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103.対神迎撃

ルクセン領の南は小高い丘が幾つも立ち並ぶ地形でサカガミ領のように平らな土地は少ない。

その中でもヨサク達が砦を建てた丘は周りのものより1段高くなっているので周囲を見渡しやすい。


「……サカガミ領もこういう地形だったら周辺の状況を把握しやすかったのに」

「?何か言った?」

「いや別に」


今更愚痴っても仕方ない。

向こうは見渡す限り森だったから、簡単に奥を見通せなくて村同士、集落同士がお互いを見つけるのに手間が掛かって、攻め込むにも攻め込まれるにも大変だった。

お陰で多少時間的なゆとりがあったとも言えるか。

一長一短と言ったところだろう。

今もちらほらと村があると思われる場所が見て取れる。


「ヨサク。近隣の村に避難勧告は?」

「一応出しましたが、我が国に所属していない村もあり、そちらは指示に従うのはごく一部でした」

「うん。まぁ仕方ないさ。無理に逃がす理由も無い」


一応この領地を治めているとは言え、彼らからしたら突然やって来て何様のつもりだって話だし。

平時なら占領して回っても良いんだけど、今はその時じゃない。

戦いに巻き込まれたら運が無かったと諦めてもらおう。


「陛下。敵が見えてきました」

「ああ。距離があるとは言え、大きかったり飛んでたりするとよく見えるな」


巨大な柱のような天使が1、2……6体。

身長は5メートルどころか10メートル近くある。

その周りを普通サイズの天使が数百体飛んでいて、よく見ると地上にも歩兵部隊が居そうだな。


「羽の生えていない天使も居るのか?」

「いえ、それは恐らく神聖教国の兵士かと思われます。

捕虜奪還作戦の時にも神聖教国の兵士や司祭と思われる人間が多数おりましたので」


例の麻薬で洗脳した兵士か?

