第7話「異常者の依頼」
俺はあの後。
すぐにその場を後にした。
逃げ出した。
あの表情が忘れられない。
引かれたかな。
いや、俺はわかる。
無関心だった。
まぁ、それはそうだ。
俺が同じ立場だったらどうでもいい。
京と昼飯を食べていた。
呆然とした。
なんとも言えない。
喪失感に浸りながら。
妹の愛妻弁当を食べていた。
あぁ染みる。
心に染みるよ、この弁当。
俺は先程の一連の流れを。
京に話した。
「はっはっはっ!!! 腹痛い。
なんだよ〜その流れ! はっはっは!!」
京は腹を抱えて。
笑っている。
まあ。
それはそうだ。
第3者からしたら。
俺も──笑ってしまう。
完璧に身から出た錆である。
話すと少し楽になった。
ありがとうな京。
「まぁ、そうだな。笑っちゃう」
俺の顔を見て。
京は笑うを辞めた。
「まあ──なんだそのなぁ、人の性格は顔に出る。
人の行動にはその人の環境が出るってよく言うだろ」
「──そうなのか」
こいつ俺をフォローしてようとしているなぁ。
急にしどろもどろになっている。
「まあ、部活の件はお前が悪い。
でも、マイナスからプラスは、良くハマればいい感じになるんじゃないか?」
よくある話だな。
俺はそれを否定した。
「京それは間違っている。
ある程度の興味がある人間が少しのマイナスからのプラスは好感に変わる場合もある」
「あぁ」
「だが、今回の事例は無関心の人間がドマイナスに落ちての無関心だ。
これを上げるのは無関心を解除しなければならない」
「でも、どぎつい印象が脳に刺さったんじゃないのか?」
「そんなことない! 彼女の顔は無関心だった」
「お前──それ、自分で言っていて虚しくないのか?」
「……」
俺の時間が少し止まった。
「まあ、そのとりあえず頑張れ!」
京はニッコリと笑いながら言う。
その言葉は、頑張れ──以外には何も。
言いようがないって事だな。
はぁ〜まあ頑張るか。
俺は何から頑張っていいのか。
分からずにただただ。
その言葉を受け入れた。
---
いつものように普通になりたい部に向かう。
「あれ? 美鈴はいないのか?」
俺は勉強をしている。
冬柴先輩に問いかけた。
「お友達の所に行くって言ってたかしら。
今日は部活に顔を出して、直ぐに帰ったわよ」
「へぇ〜そうなんですか」
毎日を欠かさず来ていた美鈴が。
珍しいこともあるんだな。
「それと私の依頼忘れたとは言わせないわよ!」
「なんですか、それ?」
冬柴先輩は少し睨みながら俺に告げた。
「私が普通になるため。
休みの日少し付き合ってもらうから」
「はぁ〜休みの日ですか?」
「そうよ」
「すいません、やっぱり無理です」
「なっ!!」
冬柴先輩はめちゃくちゃ睨みながら再度告げた。
「私が普通になるため。休みの日少し付き合ってもらうから」
──えっ!?
この人は俺が聞こえてないと思って。
もう1度同じ事??
「だから……その。すいません無理です」
「はぁ〜 しょうがないわね。
玲香先生に言って、頼んでもらうかしら」
────なっ!!!!
それは卑怯だ!!!
あのゴリラを巻き込むと、ろくな事が起きない。
あいつは金の奴隷だ。
理事長の孫が困っているってなれば。
直ぐに話をこじつけやがる。
仕方ない今回だけは折れるか。
仕方ない今回だけは折れるか。
もう一度言う。
仕方ない今回だけは折れるか。
「はぁ〜しょうがないですね。じゃあそれでOKです」
「なら、携帯貸して」
「えっ?」
「携帯」
「はぁ?」
めっちゃ睨んでるよこの人。
俺は徐ろに冬柴先輩に携帯を手渡した。
「これで休みの予定送るから」
「わかりました」
「じゃあ、休みの日ね」
「はい」
俺は思ってもいなかった。
この約束が俺の恋と異常者の戦争への第一歩だとは。
考えていなかった。
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