乗り越えた経験こそがお前達の武器になる。
あ、一応言っておくが、いくら治療隊に可愛い女性が多いからって敢えて怪我をして治療を受けに行くようなマネはやめろよ?
そんなことをしたら怖い怖いワカメ治療隊長のお説教が待ってるからな」
「え~、誰が怖いんですか?領主様」
「い、いやぁそれは。ははっ」
「「あはははっ」」
俺の差し込んだ冗談に場の空気が少し和む。
緊張し過ぎも良くないからこれくらいが良いだろう。
「ともかく俺達はまだまだ道半ばどころかようやくスタートラインに立ったくらいの状態だ。
まだこの先に楽しい事も困難も沢山待ち構えているだろう。
俺はそれを皆で乗り越えて行きたい。
だから今回も全員で勝って村に帰るぞ」
「「はいっ」」
気合の入った視線に頷き返す。
よし、時間も良い頃合いだな。
では始めようか。




