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16.生贄の生き物

何とかボスを倒す事に成功したけど、かなり厳しい戦いだった。


「みんな無事か?」

「すみません、領主様。5人ほど」


俺の問いかけに力なく答えるヨサク。

ゴブリンの相手をしたうちの2人とオークの相手をしていた3人がやられたようだ。

よく見ればヨサク以外もかなりのダメージを受けているようでみんな地面に座り込んでいる。


「無茶な作戦に付き合わせた俺の責任だな」

「いえ。我々は自らの意思で領主様に付いて来ましたので、領主様が悔やむ必要はありません」

「そうか」


当初の予定ではボスを倒すまでもなくマスオが目標の檻を破壊して生贄にされそうになっている生き物を確保して撤収する手筈だった。

マスオが狼に足止めされてしまったので、作戦変更を余儀なくされた訳だけど俺がそのまま戦闘続行を決断してしまったからな。


「おらの所為ですまねえだ」

「いや、マスオが狼を引き付けてくれなければもっと多くの犠牲が出ていただろう

今回は敵の戦力を過小評価していた俺のミスだ」


何とか勝てたものの沈んだ空気。

それを破るようにワカメの明るい声が響いた。


「さあさ。いつまでも項垂れてないでやる事終わったならさっさと帰るよ。

村に帰るまでが遠征なんだからね!」


そうだな。後悔しても死んだ奴らが戻ってくる訳でもない。

それにまだ、ここに来た一番の目的が残っている。

俺はぽつんと取り残された檻の前にやって来た。

檻の中には白い大型犬っぽい生き物が1体。

ただ捕まえる際に相当痛めつけられたらしく全身傷だらけだ。


「グルルルッ」


俺を見て唸り声をあげるも弱弱しい。

問題はこいつをどうするか、だけど。

魔物に代わって俺が生贄にするっていうのは当然なしだ。

なら傷を治療して野に帰すか連れて帰るか。

どっちにしろワカメの薬でもすぐに全回復とはいかないだろうから一度連れて帰るか。


「人間用の傷薬で悪いんだが、まずは傷の治療をさせて欲しい」

「グルルッ」

「うーん、流石に言葉が通じないか。

ま、その傷だとまともに動けないだろうから大人しくしててくれよ」


そう言いつつ檻を開けて中に入る。

さて傷の具合は、っと。


「バウッ」

「うっ」


伸ばした手を噛まれた。

なかなかに痛い。というかめっちゃ痛い。

でも嚙み千切られる程ではないのが救いか。


「領主様!」

「あ、大丈夫大丈夫」


俺は腕を噛まれたまま、外で慌てるみんなを宥め、もう片方の手で傷薬を塗りつけていく。


「グッ、グッ」

「痛い痛い。沁みるのは分かるけど我慢してくれ」


薬を塗る度に嚙む力が増すのでそろそろ感覚が無くなって来た。

急がないとちょっとヤバいかもしれん。


「よし、ひとまず見える範囲はここまでか。いい加減放してくれるか?」

「バウ」

「よしよし」


無事に放してくれたので残った傷薬を自分の腕に塗りたくる。

幸い指は動くし心配は無いだろう。


「じゃあ元気になるまで俺の村でゆっくり過ごしてもらおうと思うから連れて行くぞ」

「バウ」


だいぶ大人しくなったこいつを肩に担ぎ上げる。

身体の大きさからして70キロくらいはありそうだけど、まあ何とかなった。

やっぱりこの世界に来てから身体能力が上がっているみたいだ。


「領主様。それは俺達で運びます」

「いやいい。それよりも残っている物資の回収と撤収を急いでくれ」

「はっ」


そうして俺達は犠牲を出しつつも何とか村まで帰ってくることが出来た。

で連れて帰って来た大型犬っぽいのなんだけど。


「うーん、雪狼がこの辺りに居るとは思えにゃいし、ダークウルフの変異個体かにゃ。

さしずめホワイトウルフと言ったところですにゃ」


ミークに見てもらった結果、そんな風に言われた。

ちなみにダークウルフは狼の上位個体だそうだ。


「それであの子どうするにゃ?

もし良かったら私の方で高値で買い取りますにゃ」

「いや、売る気は無いよ」


連れて帰ってから2日が経ち、あいつはいま元気に村の中を走り回っている。

この様子ならもう傷もすっかり癒えたみたいだな。

俺は手を振って呼び寄せると頭を撫でながら聞いてみることにした。


「傷も治ったし、もう好きにどこへ行っても良いぞ」

「バウ?」

「ここに居るなら今後は村の住人として働いてもらうことになる。

でも今はまだただの客みたいなものだから、特に気にせず元の住処に帰っても良いんだぞってことだ」


俺の言葉を聞いてジッと俺を見上げてくる。

やっぱり人の言葉が伝わってるようで伝わってないのか。

パタパタと尻尾を振るだけで一向にどこかに行こうとはしない。

見かねたミークから声が掛かった。


「あの、領主様?その子完全に領主様に懐いてますにゃ。

いっそのこともう、ペットか従魔として飼ってあげるのがいいにゃ」

「そうなのか?」

「バウッ」


元気に返事をしてきた。どうやらそうらしい。

であればちゃんと名前を付けて可愛がってやらないとな。


「よし、なら今日からお前は『ゼフ』だ。

狼の上位種っていうことは戦闘面で期待しているぞ」

「バウバウッ」


さっき以上に嬉しそうに尻尾を振るゼフ。

なんかもう、狼というよりただの犬だな。

可愛いから良いんだけど。



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