19.救援のお作法
ファースの村を支援するに当たって、先に2つほど確認しないといけないことがあった。
1つはファースの村の領主がこちらの支援を受ける意思があるかどうかだ。
頑張って助けたのに、余計なお世話だ何てことをしてくれたんだ、などと言われたら楽しくない。
多分その場合は勢い余って魔物の代わりに俺がファースの村を制圧することになるだろう。
別に同盟を結んでいる訳でも何でもないのだから。
そしてもう1つ。
さっきの話にも近いけど、ファースの村が助ける価値があるかどうか。これも重要になってくる。
分かりやすい例だと、女性を道具のように扱っていたり男性を奴隷のように扱っていたりだ。
もしくは領主が独裁者だったり腹黒狸親父だったりした場合、俺は仲良くしたいとは思えない。
この場合もいつかは必ず衝突が起きるので、いっそ今滅んでくれた方が楽だ。
以上の事から支援をする前に使者を送ることにした。
というか、やっぱり自分の目で確かめるのが一番なので自分で使者を務めることにした。
「こんにちは~」
「やあ。いらっしゃい。普人が来るとは珍しい。どこから来なすったね?」
「この近くの村からです。それで領主様にお会いしたいのですが取り次いでいただけないですか?」
「ああいいとも。付いて来ると良い」
ファースの村に着いて最初に見かけた村人に挨拶をすると、明るい声で返された。
まさかミークと同じように獣人の村だったのは驚いたけど、普通に会話も成立するし肌の色と同じただの個性なんだと思う事にした。
ただそのちょっと、モフモフしたら気持ちいいかな~なんて思ったけど、流石に初対面で頭を撫でさせてくれというのは失礼過ぎるので我慢した。
案内される間に軽く村の様子を確認。ふむふむ、男女ともに和気藹々と活動しているのはプラス評価だな。
あと、うちと違って兵士が沢山いる。というかこれが普通なのかもしれない。
うちは何というか全員が村人で兵士だからな。交代制で訓練と村の開発を行っているところの方が珍しいだろう。
そして紹介された女領主は俺より若い、多分元の世界だと高校生くらいの女の子だった。
背筋がビシッと伸びていて動作もキビキビしている。
恐らく体育会系のスポーツか格闘技でもやってたんじゃないかな。
村人との関係も良好だし責任感も強い。
よし、あとは救援依頼をそれとなくもらえれば。
「間に合うなら助けて欲しいと、そう言う事ですか?」
「え、ええ。助けて欲しいです」
よし、言質頂きましたっと。
俺はミークから買い取ったアイテムの一つ『ホイッスル』を吹いた。
これは少し離れた仲間への連絡手段だ。
長く1回吹いたら支援を行う。短く3回吹いたら支援は諦める。そう取り決めておいた。
これで現在森の中で待機しているヨサク達にこちらの意図は伝わっただろう。
ただ助けるとは言ったけど、馬鹿正直にファースの住民と合流して魔物を押し返す訳ではない。
その証拠にホイッスルを吹いても俺の所に駆けつけてきたのはゼフだけだ。
「あの、救援部隊はいったいどこに?」
「もう間もなく到着する。それよりほら。君が行ってやらないと村人たちがヤバいんじゃないか?」
「あ、そうだった。じゃああたしは行くから。頼んだからね!」
そう言い残して女領主さんは駆け出していった。
刺突剣を持ち矢のように走る姿は格好いい。
あ、そう言えば名前まだ聞いてなかったな。無事に勝てたら聞いておくか。
「じゃあ俺達はのんびり行くか」
「バウ」
俺はゼフを連れて女領主さんの後を追い掛ける。
すでに両軍は衝突しているがまだ早い。
「ぬおおっ」
「あ、馬鹿。まだ早いって言うのに」
作戦よりも早くマスオ隊が攻撃を開始してしまった。
きっと早くも倒された村人を見て我慢が出来なくなったのだろう。
相変わらず仲間思いな奴だ。
マスオ隊の参戦により魔物の隊列が崩れた。
具体的には後衛からクロスボウを扱うコボルド達が襲撃され、それを立て直そうとトロルが2体村の攻撃から離れた。
でも幸いにしてこの時点で魔物たちは撤退すると言う選択を取らなかった。
そして残念な事にマスオ隊が敵の後衛を足止めしても村への侵攻が止まらない。
村人達も善戦してはいるが既に防壁は破壊され村の施設にも被害が出ている。
「グオオッ」
「なんのっ」
と、ここで両軍の大将が衝突。
といっても1対1ではなく、魔物側はオークを4体引き連れている。
俺が再びホイッスルをひと吹きすればヨサク隊がマスオ隊の反対から突撃を開始した。
「行くぞ。オークどもをぶっ潰せ!」
「「おおっ」」
「援軍が来たぞ。今だ押し返せ!!」
「「イエッサー」」
ヨサク隊の参戦によりこの村の兵士たちも士気を回復させ反撃に出た。
これにより戦場は混戦状態になってしまったが、お陰で魔物たちが撤退するのは難しくなった。
まあ、元々撤退する気なんて無かったのかもしれないけど。
なにせ向こうはこの村の領主、さっきの女の子を首を取れば勝ちなのだから。




