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106/111

106.準備完了

遅くなりましたorz


ようやく拳を止めてくれた龍王。

これで何とかまともな話し合いが出来そうだ。

ただ。

周りを見渡せば、台風か竜巻などの自然災害に襲われたかのような惨状が広がっている。

幸いなのは市民はほとんど避難してるみたいだし、模擬戦みたいなものなので死者は出ていないってところだな。

まあそれでも。


「また派手にやったなぁ」

「はっはっは。すまんすまん。

久しぶりに骨のある奴に出会えたもので年甲斐もなく盛り上がってしまったわ!」


まったく悪びれもせずに笑う龍王。

これ一発くらいぶん殴っても怒られないんじゃないだろうか。

俺が殴っても大したダメージじゃないだろうけど。

と思ったらチックルちゃんがテテテッと駆け寄って来て。


「少しは反省するのじゃ」

ドガッ

「ぬっは~~」


一瞬でドラゴンの姿になったかと思えばそのまま龍王を踏みつぶしていた。

龍王は思いっきり地面にめり込んでいるが、すぐに何事も無かったように立ち上がった。

痛がるどころかむしろどこか嬉しそうな顔をしているのは気のせいか。

龍王というのもなかなかに業が深いのかもしれない。


「うむうむ。我が娘ながら立派に成長したものだ。

これならいつ嫁に出しても心配はいらないな。

そうは思わんか。婿殿よ」


婿殿って俺の事か?俺の事だよなぁ。

チックルちゃんの性格からして、家族には大々的に宣言してそうだし。

成長具合も確かに見た目は一人前の女性ではあるけど。

ただそれを踏まれて再認識しないで欲しい。


「……立派に成長したのは同意します」

「であろう。

そして婿殿の強さも申し分なし!

こうして太い縁が結ばれれば、今後はいつでも闘えるというものよ。

いやぁ楽しみ楽しみ。はっはっは」

「って、そこに行きつくんですね」


まさに戦闘狂だな。

ま、嫁だ婿だって話は置いておいてだ。

先にするべき話をしよう。


「それはともかく、チックルちゃんからどこまで聞いてるでしょうか」

「何でも神聖教国に殴り込みに行くそうだな」

「正確には神聖教国を乗っ取った神が相手です」

「強いのか?」

「確かめてはいないけど、守りはめっぽう強いらしい」


俺の言葉に顔をしかめる龍王。

どうやらお気に召さなかったようだ。


「ふぅむ。亀が相手では楽しめんなぁ」


あぁ、なるほど。

守り一辺倒だと思った訳か。


「亀は亀でも火を吐く亀ですよ。

油断すれば龍の鱗すら貫かれるでしょう」

「ほぉ。それは試してみる価値はありそうだな」


火を吹く亀とドラゴンか。

圧倒的にドラゴンの方が強そうに聞こえるな。

ギ○ラvsゴジ○か?

あれはどっちが強かったんだっけ。


「それで今からひとっ飛びしてブレスで吹き飛ばしてくれば良いのか?」


しれっと言ってくれるけど本当に出来そうなのが怖いよな。

だけどそこに横から待ったが掛かった。カミッチだ。


「それはやめておいた方が良い」

「ほう、それは何故だ。我では力不足か?」

「そうではない。だがアポロンの事だ。

距離に比例して反射力を増す結界を張っている事だろう。

遠距離からブレスを放てば数倍になって返ってくるはずだ」

「ほほぉ」


あ、なんか龍王様すっごく嬉しそうな顔してる。

これきっと新しいおもちゃが見つかったとかそんなこと思ってるに違いない。

カミッチも顔が引きつってるし。


「えっと、じゃあ敵の防御結界については龍人族の皆さんにお任せするとして、実際に攻め込むのはうちと不死の王国軍でやります。不死の王には俺から打診しておきましょう」

「うむ。今から楽しみであるな」

「じゃあこれで「ちょっと待て」って、まだ何かあるのか?」


話は終わりかなと思ったらカミッチから待てがかかった。

まだなにかあっただろうか。


「まだ最大の問題が残っている」

「なんだっけ?」


ヨサク達を見ても首を傾げるし、龍王も言わずもがな。

誰も分からない中でカミッチはビシッと俺を指差した。


「俺?」

「そうだ。なんださっきの戦いは」


そんなこと言われても龍王との実力差が有りすぎるんだから仕方がない。


「だからそれだと言っているんだ。

龍王や不死の王に比べ、お前が弱すぎる。

しかもその原因が背中の翼の欠損と来ている!」

「いやそれスキル手に入れた時からだし仕方ないんじゃないかな」

「この世界のスキルは、特にユニークスキルというものはその者の魂によって得られるものが変わってくる。神にとっては常識のようなものだな。

お前の場合は片腕失った状態でこの世界に来たとかそんなところだろう」

「いや、ちゃんと五体満足……あっ」


思い当たる点としては、俺自身は障害とかは無かったけど、最後の飛行機事故。

あれたしか片翼のエンジンが爆発炎上したことが原因だったな。

もしかしてそれか。


「ふん。思い当たることがあるようだな。

そして私の持つスキルは霊薬作成。エリクシルが私の真名だ」

「霊薬ってつまりエリクサーか」

「お前にはそっちの方が馴染みのある言い方か。まあどちらでもいい。

とにかく私の作ったこの薬を飲んで万全な状態で臨め」


そう言って取り出したのはフラスコに入った紫色でなぜか泡がボコボコ湧いている液体だった。

どう見ても毒薬なんだけど。え、飲むの?これを!?


「飲んだ瞬間、死んだりしないよな?」

「心配するな。『味と見た目と臭いはともかく』効果は絶対だ」


それ全然安心できないんだけど。

フラスコを受け取って栓を抜いた瞬間、広がる激臭に一瞬でみんなが逃げる。

無事なのはカミッチだけか。


「ほら、早く飲め。臭くてかなわん」

「いやカミッチが作ったんだろう」


文句を言ってても仕方ない。

俺は腹をくくると鼻を摘まんで一気にフラスコの液体を飲み干した。


「うっ。ぐふっ」

「へ、陛下!」


俺の様子に慌てて近寄ろうとするヨサクを手で制する。

大丈夫だ。ただただマズ過ぎて一瞬意識が遠のいただけだから。

それにしても酷い味だった。

今後敵を拷問する時にでも使わせてもらおう。

それで肝心のスキルの方はというと。


「よっ、と」


発動させれば背中に2対の翼が出来た。


「おぉ~」

「きれ~い」


みんなが感嘆の声を上げるくらい純白の翼と漆黒の翼は荘厳な装いをしている。

俺的には勿体ないというか豚に真珠って気がするけどみんなは気にならないようだ。

ともあれ、これで今度こそ準備完了かな。



余談ですが、翼のスキルは元々別の人から譲渡してもらう形で完全形に持っていく予定でした。

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