第4話「完璧な異常者」
部室に入ってきたのは黒髪ロングで綺麗な女。
二年の冬柴由姫だった。
俺でも知っている。有名な先輩である。
いや、超有名な人だ。
一年、二年と学年テストはずっとトップだ。
それでスポーツも得意という超人である。
しかも、美貌も有名だ。
俺の周りでも結構な人が告白して玉砕したとか。
何でこんな人が部室に?
嫌な予感がする。
三階の最果ての出来たてホヤホヤの部室に何故この人が……。
冬柴先輩を見て、美鈴は指を指す。
「淳くん変な人が入ってきました!!」
トントンだと思うけどな……。
この人も少し、変わってる。
いや、違うな……。
さっきの発言。
だいぶ変わってるぞ、この人。
「あぁ、そうだな」
俺は美鈴の言葉に同調する。
その姿に冬柴先輩は俺の顔ををジロっと見る。
「私はこの部に入りたいのだけれど!
淳くん、あなたが部長でしょ?」
冬柴先輩は腕を組みながら俺を威圧する。
何故、この人、俺の名前を知っているんだ?
そして、何故、部活の存在している。
まさか……。
また玲香の仕業か!!
俺はすぐさま言葉を言い放った。
「あぁはい。でも今は部員は断っ────」
俺が話しているのを冬柴先輩は遮るように話す。
「普通になりたい人が入るのでしょ?
なら、私が来てる意味も先程伝えた通りだけど」
だが、俺はすかさず言葉を言い放った。
「まあそうですね。でも今は部員は断っ────」
俺が話しているのを冬柴先輩は遮るように話す。
「私は完璧すぎてモテモテで頭が良くて困ってるのよ。
普通になりたいからこの部活にいたのだけど」
矜恃しながら笑みを見せる冬柴先輩。
こっこいつ!!!!!
ムカつくな!!!!
先輩だけど。
「それは普通の上位種族ですよ!!
おめでとうございます〜先輩!!!
でも、今は部員は断っ────」
俺が話しているのを冬柴先輩は遮るように話す。
「それとも? 私を拒否するつもり?」
────こっ!!
コイツ──わざと会話を遮りやがって!!!
俺は無言で冬柴先輩を見つめた。
無言の圧力って言うやつだ!
────わかるだろ!!!
「にらめっこしてるんですか?? 笑ったら負けですよ」
空気を読まず。
俺の頬をつんつんしている美鈴。
「なによ! そんなに私を見つめて。
もっもしかして貴方も私の事を好きになってしまったの?」
こっ──コイツは空気を読めているくせに無視をしている!!
「────どっちも違う!!!」
俺は二人に吶喊した。
「たがら、今は部員は断っ────」
俺の話を遮るように扉を開け、部室に入ってきた。
ゴリラだ。
もう、お前は俺の心の中ではゴリラだ。
絶対に名前なんて呼んでやるか。
「ほう! 新しい入部者か?」
ゴリラは睥睨しながらウンウンと頷いている。
あれ?
すると、冬柴先輩はゴリラからの勧誘ではないのか。
「はい先生! 今から入部予定です」
させない。
絶対に嫌な予感がする。
「ことわ──────────────る!!!!!」
声の限り俺は叫んだ。
────勝った!!
ふふふっ──これで冬柴先輩は入らない。
────ビビったろ?
いきなり男が叫んだんだ。
────引いだろ?
やべぇ奴がいると思って。
後ずさりしただろ?
俺の勝ちだ。
「だめだ────────────────!!!!」
ゴリラがウホウホと雄叫びをあげる。
冬柴先輩はポカーンとしていたが、
すぐにニヤリとしている。
「──なっ!! 何でだ!!!」
俺は驚愕した。
まさか、また女教師か。
ゴリラが頑張って日本語を喋る。
「この子、冬柴由姫さんはこの葵高校の理事長の孫娘なんだ。
邪険にして、変な噂がたってみろ! 俺の給料が下がる。
顧問として許可する!!」
冬柴──理事か。
なるほど。
金と権利と女に弱いゴリラめ。
「ありがとうございます。先生」
ニッコリと冬柴先輩はゴリラに笑顔を見せる。
「ふざけるな!! 玲香!!!
これ以上──俺の普通を侵されてたまるか!!!」
「先生をつけろ!!!」
ゴリラはそう言って。
ポケットからチョークをポケット取り出して。
俺に向かって投げた。
スローモーションのように緩やかになった時間の中で、
俺は思う。
チョークって。
何で──常備してるんだよ。
俺のおでこに思いっきりぶつかった。
いやいや、今どきチョークって。
「──ぐわぁあ!!!」
「──じゃあ! 俺は帰る。先生を付けろよ、次から絶対」
このゴリラ。
直ぐに消えるゴリラ。
クソっ。
「よろしくね。淳くん」
笑顔で俺を見る冬柴先輩。
これ以上、絡まれるのもめんどくさい。
どうせ、直ぐに辞めるだろう。
「あぁはい。よろしくお願いいたします」
「じゃあ! 私からの依頼聞いたでしょ?
普通になりたいって。
明日から手伝ってもらうから」
「えっ? はぁ……」
「何そのため息」
冬柴先輩が鬼の形相で睨む。
「いやいや、楽しみですね〜」
「ふふふっそうよね〜」
ここから先、俺はもっとめんどくさい事に。
巻き込まれていくことになる。
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