111.神が死んでも世界は終わらない
地面に縫い止められたアポロンの元へと降りていく。
アポロンは悔しそうな顔をするものの肩に刺さった剣を引き抜いて逃げようという素振りはない。
というよりこれまでの消耗と合わせてもう動けないのか。
「やはり街の外に出たら一気に弱体化するんだな」
「くっ、殺せ!」
いやいや、お前のくっころなんて誰も求めて無いから。
それよりなんか色々気になる発言をしてたし、その真意を問いただしておきたい。
「さっき言ってた、王や領主以外の生き物に価値はないっていうのはなんだったんだ?」
「ふんっ。そのままの意味だ。
お前はこの世界の人間や魔物が死ぬと光になって消える理由は何だと思う?
それはあれらがそういう風に創られたからだ」
「創ったのは神なのか?」
「我々の更に上にいる者だ。我々は元管理者に過ぎん」
管理者か。
それで色々裏の事情に詳しい訳だな。
それにその管理者がなんでわざわざ地上に降りてきたのかも分からないな。
「それより取引をしないか?」
「ん?」
また変な事を言い出したな。
この状況で持ち掛ける取引なんて絶対録な物じゃない。
「どうせお前も世界を統一して元の世界に戻りたいのだろう?
我と組めば確実に早く達成させてやれるぞ」
「んん?」
いや、世界統一は目指してないなぁ。
それに元の世界に戻れるっていうのも初耳だ。
「戻れるのか?」
「なんだ、知らずに戦っていたのか。
この世界に送り込まれた者は世界統一などの偉業を達成することで望みを叶える事が出来るのだ。
お前のような欲の薄そうな者の望みなど決まっている。
こんな争いばかりの世界に見切りをつけたいと思っているはずだ」
いや決まっているとか言われてもなぁ。
正直元の世界に戻りたいかと聞かれたらそうでもない。
別に向こうが嫌だった訳ではないけど、こっちの世界だって捨てたものじゃない。
たとえ何処かの創造神が創ったんだと言われても、そいつが手を出して来ないなら気にする必要も無いだろう。
それに。
「俺は多分戻れないんじゃないかな。
なにせ向こうでの最期って旅客機の墜落で大海原の中にダイブだし」
例えば死ぬ数十分前に戻れますとか言われても死ぬ運命は回避出来ない。
何とかは二度死ぬなんて話もあるけど、自分から死にたいとは思わない。
こっちのスキルを持っていけるならワンチャンあるかも知れないけど、飛行機ですら半日近く掛かる距離を目印もなく飛び続けたくはない。
ないない尽くしだな。
そういう意味ではミツキも似たようなものだろう。
確かバスの事故がキッカケでこっちに来たって言ってたし。
という訳で世界統一なんて面倒な事をして叶えたい望みなんてありはしない。
どちらかと言えば、戦争もなくのんびり暮らせれば良い。
「ふん。欲の無いことだ。
あの大司教の方がよっぽど俗物だったぞ」
「んん?あぁ。そうか。そうやって神聖教国を乗っ取ったのか」
どうせ『自分に従えば神の国に連れていってやる』とか『王として君臨できる』とか『不老不死になれる』とかそんな出来もしない餌をぶら下げたんだろう。
そんな甘い囁きに誑かされて大司教は教皇を裏切った訳だ。
うちで言うとヨサクあたりか?
あいつならそんなこと言われても笑って断ってくれると思う。
それくらいの信頼関係は築いてきたつもりだ。
にしても、アポロン達は随分と世界統一とかを達成するために無茶しているように見えたんだけどなんでだろう。
「……もしかして、元の世界に戻りたいのは神の方なのか?」
「……」
俺の問いかけに目をそらすアポロン。
やっぱりそうか。
さっき元管理者とか言ってたし、左遷か島流しで送り込まれてきたのかもしれない。
戻る為には人間や魔物を率いて世界統一しろとか指令を受けてたりしてな。
それならアポロンだけじゃなく、他の神たちもまだ情報が入ってきていないだけで積極的に行動を起こしている可能性が高い。
ここでアポロンひとりにかまけている場合じゃない、か。
「よし。聞きたいことは大体聞けたと思うしお前とはここでお別れだ」
そう言って剣を振りかぶる。
アポロンもそれを見て観念したように笑みを浮かべた。
「我を殺すのか。まぁ良いだろう。
たとえ我を殺しても第2第3の……」
ザシュッ!
