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1.誰もいない空き地

初めましての皆様、ようこそおいでくださいました。

以前から読んでくださっている沢山の皆様(居たら良いな~)、いつも御贔屓いただきありがとうございます!


前作のなんちゃってヒューマンドラマに一区切りがつきましたので新連載です。

といっても相変わらずのプロットなしの自転車操業でございます。

出来る限り読んで楽しい作品になればと思って頑張りますのでお付き合い頂けると幸いです。


最初のチュートリアル編(4話)は毎日投稿です。

その先も出来る限り毎日投稿を目指します。

太平洋洋上、北緯40度東経170度。

俺、坂上竜樹(さかがみりゅうじゅ)25歳は無事1年間のアメリカ出張を終え、日本へと帰る飛行機に乗っていた。

出張期間中は特に大きな問題も無く、多少会話に難儀した以外は仕事も順調で向こうで友達も出来た。

後は日本に帰ったら報告書を提出して出張手当と一緒に1週間ほど長期休暇を貰う予定だ。

いや、貰う予定だった、の方が正確かもしれない。

何故なら俺の横の窓から見える景色にあってはならないもの、そう火を噴いているジェットエンジンが見えるからだ。


「おお、お客様。当機は現在エンジントラブルにより左翼のエンジンが1基動作不良を起こしておりますが、ご安心ください。

当機には左右に2基ずつエンジンがあり、1基動かなくなったとしても飛行に問題はありません。

現在の出火も間もなく消し止められます。

お客様に置かれましてはパニックにならず、冷静にご着席の上、シートベルトをお締めください」


客室乗務員が懸命に声を上げて乗客を宥めているが、当然のように機内は混乱の坩堝と化していた。

泣き叫ぶ子供。乗務員に詰め寄る大人。

果ては操縦室に乗り込もうとしたりエアロックを解除して外に出ようとする者まで居る。

俺からしてみれば助かる可能性をゼロにして死期を早めるだけの行為にしか思えない。

なので少しでも生存の可能性が上がるように行動を起こすか。

俺は耳栓をしつつポータブルプレイヤーをスピーカーに接続して音量をマックスにし、


『!#$%&+>*;☆◆@』

「「―――っ!!」」


曰くガラスに爪を立てたようなあの嫌な音を響かせた。

一瞬静まり返る機内。

その隙に俺は声を張り上げた。


「パニックになるのは分かるし俺もそうしたいところなんだが。

良く聞いてほしい。俺達が生き残ることが出来るみちはただ一つ。

無事に飛行機が空港まで辿り着いて着陸することだ。

違うという奴はいるか?

例えばエアロックを開けようとしている奴ら。

お前ら上空数百メートルから飛び降りて生きてられるのか?

たとえパラシュートを着けて出たとしてもここは太平洋のど真ん中だ。

救助は来ないしサメの餌になるのがオチだな。

次にコックピットに向かってる奴ら。

お前らは飛行機の操縦技術があるのか?そして今の機長よりも操縦が上手なのか?

たとえそうだとしても、操縦技術とエンジントラブルは別だろう。

詳しい説明を機長から聞いても事態が好転する訳でもないしな。

そうやって考えた時に俺達に何が出来るかと言えば、はっきり言おう。


『邪魔しない事』だけだ。


さっき乗務員のお姉さんが言った通り、左右のエンジンが1基ずつ無事なら飛行機は飛び続ける事は可能だ。

飛行速度は落ちるだろうが、救難信号を発して給油機を飛ばしてもらい空中給油を受けられれば日本まで飛ぶことも出来るだろう。

だけど俺達が機内で暴れたり、ましてやエアロックを開けたりコックピットを襲撃すれば飛行どころじゃなくなって最悪墜落する。

俺も死にたくないからな。機長の腕と自分たちの幸運と神様にでも祈って大人しく席に座ろうや」


俺の言葉を聞いて多少冷静さを取り戻した乗客たち。

それを見届けてから俺も席に座ると、先ほどの乗務員さんが挨拶に来た。


「どうもありがとうございました。

あなたのお陰でパニックも、パニッ、あぁっ!?」


お礼を言っていた乗務員さんの視線が窓の外へと注がれた。

そこではさっきとは別のエンジンが火を噴いたところで、つまりは左翼のエンジンが全滅したことを意味している。

その結果はもう確認するまでもないだろう。飛行機は片翼では飛べないのだから。

そして追い打ちをかけるようにエンジンが爆発。左翼を粉砕してしまった。


「きゃああ~~~っ」

「おっと」


一気に失速して墜落を開始する飛行機の中、俺は倒れそうになった乗務員さんの腕を引いて抱き寄せる。

まぁこんな事してもお互い生き残れるとは思えないが。

そうして長いようで短い落下の後、俺を乗せた飛行機は海面へ接触し海の藻くずと化した。


……

…………

………………


ふと気が付くと、俺は地面に寝転がっていた。

視線の先には突き抜けるような青空と白い雲。

どうも記憶が曖昧だけど、ここはどこだ?

寝てても仕方ないので起き上がってみたが、そこは森の中に出来た空き地だった。

……いや待って。おかしい。

何をどうやったらこんなところに来れるんだ?

誘拐?いや俺を誘拐しても天涯孤独で身代金は手に入らないし、俺をここに一人置き去りにする理由も分からない。

じゃあアレだ。ラノベでお馴染みの異世界転移。

いや流石に社会人になってそれを信じる程俺は中二病を患ってはいない。

いないんだけど、困ったな。

太陽は雲の影に隠れているみたいだけど空には月が2つ見える。

更には日中なのに天の川が見える?と思ったら、あれ木星とか土星にあるリングだ。

ということは本気で異世界、なのか。

でも待ってくれ。

近くに人のいる気配が無いんだが。

何の説明も無しにこんなところに捨てられても困るぞ。

神様、転移先を間違えてないか??




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― 新着の感想 ―
[良い点] 元の世界にまともなのがいなくて笑いました。 つかみがいいと思います。
[良い点] 新連載おめでとうございます。 今後の展開に注目しておりますので~!
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