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12.ボス戦

雄たけびが聞こえた方を見れば集落の奥から身長2メートル強の鬼が怒りの形相でこちらを見ていた。


「あれはまさか」

「オーガです!」

「ここのボスか。見た目通り力自慢だろうから距離を取って囲め。

固まってると纏めて吹き飛ばされるぞ」


注意を促しながら俺は別の事を考えていた。

魔物のボスっていうのは人間でいう所の領主、つまり俺と同じポジションだ。

だからもしかしたら俺と同じ境遇で何の因果か突然ボスにさせられた存在なのかもしれない。

まあだからと言って情けを掛けてやられてやる訳にはいかない。


「まずは小手調べだな」

「ガアッ」


俺が前に出るとオーガは手に持った巨大ハンマーを振り下ろしてくる。

くっ、物凄いプレッシャーと風圧だ。お陰で若干身体が委縮する。

でも動き自体は速くは無いのでタイミングは読めるし十分避けられる。

続いて横スイングに斜めに振り下ろし。

そのどれもが地面を抉るほどの一撃で当たればひとたまりもないのは受けるまでもない。

流石ボスだ。

ただし力任せで隙も大きい。

もしかしたらまだあまり戦闘経験がないのかもしれない。


「そこだっ」

「ガッ」


懐に踏み込んで一閃。

腕には岩を叩いたかのような硬い手ごたえが返って来たけど、無事に奴の脇腹を切り裂く事が出来た。

このまま油断さえしなければ無事に勝てそうだな。


「ごくっ」

「うっ」


俺とオーガの戦いを見守るみんなの息を呑む声が聞こえてくる。

って、あれ?いつの間にか一騎打ちみたいになってるけど、それはどうなんだ?

確かに強力なボスには少数精鋭で挑むのが被害を最小限に抑えるのに良いとは思うんだけど、それだとみんなの経験にはならない。

今後もボスが1体だけとは限らないし中ボスがこのオーガクラスなんてことはザラにありそうだ。

なら今のうちに経験を積ませるべきかもしれない。

その為にももう少しだけダメージを与えておいてっと。

オーガの利き腕を切りつけて若干攻撃速度を遅くする。


「手ヤリを持っていてこのオーガに挑む勇気のあるやつは前に出ろ。交代だ」

「「は、はいっ」」


さっと周囲を確認すればヨサクとマスオの他、3人の村人がヤリを構えて前に出た。


「よし。卑怯とか考えるな。相手は手負いでもお前達より強い。

正面に狙われたら避けることに専念して、十分な隙を見せた時だけ攻撃。

1突きして即1歩下がれよ。遅れたら反撃が飛んでくるからな!」


そう言いながら俺は飛び下がり皆と交代した。

ちなみに残りの村人はと言えば、咄嗟に前に出れなかった事を悔やんでいるような、前に出れた奴らを羨むような複雑な表情をしていた。


「今回戦いに参加できなかったメンバーもしっかり見て動きを覚えておけよ。

次はお前達の番だからな!」

「「はい!」」


そこからは何とも見ていて心配になる戦いが繰り広げられた。


「グラアッ」

「ひぃっ」


一応避けられているが、やはり目の前に50キロ以上ありそうなハンマーが叩きつけられれば腰を抜かす寸前になる。

攻撃する側も思った以上に硬い肉の壁になかなかダメージを与えられていない。

これはまだ手ヤリの攻撃力が不足しているのも原因だ。

それでも2回3回、10回20回と繰り返すと遂にオーガが膝を折った。


「よし今だ。行くぞ!」

「「おおっ」」


勝機と見て一斉に攻撃を仕掛ける。

だけどボスなんてのはピンチになると隠し玉の一つも持っているものだ。


「フンガッ」

ズズンッ!


オーガが持っていたハンマーで思いっきり地面を叩けば、その振動で村人たちがたたらを踏む。

その隙を突いてオーガが目の前に居た村人に渾身の一撃を放った。


「させるか、よ!」

「ンガッ」


間一髪、トンファーに持ち替えた俺の両腕がハンマーの柄を受け止めた。

く、馬鹿力め。たった1撃でトンファーにヒビが入って粉砕寸前だ。

これ腕で受け止めてたら確実に骨をやってたな。


「いい加減落ちろ!」

ゴンッ!


俺のトンフォーがオーガのこめかみに突き刺さる。

その1撃で遂に力尽きたオーガは地面に倒れ伏した。

同時に空の雲が晴れ、戦いは終わりを告げた。



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