なんかメタな発言をし始めたので問答無用で息の根を止めておいた。
あ、なるほど。死体が消えないな。
これが外から来た存在とここで生まれた者の違いって事か。
俺から言わせればそれ以上の違いなんて無いんだけどな。
アポロンを倒して空が晴れたのを確認しつつ俺は街の中へと戻った。
そこではみんなが俺の帰りを待っていた。
「お帰りなさい。お兄さん」
「ご無事のようで何よりです陛下」
「うん。ただいま」
笑顔で迎えてくれる皆。
これがたとえ作り物であったとしても、そこにあるのは確かな命。
「えっと、不死の人達や龍人族の皆は?」
「どちらも『また殺ろう』と言って一足先に帰って行きました」
「うぅむ、なにやら危ないニュアンスだけど、今回のお礼もしたいしどこかで付き合うしかないか」
龍王様は武闘大会でも開けば喜んでくれるだろう。
不死の王は……模擬戦、かなぁ。
前回の事を考えると中々に大変なんだけど。
「ま、疲れたし俺達も帰ろうか」
「うん!」
「って、神聖教国はどうするのですか?」
「そこは教皇が何とかするだろう」
良くも悪くも大司教が率いてた人達はアポロンに吸収されて残ってるのは教皇に従う人だけだ。
なら後は任せれば良いだろう。
そうして国へ帰れば残してきたイメーコやルンルンをはじめ、やっぱり多くの仲間が俺達の無事を喜んでくれる。
やっぱり俺の欲望なんて、みんなの笑顔をずっと見ていたいとかそれくらいだよな。
うん。
しかし、どうやらこの世界はのんびりはさせてくれないらしい。
「大変にゃ大変にゃ~~」
大騒ぎしながら駆け込んでくる商人のミーク。
最近は商人というより情報屋というか連絡員みたいになってるけど、まあ本人が良いならいっか。
ちゃんと作物の売買はしてるんだし。
「おはようミーク。
それで今度は何が大変なんだ?」
「あ、おはようございます陛下。
それが大変なんですにゃ!
大戦国時代に突入ですにゃ!!」
「んん?」
詳しく話を聞いてみると、これまで大国の傘下に納まっていた中小、中堅の国が一斉に独立を宣言したそうだ。
地球で言うソ連解体みたいなものか?いや違うか。
とにかく独立した国々が戦争を求めて活発に行動を起こし始めたらしい。
多分、神が関わってるんだろうなぁ。
今までこういう事が起きなかったのは、単独で独立しても叩き潰されるからだろう。
だけど他と息を合わせて一斉蜂起すればパワーバランスは逆転する。
頑張れば寄り親だった大国を下剋上出来るかもしれない。
それが無くても周辺の弱小国家を呑み込んで自分こそが世界の覇者になってやるって頑張っているらしい。
「リュウジュ王国にも既に15件も攻城戦の申し込みが来てますにゃ」
「多いな、まったく」
「まぁ最近のリュウジュ王国の評判は『大国の威を借るキツネ』ですからにゃぁ」
あぁ。なんとなく心当たりはあるな。
でもま、舐められたままって訳にもいかない。
「あたし達の実力見せてあげようね、お兄さん」
「私達が居る限り陛下に傷一つ付けさせません!」
「ふふっ。私の魔法の餌食になりたい奴は誰かしらね」
周りを見れば心強い仲間が居る。
ここはこういう世界だ。
精々平穏な毎日を手に入れる為にも頑張りますか。
ということで、ここで一区切りです。
この先は神のスキルを手に入れた各国との戦争であったり秘境の攻略。
そしてトップの神への挑戦が待っていたりしますが、それはまたどこかで。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
次の作品は、
まずは先日1話だけ投稿した恋愛もの全3話を完結させる予定です。
その後は異世界恋愛ものが1件とファンタジー系が3件脳内プロットだけはあるのでどれから手を付けて行こうか考え中です。




