14.商人がやって来た
魔物が死ねば魔石に変わり、人が死ねばお金に変わる。
そして村の発展には魔石もお金も両方必要だという事は、今後俺達は魔物の集落だけでなく、人の村も襲撃していかなければならないことになる。
仮に魔物の集めたお金だけで何とかしようと考えても、それは俺達が直接手を下すのか魔物たちに襲わせるのかの違いしかない。
かと言って村を発展させなければいずれここより発展した魔物たちや人間たちに襲撃を受け滅びることになる。
少なくとも今の俺達の実力ですべてを救うことなんて出来はしない。
なら守るものを決め、信念を持って突き進むしかない。
例え悪魔と呼ばれようとも。
と、そんなことを考えていたら何やら村が賑やかになって来た。
何かあったんだろうか。
ちょうどその時、ヨサクの俺を呼ぶ声が聞こえた。
「領主様。村に商人がやって来ました!」
「分かった。今行く」
領主館の外に出てみればなるほど。村にはない幌馬車と御者台に猫耳少女が見えた。
猫耳少女は俺の姿を見るとシュタッと馬車から飛び降り、ニコニコと俺の所にやって来た。
「お初にお目にかかりますにゃ。
うちは行商人のミークにゃ。以後お見知りおきをですにゃ」
「領主の竜樹だ。よろしく」
「はいにゃ」
友好の握手を交わす。
すると一瞬、ミークの目がキラリと光った気がするぞ?
ただの握手から何かを感じとったのだろうか。
少なくとも可愛い女の子と甘く見ていると痛い目を見そうだ。
さて。こういう時は核心を突く前に軽いジャブから行ってみるか。
「立派な馬車だけど、森の中を良く走って来れたな」
「流石に森の中を走ってはいないにゃ。
この村が発展したお陰で街道が広がったので通れるようになったにゃ。
というかそんなの常識にゃ」
「ああ、なるほど」
元々細い獣道はあったけど、いつの間にかそれが拡張されて馬車1台が通れる道が出来ていた。
まあ最初の頃に商人に来られても売れるものも買うお金も無かっただろうしな。
村が発展すればその周りでも変化が起きる。これは覚えておこう。
「うちからも聞いて良いかにゃ?」
「ああ、何だ?」
「この村にはどうして兵士がいないにゃ?」
「兵士?兵士ってなんだ?」
「にゃ!?そこからかにゃ」
質問に質問を返すとミークは頭を抱えてしまった。
呆れてしまったミークだけど「仕方ないにゃあ」と言いながら説明してくれた。
「村人は村を発展させるために居るにゃ。戦いは苦手にゃ。
兵士は戦う為に居るにゃ。その代わり村の発展には直接手を出さないにゃ。
きっちり役割分担が決まってるのが普通にゃ」
やっぱり名前の通りか。
確かにその方が専門性も出て強くなるのかもしれない。
でもそうすると前回のように全員で出陣するするという訳には行かなくなるだろう。
行くとしたら村人全員プラス防衛用に何人かの兵士を残した残りで行くことになる。
つまり全体の人数の1/4程度。今なら15~20人程度ってことだ。
この世界の経験値が数値的に表され、人数で頭割りされるのだとしたら少数精鋭の方が成長は早い。
でもそうすると成長していない村人は敵の良い的だ。
出来ればそうはなって欲しくない。
俺の考えをよそに、ミークは辺りを見渡して首を傾げている。
「それにしても不思議な村にゃ。
まだ小さいのに村人も領主様も意外と逞しいにゃ。
それに男女が一緒に働いてるのも珍しいにゃ」
「他は違うのか?」
「全部がそうって訳じゃにゃいけど、村人はガリガリ、兵士はギラギラ、女性はコソコソ、領主は太々しい。
そういう村も多いにゃ」
まあそういう村は長続きしにゃいけど、と小さく続けるミーク。
まるでダメな例の典型みたいだな。うちも俺が何も言わなかったら村人たちはそうなってた可能性がある。
「まあその辺は追々聞くとして。
何か欲しいものは無いかにゃ?馬車の中に色々取り揃えてるにゃ。
物々交換でも良いし、魔石やお金があるならそっちでも良いにゃ」
商品を見せてもらえばなるほど。
まだこの村では手に入らない鉄製品などがあった。
でも流石に高い。鉄の剣なんて1本か2本しか買えないな。
「鉄の剣を兵士に渡せば、その人は隊長格にパワーアップするにゃ。
一気に戦力アップにゃ」
うちで言えばヨサクやマスオに渡せば、今後はオーガとだって渡り合えるようになるかもしれない。
戦力アップは確かに魅力的だ。
でも武器に頼っていては、より強力な敵が出てきた時にもっと強い武器を探さないといけなくなる。
それよりも今は地力をアップさせることが先決だろう。
なので俺は別のものを買う事にした。
「情報を買うことは出来るか?」
「情報にゃ?」
「ああ。見てわかる通り俺はまだまだ知らないことが多い。
村を発展させるには何が必要か。近隣の村や集落の状況、それにまだ見たことの無い魔物の情報とかが知りたい。
行商人として多くの村を周って来たミークなら色々知っているだろう?
もちろん話せない事は無理に聞かないし、内容に合わせて対価も払う。
どうだろうか」
「ふむむ」
俺の問いかけに考え込むミーク。
それは言えないというより、どこまで言えば良いのか、もしくは幾らで言えば良いのかを考えているようだ。
やがて考えが纏まったようでにかっと顔をあげて笑った。
「今回は初回特典という事で特別サービスしておくにゃ。
その代わり今後もご贔屓にして欲しいにゃ」
そう言ったミークは様々な情報を提供してくれた。