あ、いや。違うか。

兵士なら司令官が命令すれば洗脳なんかしなくても従う。

教国の一部の上層部は教皇を裏切って神に寝返ったっぽいし、裏切りの見返りに将軍級に取り立ててもらったって事も考えられるか。

まぁどっちにしろ敵だ。天使たちと併せて殲滅しよう。


「ヨサクとチチカは引き続きここを頼む」

「はっ。陛下はどうされるのですか?」

「折角こうして目立つものを造ってくれたからな。

俺たちは丘の谷間を縫って裏に回ってみる。

あの巨人を間近で見てみたいし」


俺はミツキとチックルちゃん、それとハトリを連れて裏口から砦を後にした。

ハトリには隠密行動のイロハを教えてもらう予定だ。

アポロンと思われる神に見つかったのは癪だったからな。

次は完全に背後をとれるくらいにしてやる。

と意気込んでいる間に戦いが始まったようだ。

最初に衝突したのは歩兵部隊だ。


「意外だな。てっきり最初は巨人の砲撃だと思ったんだけど」

「巨人は、1キロ離れたところで立ち止まってるね」

「天使たちも上空で様子見してるのじゃ」

「巨人はあそこから砲撃できるとして、天使たちが攻撃しないのはなぜでしょう?」

「ま、上に立つもの、というより他者を見下しているものの考えることなんて決まってるか」

「つまり捨て駒ですか」


神や天使から見て人間はただの数字。減っても増えてもどうでもいいし、役に立たなくなったり不要になったらゴミ箱に捨てればいいと考えているんだろう。

敵にぶつけて少しでも戦果が出れば御の字、無理でも敵をおびき出す囮になればいいやってことだ。

その証拠に巨人たちが今まさに混戦状態の場所に砲撃を行おうとしている。

味方もろとも吹き飛ばすつもりだ。


「お兄さん」

「……大丈夫。チチカも気づいてるみたいだ」


巨人から放たれるビーム。

そのままならかなりの被害が出るはずだった。

しかし実際にはビームは地面に落ちる手前で鏡に反射するように上空に打ち上げられた。

その先に居たのは高みの見物をしていた天使たち。


「ギャアアーー」

「ひぇぇーー」


自分は大丈夫だと高を括っていたところに急に窮地に送り込まれて悲鳴を上げている。

……他国に攻め込んできた癖に完全に気が抜けてるな。

うちの国民なら1から鍛えなおすところだ。


「あ、砦から矢や魔法が撃たれ始めたよ」

「狙いは天使たちじゃな。

ふむ、なかなかに驚異的な射程なのじゃ!」


チックルちゃんは龍人族の視点から自分がドラゴンの姿だったらどうなるだろうかをイメージしているようだ。

確かにあの射程ならドラゴンも迂闊に近寄れないだろう。

というか、急がないと俺らのやることが無くなる。


谷間を走り抜けて巨人の足元にたどり着いた。

あとはここからどうするか、だけど。


「お兄さん。1体もらって良いかな?」

「ああ、いいよ」

「ならわらわも1体貰うのじゃ」

「どうぞ~」


ミツキもチックルちゃんもやりたいことがあるみたいだ。

なら任せよう。

残りの4体、いや3体だな。1体はどうやらチチカが狙っているみたいだし。

3体は俺とハトリで倒そう。


「ハトリ。作戦は二人三脚だ。分かるな?」

「はっ。承知致しました」


俺とハトリは二手に分かれて巨人たちの足元を駆け回る。

巨人たちは灯台下暗しで俺たちに気づいていない。

本来ならそれをサポートするはずの天使たちも砦からの攻撃に意識が向いてこっちを見ていない。

大艦巨砲主義の巨人も良いけど、それを補う護衛部隊が居ればこそだ。

そう、うちで言うチチカのようにな。


「ふんっ。長距離砲撃がそっちだけの専売特許だと思わないでよね!」

ドンッ、ヒュルルル~~……カッ!!


砦の塔から撃ち出されたバレーボール大の魔法が緩やかな弧を描いて飛んできたかと思えば巨人の眼前で大爆発。

爆発に巻き込まれた一番右の巨人の肩から上がごっそり吹き飛ばされて、倒れると同時に消滅していった。

続いて白い雷が巨人を足元から貫き炭を通り越して灰に変えてしまった。


「うーん、やり過ぎたわ。本当は膝くらいなら破壊できるかなって思ってたのに」


そう独り言ちるミツキ。

そういえばミツキも大災厄の怪獣討伐の時にかなりパワーアップしてたな。


「というか、これなら捕虜奪還の時に逃げなくても良かったんじゃないか?」

「あの時は守る対象が多かったし、なんか弱くなってない?」

「ふむ」


確かに俺が神聖教国から撤収するときに撃たれた砲撃もさっき見たのより強かった気がする。

なんでだろう。イメージ的には時間が経つほど強くなる気がするんだけど。


「あれじゃないでしょうか。

ゲートキーパーつまり門番ですから守るべき拠点でこそ本領を発揮できるとか」

「なるほど。言われるとそんな気がするな」

「ふむ。それは詰まらぬのじゃ」


さっきまですぐ横にいたはずのチックルちゃんの声が上空から聞こえた。

見上げてみればドラゴンの姿になったチックルちゃんが巨人の1体の腹に突撃を仕掛けるところだった。


「ふんっ」


チックルちゃんの拳に巨体がくの時に折れ曲がり、さらに上空へ吹き飛ばされ……あ。


「あ」

「ああ~」


思わず変な声が出た。

なにせチックルちゃんが吹き飛ばした1体は俺とハトリが仕掛けた1体だったから。

吹き飛ぶ巨人と足首を紐で結ばれた隣の巨人も一緒に持ち上げられ、更に隣の巨人も結ばれていて。

元の計画では二人三脚状態にして転ばせてやろうくらいの計画だったのに全部まとめてチックルちゃんに吹き飛ばされてしまった。

そして飛んで行った先にはヨサク達がいる砦がある。

そこから迎え撃つようにヨサクが駆け抜けた。

すれ違いざまにヨサクの剣が閃く。


「マスオの仇だ」


次の瞬間、バラバラになって消滅していく巨人たち。

いや、マスオは死んでないからな。

とにかく敵はあっけない程に壊滅した。

この調子なら防衛に関してはたいして心配要らなさそうだな。




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